急遽クイズ形式が変わる事もある

メリカ横断ウルトラ・クイズは、クイズ形式に長い準備とお金を注ぎ込みました。
それはロケ地の許可、設備、使用する道具などが大掛かりになればなるほど、準備が大変になるのはお判りでしょう。
クイズ問題も形式に合わせて準備するのは当然と言えます。
毎年の事ながら、ロケ出発の前夜まで、クイズ問題は制作されていました。
クイズ問題担当の私としては、いくら数を揃えても、これで安心という気持ちにはなれません。もし、旅の途中でクイズ問題が不足したら、ロケは続けられなくなってしまうからです。

れほど準備万端で出かけても、現地でクイズ形式を急遽変更するようなハプニングが起こる事もあります。
例えば、第13回オーストラリアへ行った時には、航空会社のストライキに巻き込まれて、予定のスケジュールが組めなくなりました。
また、第16回グアムに着いたら、前日に当地を襲った台風の影響で、グアムの街は大変な惨状でした。
民家の屋根は吹き飛ばされ、電柱や街路樹がバタバタと倒れ、街中が泥んこのプール状態でした。

グアムの台風

地がこの状態なのに、我々が○×泥んこクイズを行うなんて出来る筈が有りません。

泥んこクイズ4

戦者も視聴者も、みんなが期待していた泥んこプールへの飛び込みは中止となりました。
その代わりに、チーム対抗、早押しクイズになりました。
ルールはグアムの浜辺に3台の早押し機が設置され、好きな列に並ぶ事が出来ます。
最前列の3人にクイズ問題が出され、1問正解で勝ち抜けられます。
逆に負けた2人は、回答権を失って最後尾に並ばなければならないのですが、最初に並んだ列を替える事は出来ません。

の時、挑戦者は40人いましたから、〇×泥んこクイズならば、○×クイズが40問あれば大体の決着が付く計算でした。
我々は吟味した○×問題を40問準備していましたが、この問題は全く使う事が出来ません。つまり、無駄になったという事ですね。

その代わりに早押しクイズの問題を急遽100問以上用意しました。
この時、放送で使われたのは21問でしたが、実際にはその何倍ものクイズ問題が消費されました。
そうです。誤答や誰も答えられない問題が有りますので、クイズ問題はどんどん消化されて行くのです。
旅はまだ始まったばかりなのに、予定外の早押しクイズ問題が100問以上も消えてしまったのです。

論、クイズ問題は、毎年何千問も用意するので、このくらいの事で驚く事はないのですが、予定はだいぶ狂ってしまいます。
この様に、クイズ形式は急遽変わる事もありましたが、日程が変わる事は17年間1度もありませんでした。
何故かと言えば、各地でのクイズ会場の許可、これを1日でもずらすと大変な事になります。また、スタッフ、挑戦者合わせて100人近い人間の移動も大ごとですよ。
飛行機など、1度キャンセルしたら、次の予約が取れる保証は有りません。
ホテルの確保も同じでしょうね。
この様な事を考えると、雨が降ろうが、槍が降ろうが1日たりとも日程を変える訳には行かないのでした。

毎年、当たり前のように繰り返したウルトラ・クイズですが、よくもまあ、1度も事故が無く、続いたものだと思います。
は、旅が無事に進むように、時々神社に参拝をし、安全祈願のお札をもらったりしていました。
これは江戸時代から続く日本の良き伝統で、その御利益だったかもしれませんね。
お札は毎年スタッフルームの中央に飾られていました。

クイズ問題も作り難い時代になりました

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、毎年沢山のクイズ問題を作りました。
あの時代にはクイズ問題を作る素材が豊富でしたが、今ならどうなのかなあ、と考えて見ました。
あの時代の我々の考え方を今に置き換えると、問題作りには相当苦労しそうです。

例えばボクシングの世界チャンピオンに関する問題を作ろうとします。
あの時代には、世界チャンピオンの数も少なかったので、最初に世界チャンピオンになった日本人は誰?
という問題は使われています。
答・白井義男さん。フライ級で52年に獲得しています。

白井義男

・第2号の世界チャンピオンは? (第8回のキーウエストで出されました)
答・ファイティング原田さん。
タイのポーン・キング・ピッチを破って62年にチャンピオンになりました。
第1号から10年目にして獲得したチャンピオン・ベルトでした。
この辺まではまだまだ、世界チャンピオン問題も通用しました。
私の記憶ではその後「岡山のおばあちゃん!」という流行語を生んだ、4号目の世界チャンピオンになった藤猛さんを答えにした問題があったように思います。

しかし、今では世界チャンピオンが74人(13年4月の時点で)もいるし、その中で問題を作るとなると、細部の情報を問題化するわけですから、重箱の角を穿り返す様な問題になりかねません。
これでは、お茶の間のみんなで考える楽しい問題は出来難いと言わざるを得ません。
何しろ世の中は情報過多の時代ですから、面白そうな情報はアッという間に、日本中に広がってしまいます。

た、クイズの素材としては、沢山問題が出来そうな「ノーベル賞」も同じような状況です。
あの時代には湯川秀樹さんが49年に物理学賞を取り、暗い戦後の日本人に勇気を与えました。
その後、65年に朝永振一郎さんが、69年に川端康成さんが文学賞。
73年には江崎玲於奈さん、74年には佐藤栄作元総理が平和賞受賞とノーベル賞ラッシュとなり、今では全部で20人近い人達が受賞しています。
こうなるとノーベル賞も、どこの大学が多い、とか民間人で受賞した研究者は誰?といったクイズ問題が出て来るでしょう。
こうした問題は、クイズ研究会の想定問題にありそうなので、ウルトラクイズのクイズ問題選考会議で「没!」という言葉ではじかれてしまいます。

ノーベル賞関係で、強いて問題を作るならば、山中伸弥教授のように、研究成果が最近の医学会に大きな影響を与えている場合は、それなりの問題になるでしょうね
IPS細胞などは、今的に言えば恰好の素材と言えるかもしれません。
でも、答が山中教授ではちょっと易し過ぎるかも知れませんね。
いずれにしても、インターネットで情報が氾濫している現代では、その隙を狙って面白い問題を作るのは、至難の業かもしれません。

情報化社会

そう考えるとクイズ問題って、作るのに結構苦労するのですよ。
これを言葉にすると帯に短し襷に長し、の心境です。

アメリカの食文化について

メリカ横断ウルトラ・クイズのロケとロケハンで、毎年アメリカの中をアチコチ旅をして歩きました。
旅をしていて、1番気になるのは食事です。
日本の国内なら、どのような街に行っても、大抵の食べ物が有りますが、外国ではそうも行きません。
たまにはラーメンが食べたい、天丼も良いなあ、と思ってもそのような訳には行かないのは当然です。
我々は、知らない街に着くと、先ず最初にレストランをチェックしていたように思います。
多分、外国を旅する人は、みな同じような行動パターンじゃないのでしょうか。
腹が減っていては、頭も回転しませんから、まず腹ごしらえをします。

の様な環境の中で、アメリカ人の好きな食べ物を調べた事が有りました。
一般にアメリカ料理と呼ばれるものは有りませんが、アメリカ人の好きな外国料理は、第1位イタリアンでした。
そういえば、どのような田舎の街に行っても、パスタピザを出すお店はあったようです。
続いて第2位ステーキ第3位ハンバーガーの順でした。
但し、これは当時の人気ランキングです。
ハンバーガーは有名なチェーン店が街道筋に沢山ありましたから、我々はよく食べ、本場の味に慣らされてしまいました。
ステーキは日本で食べる物の2倍~3倍の大きさで、肉は硬く、噛んでいる内にあごが疲れてしまう感じです。
その点、日本と同じ味のステーキが食べたければ、R・A氏が経営するチェーン店で大成功したBというお店がありました。

benihana

このお店は、どこの大都市にも有りましたので、良く通いました。
値段は日本の3分の1位だったので、お手頃でした。

々は日本食を求めて、和食屋さんを探しました。
大都市ならどこにでも有りますが、ちょっと小さな街では、和食屋さんはめったにお目にかかれません。
それよりも中華飯店は、各地に沢山あったように記憶しています。
最近では、日本の寿司店がアメリカで人気を集めている、という話も聞きます。

挑戦者の皆さんも、アメリカの食事に飽きて、思考力が鈍った、なんて事はなかったのでしょうか。
我々スタッフは自分たちで材料を買い込んで、自炊をしたり、街へ出てレストランを探すことも出来ましたが、挑戦者にはそのような自由はありません。
挑戦者担当スタッフが、案内するレストランで毎回食べていた事を考えると、多分食事には飽き飽きしていたように感じられます。

頃のテレビは、グルメ情報が氾濫し、良く外国まで取材に出かける番組を見ますが、さすがにグルメ情報を求めて、アメリカへ向かう番組は無いようですね。
もし、そんな番組があるとすれば、私はサンフランシスコのフィッシャーマンズワーフを推薦したいです。

フィッシャーマンズワーフ

ここには、シーフード・レストランや屋台が沢山並んでいます。

フィッシャーマンズワーフ2

クラムチャウダーが有名ですが、私のお勧めは屋台で食べた、エビや蟹 です

クラムチャウダー

特にエビの唐揚げは、お値段も味も最高に満足出来るものでした。

面白い問題の発想点について

メリカ横断ウルトラ・クイズの問題に関しての思い出を書くと、コメントが沢山寄せられます。
これは、皆さんがこの番組のクイズ問題に関心が高かった証と私なりの理解で、とてもうれしく感じます。
先日「面白いクイズの作り方は?」を書いたところ、色んな質問が寄せられました。
中でも、是非この場を借りてお答えしたい質問が有りました。
それは、先にクイズの答え有りきで問題を作るのか、面白い発想から答えを見つけ出し、問題として作り上げるのか?どっちが多いという質問でした。

この二者を比べた場合、問題として面白いのは、多分後者でしょうね。
例えば、歴史の問題で、この様なのがありました。
元号に関する問題です。
これはクイズ問題の素材としては、数多くの問題が作られている分野でしょうが、元号を全て並べて、一欄表で眺めて見れば、何かしらクイズ問題として思いつく材料が転がっているはずです。
例えば、最初の元号は何?
1番短かった元号は?
逆に1番長く続いた元号は?
このように一欄表からクイズ問題は沢山発想できるでしょう。
しかし、今私が例に挙げた問題ですと、単なる歴史の知識で「教科書問題」という否定的な言葉で、会議を通過するのは難しかったかもしれません。
この問題の作者は、その表の中からという文字に着目したのです。
よくよく眺めると、何と5個もこの亀という文字が元号に使われていたのです。
715年の霊亀、724年の神亀、770年の宝亀、1,501年の文亀、それに1,570年の元亀と5回です。

これを発見したところで、もう立派なクイズ問題が出来上がったも同然です。

問・日本の元号に最も多く登場する、おめでたい生き物は何? という問題になりました。

亀

答・亀

解者は、恐らく確実な正解を知っていたわけではないでしょう。
この様な古い時代の知識を、きちんと頭の中に整理している人間など、そんなに沢山いるはずは有りません。
そこで我々は、問題の中に大きなヒントを含ませて置きました。 
おめでたい生き物これがキーワードとなって挑戦者は早押しボタンを押したのでしょう。
日本でおめでたい生き物、と言えばしか有りません。
諺にも「鶴は千年、亀は万年」と言われますよね。
こうなったら、2者択一で亀に賭けて、ボタンを押したのだと思いますよ。

鶴と亀

クイズに勝ち抜く人は、時にはこのようにヤマ勘で早くボタンを押す決断力がある人なのですね。
亀は鈍間ですが、堅実な生き物として、ウサギとカメ のお話でも知られ、元号には相応しいと先読みしたのかもしれませんね。