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スタッフ全員が涙

メリカ横断ウルトラ・クイズは全部で17年間にわたって放送されました。
ですから、1回から17回までが番組のリストにあります。
しかし、細かく言えば「史上最大の敗者復活戦!」という番組が1,982年に別枠で作られているのです。

自由の女神2

この、別枠の敗者復活戦に関しては、私も思い出が沢山有ったので、昨年の11月に3回に分けて、このブログで書いています。
その話と重複しない内容で、もう1つ思い出した事が有りますので、今日はそのお話を書いてみようと思います。

は、この番組は私にとってプロデューサとしてのデビュー番組だったのです。
それまでの私は、番組の構成作家として参加していましたが、全く突然に
「プロデューサーを引き受けて欲しい」
と要請され、引き受ける羽目になってしまいました。
その辺の経緯は前に書きましたので、省略いたしますが、この番組にはあまりにも悪い条件が重なっていました。
 
その1、準備の時間が少なすぎる。
その2、放送枠が悪すぎる。大晦日のNHK「紅白歌合戦」の裏番組である。
テレビ業界では、この枠で番組を制作するのは自殺行為に近いと言われている枠なのです。
その3スタッフが少ない。
この様な悪条件で番組を引き受けた訳ですから、仲間からは「お前はアホか?」と言われたものです。

だけど引き受けたからには、最後までやり抜かなければプロとは言えません。
準備の時間が少ないのは、頑張れば乗り切る事が出来るでしょう。
但し、クイズ問題に関しては全て私に任せて欲しいという条件を出し、これを了承させたので、普通よりは気持ちが数段楽になりました。

「紅白の裏番組」という問題は、実はその数年前に「裏番組をブッ飛ばせ!」という低俗番組と悪評の高かった番組を構成作家として参加していたので、驚くほどの事では有りませんでした。
問題はスタッフが少ないという点です。
ウルトラ・クイズを経験しているディレクターは、全員その年に放送される番組の仕上げ作業に取りかかっていたので、1人も参加できません。
そこで、私は高校生クイズの経験者をはじめ、日頃親しい仲間に声を掛け、参加してもらう事にしたのです。
 
ところが、彼らにも周囲からチクチクと嫌味な言葉が耳に入って来たそうです。
「ウルトラ・クイズを傷つけるような番組を作るなよ」

これは、受け取りようによっては励ましの声かも知れませんが、プレッシャーになる事だけは事実です。
そうなると、構成作家も、ディレクターも本編よりは、少しでも優れた作品を作ろうと、全員の心が1つにまとまってくるものなのですね。
「なにくそ、本編に負けるものなんてつくるか!」
という反骨精神です。
お陰で、会議では面白いアイディアも沢山出されたし、実にチームワークが良く、短い期間でロケも順調に進行しました。

そして大晦日の決勝戦生放送のぶっつけ本番でした。
我々が、サブコン〔番組をコントロールする副調整室〕に入ると、何とそこには日本テレビの幹部がずらりと顔を揃えていたのです。
大晦日ですから本来なら自宅で家族と団らんの時のはずです。
それを、我々の番組のために個人生活を犠牲にし、生放送に立ち会ってくれていたのです。
これだけで、この番組が如何に期待されていたかが覗えます。

後の決勝戦が終わり、エンディング・テーマ曲がかかると、幹部の皆さんが全員が立ち上がって、我々スタッフに向かって大拍手となり
「面白かった、有難う。ご苦労さん!」
と声を掛けてくれたのです。

それを聞いたTディレクターの目からぽろぽろと涙があふれ出ました。
恐らく、本編を傷つけるような作品になってはいけない、という緊張の糸が切れたのでしょうね。
この涙はその場に居合わせた全スタッフに、次々と伝染し、感動の涙の渦となったのです。
それまで、私は感動で涙を流した経験は有りませんでしたが、この時ばかりは、それを抑える事が出来ませんでした。
仕事で、これ程感動出来るなんて、実に良い職種を選んだものだと思いました。
その意味では、ウルトラクイズ 有難う と言いたいです。

水滴

女性が断然強い回

メリカ横断ウルト・クイズは17年もやりましたから、時には大きな番狂わせが起きる事もあります。
その、代表的な例は第4回に起きました。
後楽園球場の○×クイズを潜り抜け、成田のジャンケンにも勝ち、難関を突破して、アメリカ本土に上陸したのは男6名、女4名のラッキーな挑戦者が10名でした。
この中には、ご夫婦揃って本土まで駒を進めたカップルもいました。

本土ではサンフランシスコからニューオリンズまで、6つのチェックポイントでクイズが行われましたが、その6ヶ箇所で敗者となったのは、全員男性でした。
つまり、毎回男性がクイズに敗れるので、残ったのは女性ばかり4名になってしまったのです。

といって、当時出題された問題を調べてみると、女性が有利の問題ばかりが出されたというわけでは有りませんでした。
いや、それどころか機内ペーパー・クイズでは、最下位という成績だった女性が、何と準決勝の地、プエルトリコまで進出してしまったのです。
これは番狂わせと言うか、大荒れの展開です。
我々は、毎回1番初めに勝ち抜ける人と、逆に敗者を予想しているのですが、この回ほど予想を裏切る結果になったのは、初めてでした。

んなクイズと運の強い女性軍4名を載せて、ニューオリンズから、マイアミ経由でカリブ海に浮かぶ魅惑の島、プエルトリコに向かいました。

プエルトリコ

準決勝は女性4名による、早押し通過クイズです。
3問正解すれば、ニューヨークを賭けて、通過クイズに挑戦出来るというおなじみの形式です。
ここまで来ると、機内最下位だった女性も自信が出たのか善戦し、中々迫力のあるクイズ戦を繰り広げました。
正に女同士の戦いで、これは当時話題になったものです。

果は当時21歳のOLだったUと、同じく20歳のOLMが勝ち抜き、ニューヨークに進出したのでした。
ウルトラ・クイズでは毎回断トツに強い優勝候補が2人か3人居て、視聴者も誰が勝つか予想を楽しむような傾向があったのですが、この時ばかりはそのような予想が、次々と裏切られていました。
戦後、女と靴下が強くなった、と言う言葉がありましたがそれを実証した 第4回でした。

サッチャー

○×問題の最大の失敗作は?

メリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題で、1番苦労したのは○×問題である、という事は今までにも何回かこのブログで書いてきました。
では、その苦労した問題の中で最高の傑作は、と聞かれると返事に困ってしまいます。
我々は、採用された問題はどれを取っても傑作だと思っていますし、挑戦者の立場になれば、自分が誤答した問題を忘れられない問題として記憶しているでしょう。
それだけに、○×の問題は作るのが難しいし、採用にも慎重を期しました。

そのような中で、記憶に残る失敗作を挙げるなら、確かに1問だけありました。
それを発表する前に、○×問題の大事な必要項目を挙げて見ます。

1、耳で聞いて、問題点が確実に理解できる事。(これは、泥んこクイズのように、瞬時に判定出来る事が必要だからです)
2、正解率は50%が理想である。(東京ドームの様な会場を想定すると、正誤が半々に分かれるのが望ましい)
3、常識の盲点を突いた問題が望ましい。
以上の様な条件を付けて、クイズ問題を作家達に発注していました。

○×問題の最大の失敗作は第2回の後楽園球場の2問目に出題されました。

・歌手、山口百恵は本名である。×か? という問題でした。

因みにこの問題を作った作者が悪い、という事を言っている訳ではありません。
当時のスーパー・スターを題材にした訳で、これ自体は何ら問題は有りません。
むしろ、この失敗作の責任は、クイズ選考会議そのものに有りました。
プロデューサーやディレクター、構成作家など日頃、偉そうにクイズ問題に注文を付けていた我々が、この問題を採用したのですから、責任があるのは当然です。
何故、この問題が最大の失敗作だったのかは、結果が表していました。
699人の挑戦者に出され、なんと 699人中誤答したのはたった1人だったのです。
つまり、99,9%が正解した訳で、これでは正解率50%には到底及びません。

クイズ会議の細かい状況は思い出せませんが、多分この様なやり取りがあったと思います。

否定の意見・「山口百恵が本名なのは、日本人なら常識ですよ。間違える人なんていない」
肯定の意見・「いや、そういう思い込みがキミの欠点だ。一般の人は知らないよ」
否定の意見・「こんな問題を採用したら、大恥をかきますよ」
肯定の意見・「やってみなければ解らない。勝負しようじゃないか。採用決定!」

第2回と言えば、番組もまだ始まったばかりで、我々も手探り状態だったのです。
だから、我々の常識が世間の常識と思い上がっていたのかも知れません。
本当は世間の常識の方が、ずっと先を進んでいる、という事をクイズ問題を通して知ったのでした。
世の中、なめたら あかんぜよ という事ですよね。(古いですね)

ろくろ_失敗

恐縮ながら再びPRです。

メリカ横断ウルトラ・クイズの思い出を書いていますが、このブログは私にとっては唯一の意思伝達の場でもあります。
そこで、個人的な情報も発信させて頂きたいと思います。

今月は、私の少年時代の体験を元に、ノンフィクションのお話を電子書籍で出版いたしました。
荒野の打ち上げ花火」というタイトルで、思ったよりも多くの方に読んでいただき感謝しています。
内容は日本が戦争に負けて、当時中国に住んでいた私をはじめ、我々国民が罰ゲームを受けている、というようなお話です。
機会があったら是非お読みいただきたいとお願いいたします。

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今度は電子書籍でミステリー小説のお話です。
題名は「霞が関ブラックボックス、死ぬのは奴らだ」

〔内容紹介〕
霞ヶ関には黒い陰謀が渦を巻いている。
元・通経省のキャリア官僚だった小杉忍は、霞ヶ関の内情に詳しい政治評論家として活躍している。だがそれは表の顔で、実態は自称「霞ヶ関の掃除屋」だ。
キャリア官僚は地位が上がる毎に膨大な権力を握る中枢に近づいて行く。
その結果、女、金、将来の身分、などを餌にした悪への誘惑が増してくるのだ。
この誘惑に負け、政治家とキャリア官僚がタッグを組んで、利権を漁れば収穫は大きく、日本国の未来は暗澹たる物になってしまうだろう。

これを防ごうと、キャリアの悪事を暴いて、日本国を正しく運営するため、小杉は必殺仕事人に徹している。

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なぜ早川は過去の法案に強い関心を抱いているのか?
政治家と官僚の癒着の現場を探る、チーム小杉の活躍は?

と、いったお話です。
登場人物には、実在の人物を連想させる政治家も何人か出てきますので、それを想像しながらお楽しみ頂きたいと思います。

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問題の味付けはスパイスの如し

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、クイズ問題の面白さが番組の命と考えていました。
だから、クイズを作るクイズ問題作家には、いつも厳しい注文を付け、作家の皆さんも、我々の無理な注文に良く答えてくれたと感謝しています。

このブログでも、クイズ会議の様子を何回か紹介しましたが、作られた問題に対する評価はいつも厳しく、判定を下すディレクターやプロデューサーは、簡単に「没」という言葉を口にしていました。
作家側の立場の私は、何とか採用に持って行きたいので「没の理由は?」と食い下がったものです。
彼らの理由で多かったのは、「単なる知識、教科書問題!」という答えでした。
確かに、知識の羅列は問題として面白くありません。
だから、同じ知識を引き出すにしても、その中から共通点を探し出し、それを問題にすれば、興味のある問題となる、という話をクイズ作家にした事が有ります。

するともう少し、具体的に話して欲しいという声が有りました。
そこで歴史の問題を例に出して、話した事があります。
徳川幕府の将軍を初代から3代まで、名前を挙げる問題を考えてみたらどうか、と言ったのです。
初代が徳川家康、2代が秀忠、3代が家光、この辺は教科書で習った事なので、彼らの業績を問題として、名前を答えさせても、クイズ会議で採用される可能性は極めて低いのです。
それよりも、この3人の将軍に共通した何かを探し、それを問題化しては? と宿題を出したのです。

すると次の週に、良い問題がいくつか提出されました。
中でも1番印象に残ったのは、3代の将軍に仕えた大久保彦左衛門に注目した問題でした。
彦左衛門は、将軍にもズケズケと、思った事を進言する口うるさい「爺」として、物語に登場したキャラクターですが、問題は以下の通りです。

大久保彦左衛門が仕えた将軍は、家康、家光、残る1人は?

家康は初代将軍、家光は3代将軍、となれば正解は残る2代の秀忠しかありません。

徳川秀忠

勿論、歴史的な知識が無ければ正解は答えられませんが、これなら単なる「教科書問題」という否定的な判定は出せません。
問題にはこのような味付けが有ってこそ「なるほどねえ」と視聴者の皆さんも納得してくれたわけです。

味付けが大事、いわば問題作家はシェフであり、板前でもあったのです。

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