アメリカ横断ウルトラ・クイズはテレビ番組の分類では、視聴者参加のクイズ番組とされています。
しかし、我々は最初からドキュメンタリー番組を目指していました。
あの時代に、単なるクイズ番組や旅番組という括りでは、あれほど長い期間番組を続ける事は出来なかったでしょう。
また、費用の掛け方にしても常識を超えたものでしたから、それなりの内容を要求されました。
先ず、出演者が司会者以外全員が素人で、2時間もの番組を作るのは結構大変です。
しかも、連続で4週も放送するわけですから、内容が面白くなくては視聴者が納得してくれません。
それを乗り越えるためには、挑戦者にタレント並みの魅力を持たせなければ飽きてしまうでしょうね。
そこで我々は挑戦者を徹底的に磨き上げようと努力をしました。
参加した挑戦者の皆さんはご存じ無いでしょうが、我々スタッフはグアムに上陸した挑戦者全員の身上書を持っていました。
勿論、写真付きで本人が申告した内容が記入されています。
氏名、出生地、家族、学歴、職業、趣味、長所、短所などが書き込まれています。
しかし、これは最初の原本であって、旅の間に我々が発見した特徴が、次々と書き加えられていきます。
機内ペーパー・クイズの順位、知識の度合い、性格の特徴、本人が発した記憶に残る言葉、と言ったように情報は増えていきます。
この様な情報を重ねる事によって、挑戦者の性格付けをしなければなりません。
アメリカ本土に上陸すると、我々は彼らにニックネームを付けました。
これは視聴者が覚え易くするのが目的でした。
この様な資料は全スタッフが持っていましたので、カメラマン、音声、美術スタッフにいたるまでが、挑戦者の特徴を知っていたのです。
前にもこのブログで書きましたが、1か月も旅をしていながら挑戦者とスタッフが言葉を交わす様な場面はあまりありません。
挑戦者の皆さんは、スタッフの名前など知る由もありませんが、スタッフは全員が挑戦者の名前を始め、個人情報を詳しく知っていたのです。
ドキュメンタリー番組を作るスタッフとしては当然の配慮です。
だからこそ、挑戦者の細かい動きを見事に撮る事が出来たし、ナレーションでそれを生かす事が出来ました。
例えば、敗者と勝者の別れのシーンでは、必ずといって良いほど涙の場面が描けました。
これもその様な日頃の蓄積があればこそ、涙を流すのは誰と予想が出来ますし、その瞬間をカメラマンが待ち構えていて、撮る事が出来るのです。
この様な阿吽の呼吸も、長年一緒に仕事をしてきた仲間だからこそ実現出来たのでしょう。
ウルトラ・クイズがドキュメンタリー番組だったというのには、この様な裏話が在ったからなのです。