世にも不思議な現象

 

 

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、単に知識の競い合いだけでなく、知って驚く世の中の面白い出来事を紹介する目的もありました。

例えば、知っている人には常識でも、初めて知った人には「面白い!」と思える現象を探し、クイズ問題に仕上げるという作業をしていました。

第7回のニューヨークの決勝戦で次のような問題が出されています。

問・高い山の上で雲や霧に自分の姿が大きく映って、頭の部分に7色の光の輪が見える現象は?

答・ブロッケン現象

解説 山登りが趣味の人にとっては、理解されている言葉で、実際に体験した人は少ない不思議な現象です。

ドイツのブロッケン山で、しばしば観測された事から「ブロッケンの妖怪、又はブロッケンのお化け」と呼ばれる不思議な現象です。

高い山で、朝日や夕陽を背に受けた時、前方の雲や霧に自分の姿が投映され、頭の部分に虹に似た光の輪が現れる数少ない現象です。

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登山者の中には、一度は見たいと願う人も多いのですが、中々体験出来ない貴重な出来事と言えるでしょう。

現代では、こうした不思議な現象も科学的に解明されますが、昔の人が「お化け、妖怪」などと呼んだのも解る様な気がします。

クイズの問題を楽しむ、我々の番組が力を入れて探していたのは、こうした興味深い情報だったのです。

 

 

 

良くある思想の対立

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、あらゆる分野の知識から出題されていました。

人間は考える動物ですから、有史以来考え方の違いによって、意見が対立する事があります。

特に哲学の様な学問では、古代ギリシャの時代から意見の相違で対立する事が多数あったはずです。

日本の学問に大きな影響のある中国でも、そうした考え方の対立は存在しました。

第6回のダラスで次のような問題がありました。

問・性悪説を説いたのは、中国の荀子(じゅんし)。では、性善説を説いたのは誰?

答・孟子

解説 性善説とは、人間は生まれたときは善人で、生きていく中で悪を知り、悪行を積んでいく という説で、孟子が説いています。

孟子より数十年遅れて活躍した荀子は、孟子の性善説を批判し、対立する性悪説を唱えました。

どちらの説が正しいのか  ?      正解は人間を創った神様だけが知るもので人間には解りません。

でも、この対立する2つの説は、後の世の人達によって論争が繰り返され、人間の「本性」は善なのか、はたまた悪なのか? 対立は続いています。

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孟子も荀子も、共に優れた学者だけに、後世の人間に宿題を残したのかも知れません。

理想は性善説ですが、現実には性悪説の人間も多く、彼らがニュースの主役になっていますね。

最近では熊本県の地震のニュースで、被災者の自宅に空き巣が頻繁に入ったというのがありました。

地獄の閻魔様も呆れる所業!

これに関しては、大泥棒の大先輩、石川五右衛門サマも辞世の句で残していますね。

「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ

辞世の句の代表例として、これも第12回のパシフィカでクイズ問題として出ています。

 

 

誤解を生みやすい日本語

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、知識の幅や深さを測る問題が多く創られていました。

日本語は複雑で、知っているようで、実は誤解している言葉が結構沢山あります。

我々は誤解し易い日本語を探し、クイズ問題にするという課題で問題作者に発注した事がありました。

その時の問題が第16回のグアムで出題されています。

問・水の中に土などを盛って陸地にする事を埋め立てと言うが、土を使わずに水を退けてしまう方法を何という?

答・干拓

解説 干拓は海や干潟などの浅瀬を仕切り、水を抜き取って干上がらせ陸地にする事です。

長崎県の諫早湾の干拓、八郎潟の干拓などが有名ですね。

同じようでも、水域に土砂や廃棄物などを投入して土地を造成する埋め立てとは区別されています。

また、干拓と誤解され易い言葉に「灌漑」があり、こちらは田畑を耕作するのに必要な水を水路から引き、土地を潤す事を指します。

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干拓は、元々あった海の生態系を破戒してしまうため、環境破壊の問題があり、地元では反対運動が起きています。

同じように陸地を造成する意味でも、干拓、埋め立て、灌漑など、似て非なる言葉があります。

我々は、こうした誤答を誘うような日本語を探し、問題を創っていました。

クイズは、このように間違える事を狙った問題もある訳で、実は底意地の悪い言葉の遊びなのですね。

 

 

自然現象の盲点に注意

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、常識の盲点を突いた問題が含まれていました。

常識を鵜呑みに理解している場合と、その逆だからクイズ問題になったのだ、という解釈で正誤が分かれます。

特に2者択一○×問題には、常識の盲点を突く問題が多数ありました。

第一次予選、東京ドームでの〇×は「自分の判断で行動しよう!」と司会の福留さんが口癖のように叫んでいました。

自分に自信が無いと、つい他人に付いて走ってしまうという事になってしまいます。

これで正解なら「付いていた」と喜べますが、逆の結果では後悔が何時までも残ってしまいます。

我々はその様な挑戦者の心理を読んで,迷い易い問題を創っていました。

2者択一は、常識の通りは「怪しい」と言うのが挑戦者の心理でしょう。

でも、その通りに問題を出していたのでは全員が正解でクイズは成立しません。

我々は人数が、5分と5分に分かれる問題が理想と言う姿勢で問題制作をしていました。

特に、自然現象の常識は良く確かめないと誤答になってしまいます。

第15回の東京ドームで次のような問題がありました。

問・虹には、外側が赤で内側が紫の虹と、外側が紫で内側が赤の虹がある。

正解 ○

解説 虹が7色というのは一般常識ですね。

その色も上から赤、橙、黄、緑、水色、青、の順で描くのが子供の頃からの常識でした。

しかし、虹には盲点が有ったのです。

普段、見ているのは「主虹」と呼ばれる虹で、外側が赤で内側が紫です。

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その他「副虹」と呼ばれる虹は配列が逆で外側が紫で内側が赤の配列です。

何故、その様な現象に分かれるのかは、理科の光の屈折で学んだはずです。

しかし、その様な記憶が飛んでいると、子供の頃に絵で描いた記憶から、主虹(しゅこう)の判断で誤答になってしまうのです。

常識と思っていた知識をもう一度疑って見る、これも○×問題をクリアするコツだったのです。

一方、常識は常識の通り、という説も有り、益々混乱するのが○×問題でした。

世界に通用する日本文化

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、時代を反映する話題から創られた問題が多数ありました。

現代ならば、日本で発達した文化で世界中で人気の「漫画」などは恰好の題材と言えるでしょう。

漫画は外国では、「マンガ」或いは「コミック」の名で知られていますが、特に日本でヒットした作品が世界中で受け入れられているようです。

漫画が日本で大流行したのは、戦後の事で、その代表的人物を問う問題がありました。

第14回のグランドテイトンで出題されています。

問・漫画家として、史上初めて国立近代美術館でその作品が展示された人は?

答・手塚治虫

解説 東京・北の丸の国立近代美術館で漫画家としては初の展示会が開かれました。

戦後、漫画ブームの先駆けとなったのは手塚治虫の「鉄腕アトム」のヒットでした。

「鉄腕アトム 画...」の画像検索結果

その後、人気漫画家が多数登場し、数々の人気漫画が年代を超えて、多くの人に愛されました。

対象別に分類すると、幼児向け、少女向け、少年向けのように年代で分ける事が出来ます。

また、それぞれの漫画を満載した専門雑誌が生まれています。

更に、ジャンル別では、ギャグ漫画、スポーツ漫画、釣りやグルメなど趣味を題材とした漫画など、多岐に亘ってヒット作品が生まれました。

これ等がアニメ作品として世界に輸出され、日本の文化として浸透して行ったのです。

今では漫画のキャラクターだけが、独り歩きで人気商品になっている物まであり、外貨獲得に貢献しています。

年々外人観光客が増加していますが、彼らの中には漫画博物館や漫画家の縁の地を訪ねる人も多いと聞きます。

「漫画ばかり読んで、勉強しなさい」と叱られていた時代が嘘のようです。

漫画は日本の誇る文化に成長。

今や親の苦言に「文化を勉強しているんだ」との言い訳も出来そうです。