縁起かつぎが好きな日本人

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、日本人の好む「縁起」の問題が、沢山ありました。

クイズ問題はお茶の間の老若男女を対象に考えていましたので、お年寄りがお得意の「日本古来の習慣」からも問題を創る方針だったのです。

家族で番組を楽しむ中、「お婆ちゃん、凄い!」と家族が年長者を見直す問題が必要だったのです。

その様なテーマで「縁起を担いだ」言葉や品物などをクイズ問題に仕立てるのは、お年寄り向けの問題として、時々挿入していたのです。

例えば、するめの事を摺るという言葉を嫌って、アタリメとよぶ人達がいました。

果物のナシも、無しに通ずるので、有の実と呼ぶ習慣もありました。

これらの問題は、今ではクイズ問題の定番になっていますが、ウルトラクイズでも当然出題されています。

日本の古い習慣の代表的な問題が、第7回のロスアンゼルスで出題されています。

問・子宝に恵まれるようにと言う意味の、結納品の縁起物は何?

答・こんぶ(子生婦)

解説 結婚に関しての「結納」は、古い時代から夫婦の幸せを願う日本で受け継がれた風習です。

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それだけに縁起を担いだ品物が揃えられていました。

正式には9品目ですが、略式の場合は7品目、5品目という場合もあります。

昆布は「子生婦」の当て字で、子孫の繁栄を祈る意味が込められた贈り物です。

その他、「長熨斗」「鰹節」「するめ」「末広」などそれぞれに、幸せを祈る品物が揃えられていますが、そのような細部の知識をクイズ問題に取り上げることは中々ありません。

何故なら、クイズ会議で「重箱の隅を楊枝でほじくる」ような問題は、相応しくないとの理由で不採用になっていたのです。

クイズ作家にとっては厳しいルールです。

でも、「どこまでが重箱の隅か?」この、境界線を判断するのは難しいのです。

要は正解を聞いて、納得感があるか否か? で問題が決まっていたのです。

知って得をする知識、新たな知識、話のネタになる知識、これがクイズ問題の3大要素と言えるようです。

 

 

 

理想の心地よいお天気

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題には、知ってためになる知識が沢山含まれていました。

例えば、最近は世界中で異常気象による異変が起き、ニュースになっています。

日本では例年よりも早く夏がやって来て、5月に真夏日を記録したり、突然突風が吹いて街を襲うといった災害を引き起こしています。

Record Rains Spawn Epic Floods In Austin, Texas Hill Country

雨も、何十年ぶりの集中豪雨などの記録が更新され、その都度各地で山崩れや、洪水が発生して人々に恐怖を与えています。

気象観測の技術が発達し、天気予報も正確な情報が多く、昔に比べれば災害に対する防災の準備も出来るようになりましたが、でも天候の不順は嫌なものですね。

個人差もあり「寒いのは嫌」とか「暑いのは苦手」など人々の意見は分かれますが「晴れた日は嫌い」という人はあまりいません。

空には雲一つなく晴れ渡り、暑くも、寒くもない日は、誰でも気持ちが良く過ごせる理想の天気です。

そのような天気に関する問題として、第16回のフロリダキーズで、次のような問題がありました。

・ロシアでは「婦人の夏」、ドイツでは「老婦人の夏」、アメリカでは「インディアンの夏」と呼ばれている晴れた日のことを何という?

答・小春日和

解説 日本語で「小春日和」とは11月から12月上旬に当たる頃で、穏やかな晴天の日の事を言います。

国が変わってロシアでも、ドイツでもアメリカでも、穏やかな晴天は喜ばしい言葉で表現されているのですね。

日本列島は現在「梅雨」の真っただ中で、澄み切った青空が恋しい人も多い事でしょう。

そこで、本日は梅雨明けが待ちどうしい昨今の話題としてご紹介しました。

地名に名を残す歴史上の人物

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には、世の中のあらゆる分野から、面白そうな話題を選んで出題されていました。

日本全国の各地には、歴史上の人物に由来のある地名が付けられた場所が点在しています。

歴史上の人物の生前の偉業を地名で残そうとするのは日本人だけではありません。

世界でも空港や都市、港などに偉人の名を刻んだ場所は数多く見られます。

この様な情報は、知って得する知識なので、クイズ問題になり易いという傾向があります。

大学のクイズ研究会をはじめ、クイズマニアと呼ばれる人達は、その様な場所を調べ上げ、想定問題として勉強していたと思われます。

まだ、クイズ研究会の誕生していない初期の頃の問題には、この種のクイズ問題が数多く採用されていました。

第5回のエルパソでは、次の問題が出されていました。

皇居、吹上御苑入口の半蔵門、この名の由来となった忍者と言ったら誰?

答・服部半蔵

藤子不二雄Ⓐのギャグ漫画「忍者ハットリくん」の大ヒットで服部貫蔵の名は一躍有名になりました。

それに関連して、忍者の元祖的な服部半蔵の名も知られるようになりました。

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実在の服部半蔵は伊賀国の忍者で、16歳で徳川家に仕え情報収集の長として、徳川幕府の重要な役職を務めたと伝えられています。

本来・忍者は陰の仕事なので、表舞台には登場しないのですが、江戸城の一角に彼の名を遺した「門」が設置され警護の責任を果たしていたようです。

現代では単に江戸城の門の名にとどまらず、東京メトロにも半蔵門線という路線の名にもなっています。

半蔵さんは伊賀流の一忍者としては、破格の扱いで後世にその名を遺した、偉人と言えるかもしれません。

全国各地には、このように歴史上の人物の名を戴いた地名が数多く残されていますので、それを探し当てる作業も、クイズマニアの楽しみかもしれませんね。

東京の都心、有楽町も歴史上の人物に所縁の地名で、これもクイズ番組の定番になっています。

その人物とは、織田信長の弟、織田長益(有楽斎)が家康から数寄屋橋御門周辺に土地を拝領し、屋敷を建てたと伝えられています。

この故事に因んで、明治時代にこの周辺を有楽町と名を付けたのだそうです。

 

時代の先を読んだ問題

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、その時代の流行や出来事を中心に作られたものが、大半でした。

何故なら「何故、今その問題なの?」がクイズ会議で論議されるので、今との関連を持たせた知識を問題化するように作家諸氏に注文していたからです。

とは言え、クイズは森羅万象、知識の競い合いですから、過去、現在、未来と時代を超えた範囲で面白い情報を探し、問題が作られるのは当然です。

第7回のジャスパーで、次のような問題が出されています。

・デジタル時計のデジタルとは、どんな意味?

答・数字(数字式)

解説 digital は英語で指の、という意味があります。昔は指を折って数字を数えところから転じて数字を意味する言葉にもなっています。

辞書によれば、デジタルは物質、システムなどの状態を、離散的な数字・文字などの信号によって表現する方式と出ています。

つまり、この頃からコンピューター万能の時代に入ってIT時代が到来したという事ですね。

ついでにITとは、インフォメーション・テクノロジーの略で、情報処理の総称と解説されています。

それまでの時計は、基本的に長針と短針で時刻を知らせるというシステムでしたが、ウルトラクイズの時代から、デジタル時計が出現した事が解りますね。

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この時代から、IT時代が始まっています。

デジタルの対義語はアナログで、現代ではアナログ人間は時代遅れの化石の様に扱われています。

私も家族からは化石人間のように思われており、携帯電話も最近スマホからガラ携に替えてしまいました。

閑話休題。

クイズは「今」も大切ですが、未来を予測して問題を作る場合もあり、デジタルの意味は当時としてはIT時代の到来を予測した問題だったような気がします。

これは時代を先取りした問題! 手前味噌ですかね。

 

 

 

 

最初の翻訳物語は?

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの裏話、前回に続いて「日本で最初の」に関するクイズ問題のお話を書いてみたいと思います。

西洋の文化が、日本に流れ込んだのは安土桃山時代でしたね。1543年に種子島に鉄砲が伝来したのは、歴史のお勉強で習った通りです。

その6年後の1549年には、宣教師達が来日し、フランシスコ・ザビエルによってキリスト教が伝来しました。

歴史物語でお馴染みの戦国時代です。

織田信長、豊臣秀吉といった英雄達が大活躍した時代で、この頃にウイスキーやガラスなど、西洋の文明や文化がドッと我が国に流れ込んでいました。

そのような時代の問題が、第6回のバーストウで出題されていました。

安土桃山時代に、日本語に翻訳された有名な童話は何?

答・イソップ物語

解説 「イソホの寓話」。表題にはラテン語を和して、日本人の口となすものなり、と表記されていたと伝えられています。

日本最初の翻訳物語ということでしょうね。

想像するに、西洋の文明に興味を持った武将か僧侶が「貴国に伝わる物語を聞かせよ」と宣教師に問うたのでしょう。

文献ではイエズス会の宣教師がラテン語から翻訳したと伝えられています。

イソップ物語は、「アリとキリギリス」「北風と太陽」が有名です。

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作品は子供達に人間の正しい生き方を説く教訓的な内容が多いので、多分当時の知識人の心に響いたことでしょう。

時代は流れ、江戸時代には「伊曾保物語」として再紹介されています。

更に、明治時代には修身の教科書として、子供達に伝えられているので、古い時代から日本人にはお馴染みの物語になっていました。

クイズ問題では「有名な童話は何?」との設問ですから一般に知られた有名な童話、「イソップ物語」の他「アンデルセン童話」「グリム童話」の3者択一問題と考えるべきでしょう。

但し、クイズ・マニアならばアンデルセンもグリムも1800年代に活躍した作家です。

それに気が付けば設問の安土桃山時代ならば「イソップ物語」しか正解が無いと、消去方で解る問題でした。