恐るべき動物の習性

アメリカ横断ウルトラクイズの問題は放送当時の資料を基に創られ、裏取りがなされていました。

従って「正解」も当時の真実であって、時が流れた現在では、真実が変化している事もあります。

例えば、動植物の実態などは研究が進み、新たな真実が発見されるような事がありますね。

先日も、絶滅したと発表されていた「ニホンカワウソ」が長崎県の対馬で撮影され、大騒ぎになっています。

「ニホンカワウソ...」の画像検索結果

そもそも38年前、高知県で目撃されて以来、誰も姿を見ていないため、絶滅種と判定されていたのです。

38年振りに発見されたものの、よく似たユーラシアカワウソが朝鮮半島から泳いで来たのではないか、との疑問を挟む人もいます。

この件に関し、環境省は本格的に調査を始めるとのニュースが先日ありました。

話は戻って、動物の習性なども研究によって、新しい説が出て来る事があります。

第14回のタヒチで、次のような問題がありました。

問・外遊性のサメは獲物をニオイでかぎわけて襲いますが、およそ、何メートル先のニオイをかぎわける?

答・100m

解説 敗者復活の近似値クイズだったので、100mが正解でした。

当時の専門家の意見では、100mでニオイを嗅ぎわけ時速80kmで襲ってくるとの事でした。

しかし、現在ではサメの研究も進み、新たに解って来た事もあります。

サメは380種~400種類あり、習性もそれぞれ異なっています。

「サメの習性」の画像検索結果

当時の専門家の意見では、100m先でニオイを嗅ぎ分けるとの事でしたが、最近の研究では2km先の血の匂いを判別するサメもいるそうです。

特に嗅覚が鋭く、100万倍に薄めた一滴の血のニオイを察知し、好みの味覚を判定するそうです。

ベテランのダイバーは、モリで魚を突くとその血のニオイがサメを惹き付けるので、用心するそうです。

また視覚も鋭く、光の届かない深海のサメは電磁波など、目以外の感覚も合わせて獲物を探す能力があるそうです。

泳ぎのスピードも、飛行機が飛ぶように海中を移動するので、時速80kmは遅すぎるくらいです。

となると、27年前の問題解説は、現在では通用しません。

時代と共に真実も変化する、その代表的な例を話のタネとしてご紹介しました。

文学問題の急所は?

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には、文学と名を付けられた分類がありました。

我々の番組では、クイズ問題を創る作家の皆さんに、問題のルールを毎回繰り返し説明していました。

重要な事は「なぜ今その問題か?」問題のタイムリー性を重視していました。

次に、学校の試験問題のような設問は絶対に避ける、これは問題選考会議で「教科書問題」という判定で不採用になります。

具体的に文学の問題で例を出せば、文学作品と作者を結ぶだけの単純な問題は「没」の判定です。

※学校の典型的な試験問題で、問題作者(教師)の工夫がみられない悪い例です。

文学で言えば、作品を読んでいる、或は筋書きくらいは知っている、というのが基本でしょう。

これなら作品の主人公、舞台となった場所、登場人物の関係などが分かります。

文学作品の舞台は、ウルトラクイズに限らずクイズ問題の定番でもあります。

また作品の冒頭の文章を暗記するのも良いでしょうね。

そんな問題が第6回のアラスカで出題されていました。

問・川端康成の小説「雪国」の中で、一番最初に出て来るカタカナの言葉は何?

答 トンネル

解説 「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった」有名な書き出しでした。

「雪国 川端康成」の画像検索結果

川端康成は日本初のノーベル文学賞受賞者、72年に神奈川県の逗子で自殺で亡くなっています。

番組が放送された82年は没後10年という事で、川端文学が話題になり、クイズ問題にも何問か出ていました。

「伊豆の踊子」の冒頭の文章、踊子を演じた女優名も別の回の問題に出されています。

冒頭の文章では、夏目漱石の「吾輩は猫である」島崎藤村の「夜明け前」古くは清少納言の「枕草子」なども問題として採用されていました。

これ等は冒頭の文章が有名で、学校の授業でも勉強した人が多く、文学問題の基礎知識と言えるでしょう。

基礎はシッカリ、クイズ王への必須条件です。

 

問題には緩急の差があった

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、世界に通じる名言が設問になっていました。

意味は同じでも、国によって表現が変わる事もあり、日本語なら易しい問題でも、外国語だと難問に聞こえる場合がありました。

第15回の決勝戦で、難問として出されたのが次の問題でした。

問・雑音の中の小さな声でも集中すれば聞こえるという効果のこと。何効果という?

答・カクテルパーティー効果

解説 ジャーナリストなど、特別な職業の方なら常識になっている言葉ですが、一般には超難問の部類です。

騒がしいパーティー会場でも、集中すれば雑音の中の小さな音も聞こえる、精神論的な考えです。

スクープは、この精神で追及する記者やリポーターが掴む場合がほとんどで、突撃精神の勝利と言えます。

日本語では「心頭滅却すれば、火もまた涼し」で、心の持ち方一つで、いかなる苦痛も感じなくなる。

座禅の心境で、元を辿れば古代中国からやって来た教えだったのです。

それだけに有名な詩にも数多く引用されており、日本語で求められれば、易しい問題の部類でした。

毎回、決勝戦は難問と易しい問題の「カクテル状態」の中で行われていました。

理由は、ウルトラクイズは視聴者の家族全員が一緒に参加出来る番組を基本姿勢にしていたからです。

知って得をする生活の知識

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には、知って得をする日常生活の知恵がありました。

毎年、夏には虫が増え、特に害虫退治に関する情報が氾濫します。

3年前の8月にデング熱の国内感染が報道され、日本中が大騒ぎになった事があります。

デング熱は、ヒトスジシマカが吸血した際に感染し、場合によっては重篤な症状になる危険な病です。

被害者は、東京の代々木公園で刺されたとの情報で代々木公園では大々的に蚊の捕獲作戦が行われました。

「代々木公園、蚊...」の画像検索結果

それ以後、毎年夏になるとメディアでは、蚊の撲滅情報を流すようになりました。

第11回、今から30年以上前の後楽園球場で「蚊」に関する〇✖問題が出されていました。

問・違う血液型の血を、たて続けに吸った蚊は死ぬ。〇か✖か?

答・✖

解説 当時は血液型が大流行で、一般庶民に血液型の知識が、関心の的になっていました。

人間に異なる血液を輸血する事は出来ない、血液が凝固するから、これは一般常識になっていました。

蚊の場合はどうなるのだろう? 素朴な疑問ですね。

答は半々になるだろう、との予測でこの問題は採用された訳です。

「蚊」が吸った血は消化管(胃袋)に入り血液が凝固しても、どんどん消化されるので死ぬ事はありません。

夏になると、害虫に関する知識が盛んに報道されます。今年は、蚊に刺されたらその場で叩いて殺すのはダメとの専門家の話がありました。

蚊は血液を吸った時に毒を吐きますが、吸って飛び立つ時に毒も吸い取って逃げるのだそうです。

だから、放っておけば痒さは感じないのだそうです。逆に叩いて殺すと、毒が体内に残り痒くなる訳です。

しかも、蚊は垂直に上下に飛ぶ習性なので、叩く場合は横からではなく、真上から叩くと命中率が高まります。

こうした生活の知恵も、しっかりと記憶に残すのが、クイズ道の基礎と言えるでしょう。

昔の生活を振り返る

アメリカ横断ウルトラクイズの問題の中には、昔の日本人の生活ぶりが分かる問題がありました。

昔の日本人の履物と言えば、下駄か草履、旅へ出る時は草鞋(わらじ)というのが一般庶民のパターンですね。

中でも、諺などに良く使われる履物は下駄でしょう。

「下駄を預ける」「下駄を履かせる」などがその代表例です。

第8回、グアムのパートⅡ「暁の奇襲作戦」で、次のような問題がありました。

問・ことわざで、相手にすべてを一任するとき、あずけるの履物は何?

答・下駄

解説 普通なら超易しい問題です。

但し、クイズ形式がグッスリ眠っているところを叩き起こされ、夢か現実か寝惚け眼で、思考が停止状態です。

視聴者にとっては「可哀想」の同情派と「只で海外旅行を楽しんでいるのだ当然派」が半々。

いずれにしても、寝惚けた状態を見て、大いに笑っています。他人の不幸は蜜の味、といったところでしょう。

「下駄を預ける」と何処へも行かれなくなる、相手を信じてすべてを任せる、との意味です。

「下駄」の画像検索結果

一切の決断を、相手に一任する意味で、悪い人間にこの様な権利を与えると、地獄を見る結果になります。

現代では、他人にこんな事を委任する人はいないでしょう。

でも、こうした言葉が一般に使われていた訳で、昔の日本は平和な社会だった事が良く理解出来ます。

一方、江戸では「生き馬の目を抜く」と言うほど、油断の出来ない街、との表現もあります。

結論として……。

何時の時代も人間の考えは同じだという事ですかね。