アメリカ横断ウルトラクイズの挑戦者の中には当時全国の大学に誕生したクイズ研究会のメンバーが多く含まれていました。
クイズ王になった人達もクイズ研が多く、大学対抗クイズ合戦の様相を強めていました。 大学の研究会ですから、多分日頃の活動はお互いに想定問題を作り、それを発表しながらクイズの腕を磨いていた事でしょう。
その様な挑戦者が多くなると、一般視聴者の参加希望が減ってしまうのではないかと、我々のスタッフの中には心配する人間もいました。
クイズ問題の責任者だった私は、クイズ研と問題作りの腕比べのような立場に置かれ、クイズ研の想定問題を避ける様な形で面白い問題を作らなければなりません。 その様な中で多分クイズ研のネタになりそうな一覧表を見つけた事がありました。 それは、江戸時代の年表で将軍の在位と元号が書き込まれた年表でした。 その中からクイズ問題になりそうな事柄を抜粋してみましょう。
先ず、将軍として在位が長かったのは、4代将軍家綱、5代綱吉、8代吉宗、この辺が長期政権で29年。
次が3代家光の28年。 10代家治の26年と言ったところが目立ちます。 そうした中で群を抜いて長期政権だったのは、11代将軍の家斉で何と51年間も将軍職に就いていたのです。
彼は1787年15歳の時に将軍職に就き、1837年次男の家慶に譲って役職を退いたものの大御所としてその後も実験を握り続けたのです。
驚く事は妻妾16人を持ち、男子26人、女子27人という子沢山将軍でもありました。
現代ならギネスもので、テレビの特番になりそうな将軍様だったのですね。
逆に短期政権は初代家康が慶長8年に徳川幕府を開き、15代慶喜が1867年(慶応)に大政奉還で幕を閉じました。 家康、慶喜、いずれも短期政権で2年でした。
慶長で開き、慶応で幕を引いたこの辺も面白い因縁かも知れません。徳川幕府は264年続き、この時代を江戸時代と呼んでいました。
恐らくこの様な年表もクイズ研究会では参考にして、想定問題を作った事でしょう。
一番長かった将軍は? 逆に短期の将軍は?
その様な練習問題は作られた事でしょう。 我々は今の材料から第16回のニューヨーク決勝で次の問題を作りました。
問・
江戸幕府が開かれたのは1603年だが、その時の日本の元号は何?
答・ 慶長
解説 慶長8年2月12日、徳川家康が征夷大将軍になった時に開かれ、江戸時代の歴史が始まりました。
この時の対戦者は東大クイズ研のTさんと、呉服屋の若旦那Oさんの戦いで、どちらが正解したのか忘れましたが、当然答えていたと思っています。決勝で戦うような人達は、出来事の核心を掴むのが優れています。だからこの辺は間違いなく答えられた、クイズ名人でした。
こんばんは。
徳川時代の問題は、いろんなクイズ番組でも出題されていますし、また、時代劇などでもおなじみですから、いろんな世代の視聴者が楽しめる出題になりますね。
今回、ご紹介いただいたエピソードの中には知らなかったものもあり、またひとつ勉強になりました。ありがとうございます。
さて、江戸幕府が開かれた1603年の元号の問題は、実は「駆け引きの問題」でもありました。
というのも、豊臣秀吉が2度の朝鮮出兵をした出来事を「文禄・慶長の役」といい、これは小中学校の歴史の教科書でも学習する内容です。このうち、「慶長の役」は1598年ですから、1603年と5年しか開きがありません。
ですから、確実に答えが分からなくても「1603年も、まだ元号は慶長なのでは?」と予測できます。一種の「応用問題」と捉えることもできるわけです。
昔のVTRを見返しました。東大クイズ研のTさん・呉服屋のOさん、ともに少しの間をおいて、ほぼ同時にボタンを押し、Tさんが解答権を獲得しました。しかし、5秒の制限時間をオーバーして、Tさんはお手付きしてしまいました。
おそらく、Tさんは駆け引き、「この問題は、僕が先に押さないと、Oさんにポイントをとられる、思い切って勝負しなくちゃ」という具合で勝負に出たと思います。しかし、「慶長」を思い出せなかったという印象です。
きっと制限時間が長ければ、また、ニューヨークの決勝戦という緊張する場面でなければ、博識のTさんなら、答えることができたと思います。
そういう点で、この出題はとてもよくできた、最高の問題だったと思います。
私のブログを直ぐに検証できるVTRをお持ちとは凄いですね。私も前はウルトラの全編を持っていましたが、全部整理のため破棄してしまったために、今は記憶だけが頼りという情けない状態です。今後も正しい検証を宜しくお願いします。