ラジオ体操の始まり?

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題は、日常の生活の中にある出来事から、盲点を探すと思わぬ発見があります。

或る時、クイズ問題制作者に「朝目覚めてから、夜眠るまでの習慣的な行動の中」から問題を作るように注文を出した事があります。

その時に作成された問題が、第14回のオレゴン街道で出題されました。

問・正式名称は「国民保険体操」。一般には何と呼ばれている?

答・ラジオ体操

解説 小学校時代に学校で習い、以来成人してからも、家庭や職場で延々と受け継がれているラジオ体操。

人によっては、毎朝の習慣になっている方も多いかと思います。

そもそもの成り立ちは、1928年に遡ります。

逓信省の簡易保険局と文部省の体育課、日本放送協会の3者が国民の「健康生活を増進」させる目的で開発したのだそうです。

illust2843[1]

老若男女を問わず、誰でも出来る事をポイントに考案したというだけあって、無理のないポーズが特徴ですね。

単に「ラジオ体操」は第1を指しますが、その後「ラジオ体操第2」「みんなの体操」とパターンは増えています。

毎日の生活習慣の中から「ラジオ体操」に着目したクイズ作家が、ラジオ体操の歴史を調べた結果、「国民健康体操」という意外性のある言葉を探し出したのです。

現在では日本各地で、ラジオ体操の会が自然発生的に出来上がり、国民みんなが楽しんでいます。

因みに、日本人の耳に聞き慣れた「ラジオ体操」の曲を作られたのは作曲家の服部正さんでした。

普段の生活習慣の中にも、この様な面白い発見があるのがクイズの大いなる楽しみ方と言えそうです。

 

実りの秋となりました

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には、日本の四季に関する問題も多数出題されていました。

日本には四季折々の情緒がありますので、それぞれクイズ問題になり易い知識でもあります。

四季に関して、日本人としては知っておきたい知識に俳句の季語がありますね。

中学時代の国語の授業で習う事なので、忘れている人々も多いと思いますが、俳句の季語は結構ややこしいようです。

第16回のサンフランシスコで次の問題が出されていました。

問・俳句の季語で「さわやか」といえば、その季節は何?

答・秋

解説 今年のように蒸し暑い日が続くと、早く爽やかな日が来ないものかと期待します。

その様に考えれば、「秋」と簡単に正解出来る問題かもしれません。

確かに秋は大気が澄み、遠景がハッキリ見えるし、皮膚も乾いてサラサラとさわやかです。

でも、寒い日が続いて早く爽やかな暖かい陽射しが来ないかなあ、と期待する人なら「春」と勘違いするかもしれません。

俳句の季語の線引きは、微妙な分かれ道があって、日本独特の文化なのですね。

俳句は和歌と異なり、季節を一つ詠み込むのが作法です。従って、季節感の文学とも言われています。

002699876-1_m[1]

しかも、春夏秋冬は昔の日本で使われていた旧暦で分類されているので、四季を勘違いし易いのです。

春の始まりは1月で、その代表は年賀状の新春という言葉でしょうね。

同様に夏は4月から5月、6月までの3か月。

秋は7月から8月、9月まで。

冬は10月からとなるので、現代人の季節感とは当然異なって来るのです。

季語は「生き物」「植物」「気象・天文」「行事」「生活」などの中から選ぶわけで、永い歴史の中で築かれた決まり事と言えます。

クイズ問題に良く出る俳句の季語、歳時記などはお年寄りの得意な分野です。

若い挑戦者には苦手な分野かも知れませんが、でも、これは日本人としての基礎知識なので、クイズファンなら一応は頭に入れておくべき情報と言えるでしょう。

 

大洪水のニュースで思い出す

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題は、世の中で知られている常識が基本問題になっています。

例えば今年の夏は異常気象という言葉が盛んに使われ、先日も50年ぶりの大雨とかで、各地で洪水が発生しました。

9月11日には、栃木県の鬼怒川の堤防が決壊したために下流の茨城県の常総市で、大洪水となりました。

この日はテレビで半日以上、被災者の救出の模様が生放送で中継されるなど、3・11の東日本大震災を思い出させるような一日でした。

大洪水という言葉で思い出されるのは「ノアの方舟」の物語です。

このお話は旧約聖書の「創世記」に出て来る物語で、キリスト教徒なら常識的な知識になっているお話かもしれません。

でも、クイズ好きな方ならば「ノアの方舟」とは一体どんなお話なの? と粗筋くらいは知っておくべきかもしれません。

第5回のテオティワカンで、次のような問題がありました。

問・「ノアの方舟」から最初に飛び出した動物は?

答・カラス

解説 「ノアの方舟」とは地球上に増えた人々の悪行に怒った神が、洪水で滅ぼすことを考えたのです。

そこで、神と共に歩んだ正しい人、ノアに計画を告げ、方舟の建設を命じます。

完成すると、ノアは方舟に妻と3人の息子夫妻、全ての動物のつがいを乗せました。

大雨は40日間続き、世界中が大洪水に見舞われ、すべての生き物が滅ぼされてしまったのです。

ノアは水が退いたのを調べるため、最初にカラスを放ったのですが、カラスは止まる場所が無く戻ってきたのです。

その後、水が退き方舟に乗っていた生き物の子孫で地球は生まれ変わったという創世記に出てくるお話です。

「ノアの方舟」のように知名度が高い場合には、せめて物語の粗筋程度は頭に入れておく。

これがクイズに強くなる人の心構えのようです。

 

世界の大河は問題の宝庫

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、単に学校で習った知識をそのまま問題にすることはありません。

社会、理科、国語、どの教科にしても、学校で習った事をそのままクイズ問題にしたのでは、エンターテイメント番組とは言えません。

学校の勉強から一歩進んだ知識、そこに新しい発見があって面白い知識となるのでしょうね。

例えば社会科で地理という教科がありますね。日本に限らず、世界中の地理を学びます。

世界(日本)で一番高い山は?

一番長い川は? 大きい湖は?

その様な知識は教室のテストで競い合えば良い事で、教科書問題という分類で、クイズ問題の選考会議でふるい落とされてしまいます。

例えば、「長い川」では、ナイル川でも、インダス川でも、それぞれ文明の発祥地として学校で習っています。

それに付随した面白い情報を探し、クイズを創るのがクイズ作家の仕事でした。

中国には、黄河、揚子江、という大きな河が存在しています。或る時、この2つの河を題材に問題を創るように注文した事があります。

その時に出来上がった問題が第8回のバハマで、出題されました。

問・中国の大河、「揚子江」の正式な名前は?

答・長江

解説 長江は中国大陸の中央部を流れる、全長6300kmの大河で、世界で見るとナイル川、アマゾン川に次いで第3位の大河です。

Tenryū_River,_Tenryū_Ward_Hamamatsu_2012

日本では揚子江の名で知られていますが、これは揚州市付近から河口までの名称で、正式には長江と呼ばれています。

チベットの山奥を源流に峡谷を流れ、次第に大河となって東シナ海に注いでいます。

「揚子江」「長江」も共に聞いた名称です。

でも、実は同じ川だったという意外性が、問題として採用された理由でした。

 

 

台風の置き土産

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題は、その時代の出来事や話題から沢山のクイズ問題が作られていました。

歴史は繰り返すという言葉があります。

あれから何十年も経っているのに、時々同じような出来事や流行があり、今年でも通用しそうなクイズ問題が、あの時代にも沢山出題されていました。

例えば今年は猛暑が話題になり、熱中症と言う言葉がテレビで盛んに取り上げられています。

また、台風が多いのも今年の特徴で、幾つの台風が日本を直撃した事でしょう。

中でも7月18日に上陸した⒒号は各地に被害を与えていますが、その中で話題になったのが京都の鴨川の増水でした。

e8f8f093[1]

鴨川に生息している特別天然記念物のオオサンショウオが、一般の道路に流れ出て、アチラコチラで目撃情報が出されたのです。

特別天然記念物が、一般の道路に流れ出たのですから、ニュース番組でも何度も取り上げられていました。

オオサンショウオに付いては、第7回のニューヨークの決勝戦でファイナル・アンサーになった事があります。

問・現存する最も大きい両生類は何?

答・オオサンショウオ

解説 当時の資料では最大のものは、128cmにも達すると書かれています。

駅前旅館の若旦那のニックネームを持つ、横田さんが正解してチャンピオンになりました。

身体を半分に切り裂いても、生きているほど生命力が強いので、別名をハンザキと呼ばれています。

20150719-00000010-asahi-000-view

もしも、今年の出来事からクイズ問題を創るとしたら、台風で話題になった鴨川のオオサンショウオは外す事の出来ない題材でしょう。

毎年、ホットな話題から問題を創る。これがウルトラクイズの基本的な考え方でした。