置き引きの名人芸に出会う

海外旅行の経験者は、皆さん口を揃えて
「日本ほど安全な国はない」
とおっしゃるようです。
確かに、その通りだと思います。
ウルトラクイズで世界中を回った経験で、スタッフをはじめ、私自身を含め泥棒の被害には、数え切れないほど遭いました。
その中でも忘れられないほど見事な置き引きに会った時のお話をしましょう。
あれはアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスの空港、エセイサ国際空港での事です。

その時はロケハン撮影の為の下見)で、我々は三人の旅でした。
アルゼンチンでのロケハンを終え、次の目的地に向かう時でした。
朝早く出発のために、暗いうちに空港に着きました。
広い広い空港のロビーには、ほとんど人影が見当たりません。
ガラーンとしたロビーにはライトが煌々と照り、各航空会社のカウンターには、係員がポツポツと出勤して、朝の準備をしているようです。

↓現在のエセイサ国際空港

エセイサ国際空港

「我々の乗る飛行機は、何時から受付が始まるのかな?」という会話が三人でありました。
航空会社のカウンターは遥か50~60メートル先にあります。
と、若いプロデューサーのO氏が
「ボクが聞いてきます」と言うと同時に、肩に掛けていたショルダー・バッグを残る我々二人の間に置いて、走って行ったのです。
多分バックの中身が重かったのでしょうね。
普通ならそんな無用心な事はしないのですが、早朝でロビーには人影が無いので油断してしまったわけです。
残された私とK氏は、彼のバックを足元に置いて、向かい合って雑談をしていました。
と、その時私の肩をポンポンと叩く人が居たので振り返ると、上品な女性スペイン語らしき言葉で、しかも早口で話しかけてきました。
何かを訊ねているようですが、サッパリ意味が解りません。
そこで「英語で話してくれませんか」というような事を言ったような気がします。
ところが相手は身振り手振りで一向に質問をやめないのです。
その時、私と雑談をしていたK氏にも同じくスペイン語で話しかけてきた女性が居たようで、二人共その対応で注意散漫になっていたのでした。
やがて二人の女性は我々と話が通じないので、あきらめて立ち去りました。
我々も

「参ったね。スペイン語で何言ってるのか解らないや」

ってな事を話して、O氏の戻ってくるのを待ちました。
間もなく彼が戻って来て、

「あれっ!ボクの鞄は?」

というのです。
足元を見ると、見事に鞄が消えていたのです。

「あっ、やられた」

と気が付いた時には後の祭りです。
我々がスペイン語で四苦八苦している時に、側を一人の男が通り過ぎた様な気がします。
つまり、彼らは三人組置き引き犯だったのです。
我々は慌てて、彼らが消えた暗い駐車場に向かって走りました。
しかし、車の間には人影が見当たりません。
鞄の中には、彼のパスポートと、ロケハンの費用として多額の現金が入っていたのです。
警察に届けて知ったのですが、彼女たちは「コヨーテ団」と呼ばれる窃盗グループで、

「普段はナイフ拳銃で武装しており、捕まえようとしたら殺される所だった。
あんた達は運が良いよ」

と慰められたのでした。
可哀想にO氏はパスポートの再発行まで、数日間足止めを食らってしまい、一人アルゼンチンに取り残される羽目になったのです。

↓本物のコヨーテ

コヨーテ

「置き引きの名人芸に出会う」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0
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    >カメちゃんさん
    あなたの思い出の地フェゴ島でも、ロケハンの時に、忘れられない出来事がありました。そのうちに書いて見たいと思いますので、お楽しみに。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    私たちは添乗のK氏に「絶対に油断しないで!」と毎度のようにキツク注意されていたんですね。
    特にブラジルでは「日本人はお金持ちだから盗ってOK、って思われているんだから注意して!」と言われ、
    食事などで着席した際に自分の足元に置いたバッグも、
    「本当に狙われちゃうよ!」とショルダーのひもの部分などを自分の足に巻きつけるようにまで指導されました(笑)。
    おかげさまで、誰にも実害はなかったのですが、
    K氏の言葉の裏にはそんな実害があったとは!
    何より、お三方がご無事で何よりでした…。

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