アメリカ横断ウルトラクイズでは、毎年1ヶ月の旅を続けます。
旅の荷物を入れるのは、スーツケースですが、どんなに丈夫な造りでも、1ヶ月間旅を重ねると、アチコチが傷だらけになってしまうのは仕方が無い事ですね。
何しろ飛行機に載せたり、降ろしたり、バスに積んだり降ろしたり、その度にポンポン放り投げられるような扱いを受けるのですから、新品のスーツケースも半月もしないうちに、アチコチ傷が付いて、それをいちいち気にしていたのでは、とても旅は続けられません。
私は最初の頃は、ソフトタッチの合成皮革製のスーツケースを使っていました。
これだと乱暴に扱われても、その都度凹むような事がないので、気にならなかった利点がありました。
しかし、これも3年4年と使ううちに傷が目立ってきました。
この頃、あるスタッフがハリバートン社製のZEROのスーツケースを使い出したのです。
ZEROは、その頃宇宙飛行士が宇宙へ旅発つ時に、お揃いのアタッシュ・ケースを持ってニュース映像に出て人気のブランドになっていました。
それだけに、普通のスーツケースの何倍かの高価な値段が付いていました。
しかし、例えば水に浸かっても、ケースの中には水が入らないという神話があって、それだけのお値段が付いていたのでした。
いくらなんでも、そのような高価なスーツケースを持つ身分ではないと、横目で見ながら、羨ましく思っていたのでした。
ところがある時、ニューヨークでZEROの店を発見し、値段を見ると日本で買う半額以下の定価だったのです。
そこで、店員さんと交渉すると更に3割程度値引きをするというのです。
しかも、ゴールド、シルバー、ブラックと色も揃っています。
これを見逃す手は無いとばかり、最初は大型のスーツケースを買って、得意な顔で持ち帰ったのです。
すると、これを目ざとく見つけたスタッフが、「幾らだった?」と聞くので、正直に答えると、彼も仲間とすっ飛んで、そのお店に駆けつけ、同じようなスーツケースを買い求めました。
実は思いは同じで、スタッフはみんな最初のZEROを横目で眺め、何時かは自分もと思っていたのでしょうね。
私は次の年も、また次の年も我が構成作家の後輩には、「このスーツケースは丈夫だぞ」と勧め、我々のチームは全員お揃いのスーツケースを持つようになりました。
こうした流れは、演出チーム、技術チームにもすぐに伝染し、「もっと安い店を見つけた」というような情報が乱れ飛び、たちまちウルトラのロケ・チームの荷物は高価なZEROのスーツケースのオンパレードとなったのです。
ホテルでは、ポーターが荷物運びを手伝ってくれるのですが、彼らは我々のスーツケースを見るなり、「Oh!」と目を見張るのです。
日頃彼らは、旅行者の荷物を見て、客の品定めをする癖が付いているのでしょう。
多分「上客だ」と喜んだと思うのですが、その割にはチップの額が荷物1個1ドルという決まりで渡していたので、がっかりさせたかも知れません。
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一昔前、免許を取って車を買った人が「いつかはクラウン」なんて言ってた時代がありましたが、そちらの業界でも同じような言葉があったんですね…感慨深いです。
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スーツケースもスタッフ同様、タフではないと務まらないといったところですね(笑)。
かなり荒い扱いに耐えなければいけませんから、自然にスタッフ御用達になる物は丈夫さにかけては一流のものが集まってきたのではないのでしょうか。
それにしても、日本の店頭に並ぶまでのルートで誰がそんなに金額を上乗せしてるんですかね? 他の物もその調子なら、日本で買うのがバカバカしくなってしまいますね。