アメりカ横断ウルトラクイズは、アメリカ各地でロケを行った番組です。
ロケで一番心配なのはスタジオ収録と違って、当日の天気に左右される事があるという点です。
前にも書きましたが、ウルトラクイズは雨が降ろうが、槍が降ろうが、ロケを中止しないで決行しないと番組が成立しないという過酷な条件で始まった番組でした。
だからこそ、17年間一度も天候に左右されずに、ロケを行ってきました。
天候に左右されずにロケを行うのは、我々スタッフの常識になっていましたが、しかし、天候がクイズ形式を左右するようなものもありました。
その良い例が、第11回のカンクーンでのクイズ形式でした。
それは、「日の出タイムショック」という形式でした。
これは、クイズ形式案として前々から出ていて検討されていましたが、当日の天候に左右されるというリスクが高い形式でした。
ルールは、早朝薄暗い内に準備を始め、夜が白々と明ける前にセットアップを終え、太陽が東の空に顔を見せたのを合図にクイズがスタートします。
そして、太陽が丸い姿を全部見せたところで、クイズは終了するというものです。
その間に早押し問題が次々と出され、終了までの間に正解獲得の多い順に勝ち抜けるというルールでした。
お手付き、誤答はマイナス点が付きます。
太陽がすかっり出るまでの短い時間の戦いです。
太陽がすっかり顔を見せた時に、得点が一番低い一人が敗者になる訳です。
この形式を成立させるには、クイズ当日、東の空が快晴で雲一つ無いのが条件となります。
私達の経験ではアメリカ西部の砂漠地帯なら、どこでも実現出来る環境はありました。
しかし、その様な場所の場合、恒例のばら撒きクイズが行われていたのです。
その様な時に、メキシコのカンクーンの情報が入ってきました。
カンクーンは、その頃はまだ無名の観光地で、アメリカの新婚さんの旅行先として人気が出始めたばかりの地でした。
10年前にはユカタン半島のジャングルだった場所で、観光地としては全くのニューフェースだったのです。
では、何故このジャングルの地が観光地に変身したのか、実はメキシコ政府の涙ぐましい努力の成果なのですね。
海の透明度、砂の美しさ、温度、湿度などリゾート地としての条件をコンピューターにいれて調査したところ、世界中で最もリゾート地として相応しい場所として選ばれたのがこのカンクーンだったのです。
そこで急遽ジャングルは切り開かれ、観光地建設が始まったのです。
年間の平均気温が28度C,湿度は低く、雨季も無いし、ハリケーンが襲ってくる心配もまるで無いという理想郷なのです。
この地をロケハンした我々は、早朝の暗い内からクイズ会場候補地に出向き、胸をわくわくさせながら東の空を眺めました。
すると全く雲一つない東の空が次第に明けて来て、真っ赤な太陽が顔を見せ始めました。
「これなら行ける!」と確信出来る手応えを掴み、この地のクイズ形式は決定しました。
クイズ当日、挑戦者は、暗い内にホテルから連れ出され、一体何をさせられるのか、不安に思った方もいるでしょうね。
でも、それから間もなく世界一美しい日の出の場所での、クイズを体験したのでした。
あれから20年以上、カンクーンがハリケーンで被害を受けたというニュースも聞いた事が無くやはり、あの地は世界一の理想郷なのかもしれません。