ご当地の基礎知識は調べて欲しい

メリカ横断ウルトラ・クイズに出場した方達は、皆さんクイズ大好きな方々でした。
その様な中で、勝ち残って行くのは至難の業と言えるでしょう。
普段から想定問題を作って勉強していた人も多いと聞いています。
ウルトラ・クイズでは、お決まりのパターンとして、ご当地問題というクイズが有りました。
毎回我々が訪れるコースは、極秘で準備していましたので、出場者の皆さんには事前に知らされていません。
でも、必ずアメリカ本土を回る訳ですから、アメリカ各地の情報が書かれている資料を持参する人は沢山いました。

少なくとも明日は何処へ行く、という事は知らされていますので、行く先の情報は調べる事が出来たはずです。
特に、グアム、ハワイといったお決まりのコースについては、事前に調べる事は出来た筈です。
それでも、その様な準備を全くしていない人もいるので、我々も驚いてしまう事があります。
具体的には第16回のハワイで、その様な驚きの場面に遭遇しました。

ワイの情報といえば、それほど多くは有りません。
例えばハワイの代表曲「アロハ・オエ」に関する知識、カメハメハ大王に関する知識、観光客の数、国別の情報、ワイキキ・ビーチの成り立ち、真珠湾のお話、ハワイ諸島の簡単な情報、このくらいの知識が頭に入っていればご当地問題は簡単に正解できるでしょうね。
第16回では真夜中の奇襲クイズというのをやりました。

カメハメハ大王

クイズの本戦が終わった夜、真夜中の午前2時に挑戦者を叩き起こし、バスにいきなり押し込んだのです。
寝惚けマナコの挑戦者達は何が何だか状況が把握できません。
そんな彼らを乗せたバスは、オアフ島の名所観光と称して、島内の名所をアチコチと走り回ったのです。
ただ走っていたのでは能が無い、とばかり○×クイズが始まったのです。

問題は以下の通り、ハワイのご当地問題で、1問正解すれば勝ち抜けというルールです。
但し、当人には勝った事を知らせずに、クイズに参加させ、問題は負けた人だけに出題しました。

・ハワイを訪れる観光客は日本人が最も多い。
・ハワイを代表する曲、「アロハ・オエ」の作者はカメハメハ大王である。
・ワイキキビーチの砂は、何と本土のロング・ビーチから運ばれたものである。
・アメリカ人の平均寿命。本土に比べるとハワイの方が長生きする。

waikiki

正解
× (第1位はアメリカ本土からやってくる観光客の450万人。第2位はカナダの325万人。日本は第3位で138万人でした。当時の数字)
× (ハワイ王朝の最初にして最後の女王、リリウオカラニが作詞、作曲をした曲として有名である)
× (人工の砂浜だが、正解はオアフ島から運ばれた砂だった)
 (全米では男性71・2歳、女性78・2歳。ハワイは男性75・4、女性80・9歳とハワイの方が長生きだった)

何と、この○×クイズで、4問連続不正解だった1人が、ここでの敗者となりました。
この様な○×で1問か2問は不正解だったとしても、4問連続で間違えるとは、やりたくても中々出来ない偉業と言えるでしょう。

四文字熟語は問題作りの宝庫

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、毎年1万問以上のクイズ問題を用意しました。
これは、クイズ問題作家と呼ばれる人達を養成しながら、彼らに作ってもらった問題が大半を占めます。
折角作っても、クイズ問題会議という厄介な関門を通過しないと、採用には至りません。
この会議のメンバーは、プロデューサー、ディレクター、司会者、構成者などで、自分たちも問題を作るように私は何度も申し入れ、それを実行しながら毎週会議を行いました。

このブログでも、何度も書きましたが、単なる知識問題は「教科書問題」という冷やかな拒否の一言で、没にされてしまいます。
そこで、知識にプラスアルファーを加えた問題を作るように、作家の皆さんに注文を付けていました。

その様な中で、私は「四文字熟語は問題の宝庫だ」という意味の事を、彼らに話していました。
四文字熟語の意味を答えにしたのでは、「教科書問題」と呼ばれてしまいます。

でも、辞書で熟語の解説を良く調べると、熟語にまつわる薀蓄が記されている場合があります。
それこそ、クイズ問題にとっては絶好のネタになります。

例えば、今「則天去私」(そくてんきょし)という四文字熟語を調べてみました。
四文字熟語辞典の説明は以下の通りです。

則天去私とは。
意味や解説。小さな私にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きて行くこと。▽「則天」は天地自然の法則や普遍的な妥当性に従うこと。「去私」は私心を 捨て去ること。夏目漱石が晩年に理想とした境地を表した言葉で.ある。
更に、この熟語は漱石自身が作った造語である、という説明もありました。
この様な、おいしい情報は即クイズになります。

夏目漱石

そこで作られたのが第16回のニューヨークの決勝戦で出題された問題です。

「晩年の夏目漱石が好んだ言葉、『自我を捨てて、自然にゆだねて生きる』という意味の四文字熟語は何?

「則天去私」  ピンポーン! となる訳です。
 
この時は東大クイズ研の田中健一さんが、これを答えて、チャンピオンになりました。
毎年、決勝戦でチャンピオンが決まった最後の問題は思い出深いのですが、この答も私にとっては深く記憶に残る問題でした。
それにしても、この様な言葉を知っているというのは、チャンピオンは只者ではありませんね。

優勝賞品の裏話

メリカ横断ウルトラ・クイズの思い出を書いていますが、視聴者の皆さんにとって、記憶に残る思い出の中でウエイトを占める物に優勝賞品があったと思います。
優勝賞品には、幾つかの条件がありました。
順に並べてみると、以下のようになります。

1、言葉で聞くと、一見価値がありそうで、しかも、将来的に夢が持てるもの。
2、宝くじに当たったような意外性があるもの。
3、オチがあって最後は笑えるもの。

この様な条件の中で、我々は毎年商品のアイディアを出しました。
その頃の、テレビ業界では賞品の最高額が100万円という、取り決めがあったので、それを超えない金額で考えましたが、実際には多分それ以上の価値があったものもあると思いますよ。

みに実行された優勝賞品を挙げると…。
#1、「土地、1エーカー」〈砂漠の真ん中の土地だった〉
#2、「超高級ホテル、家族宿泊券」〈1泊100万円の部屋で1泊しか出来ない〉
#3、「競走馬」〈田舎の草レースの老馬だった〉
#4、「軽飛行機」〈自分で組み立てる〉
#5、「石油の採掘権」〈出るか出ないか不明〉
#6、「世界1周の旅」〈1週間で回る超ハードな旅〉
#7、「ログ・ハウス」〈材料のみで自分で組み立てる〉
#8、「クラシック・カー」〈自分で組み立てる〉
#9、「潜水艦」〈1人乗りでオープン式〉
#10、「熱気球」〈乗って帰国する〉
#11、「島の領土」〈満潮になると沈んで消える)
#12、「バイオ・マリンスポーツ」〈馬が引く水上スキー〉
#13、「冷凍人間保存の権利」(死んだ時に役立つ〉
#14、「カジノのオーナー」(田舎の牛糞ビンゴ〉
#15、「温泉」(川の中の湧き湯の権利〉
#16、「ブドウ畑のオーナー」(1列のみ)

考えると、番組よりも強烈な印象として、思い出に残っている物も結構あるので、笑えます。
でも、当時この賞品のアイディアには随分苦労しました。
例えば、満潮になると沈んで消えてしまう島、というアイディアは実際よりも5、6年前からアイディアとしては出されていました。
しかし、その様な島で、権利を売買出来る島を探すとなると、世界中に適当な物件は有りません。
毎年このアイディアは俎上に乗り、#11回の時にようやく陽の目をみたのです。

優勝賞品

この優勝賞品は、番組全体のオチの役目がありましたから、みんなが笑えなければなりません。
優勝者も「まっ、仕方ないか!」と頭を掻いて苦笑いで終わるのが理想でした。

クイズ地を求めロケハンのネタ探し

メリカ横断ウルトラ・クイズで、クイズの場所を探し、準備をするのがロケハンです。
挑戦者を同行したクイズの本番は、スタッフは朝早くから深夜まで、体力的にはかなりの重労働でした。
でも、それに比べてロケハンはのんびりとした場所探しなので、本番に比べればラクだろう、というのがスタッフ達の見方でした。
しかし、実際はその様に、ラクな仕事など有りません。
それどころか、探した場所でどの様な形式のクイズを実行するか、それを限られた時間内に決めなければならず、精神的に追い詰められる事も多いのです。

初の頃に訪ねたアルバカーキも、そんな苦労のあった場所でした。
アルバカーキはニューメキシコ州の中央部に位置する、同州最大の商工業都市という情報で、その場所を訪ねたのでした。
資料によると、スペイン文化を色濃く残した西部では歴史の古い都市との事です。
実際に街を訪ねると、確かにスペイン風の建物が目に付き、雰囲気もまあ、なかなかの物です。
特にオールドタウンは観光客に人気があるとの事で、行ってみるとそれなりの珍しさは有ります。
でも、ウルトラクイズは単なる旅番組では有りません。
街を紹介するだけでは、視聴者も納得してくれません。

Albuquerque

そこで、更に珍しい場所は無いものかと、歩き回ったところ、インディアン文化センターという場所に行きつきました。

アメリカ・インディアンの伝統的な行事や工芸品が展示されていて、彼らの生活が覗ける場所でした。
つまり、この地にはインディアンの居留地があって、彼らの協力も得られそうな雰囲気です。
我々は西部劇の中でインディアンに接する事はあっても、実在のインディアンに会った事は有りませんでした。

ルトラクイズでは、インディアンの皆さんに協力して頂いた事は数々ありましたが、多分、記憶によれば第4回のアルバカーキーが、その最初の体験だったような気がします。
インディアンの皆さんに会いに行くと、彼らはアメリカの普通の若者と同じようにTシャツにGパン姿で、イメージのように上半身裸などという人は1人も居ません。
また、乗り物は当然裸馬という予想をしていましたが、皆さん普通の車を運転しています。
中には長髪を後ろで束ねている人もいて、わずかにインディアンのイメージを残していました。

彼らに、
「今でも馬に乗れますか?」
と尋ねたところ
「自転車やバイクに乗るより得意だよ」
との事でした。
そこで、ここでのクイズ形式は、インディアンのオジさん達に協力を求め、「インディアン嘘つかない!早がけクイズ」というのをやる事になりました。

ルールは挑戦者達に、それぞれ意気の合いそうなインディアンのオジさんを選んでもらい、ペアを組みます。
そして、オジさんと一緒に馬に乗り、問題を聞いて答えが解った時点で、オジさんの肩を叩いて合図を送ります。
本物のインディアンとペアを組んで、西部劇の舞台を走り回る、西部劇ファンなら泣いて喜びそうな体験が出来る訳です。

前方、50メートルの場所に早押し機が設置されているので、そこまで馬を走らせ、ボタンを押して答えるというものでした。
ここでは6人の挑戦者が、横1列に6頭の馬に跨り、パカパカと馬を走らせ、クイズが行われました。
当然、リハーサルも行われ、無事に収録が終わりましたが、傍目には遊園地で馬に乗って遊んでいるようで、長閑な本番でした。

闇夜に生きる動物のお話

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、北極圏から南極圏まで、世界各地を回りました。
30年近い昔の事で、その頃はテレビ番組でも世界を旅するような番組は少なかったので、世界を紹介する役目も果たしていたように思います。
その中でも第12回は北極圏から南極圏まで、南北アメリカ大陸を縦断しましたので、私たちも数々の新しい発見をしました。
今日はその様な中で、北極圏のバローで耳にした、珍しい情報をご紹介します。

Barrow,_Alaska

バローは北極圏ですから夏の間は白夜で、1日中、暗くなる事が有りません。
以前にも書きましたが、1日中昼間だと時間の感覚が鈍くなり、ロケハンの時など気が付いたら夜の11時だったという事もありました。
働き蜂のような日本人には、過労働になってしまいそうな環境ですね。
現地の人は6時か7時に起床し、夜は10時、11時頃に就寝するように気を配っているという事を聞きました。

ロケハンで私たちは3日間バローに居りましたが、1番困ったのは食事です。
この地では、当地で獲れるアザラシやセイウチ、カリブー、などの肉を良く食べるのですが、私にはこれらの肉が口に合いませんでした。
特にこれらの肉を使ったスープは、油がぎらぎら浮いていて、味も匂いも苦手な部類でした。
だから他の物を求めて、1軒だけあったイタリアンに毎食通い、パスタやピザを食べた思い出があります。
挑戦者の皆さんはどのような物を食べたのか、聞きませんでしたが、中には私のように閉口した人もいたのではないでしょうか。

の白夜の反対に、冬は「闇黒夜」といって、1日中太陽が昇ってきません。
それでも、現地の人の生活は夏と同じように、起床と就寝の時間はあまり変えずに、生活をするのだそうです。
彼らはいろんな仕事をしますが、昔から狩りで動物を捕えるのを本職にしている人も沢山いました。
私たちが食べていた肉もみんな地元の猟師さんが射止めた肉に違いありません。
そこで、彼らに北極圏に棲む動物について聞きました。
冬は62日間も闇黒夜が続くので、さぞや動物の種類も少ないと思ったのですが、意外と種類が多いのに驚きました。

先ず筆頭はアザラシでしょうね。
イヌイットの人々にとっては格好の獲物で、肉は食用にされます。
革は1頭分が当時の金額で150$~200$で売買されていたそうです。

次にセイウチです。
アザラシと同じように肉は食用にされます。
その他、アザラシよりも利用価値が高いのは、皮と牙です。
先ず、革はボートを作る素材になるそうです。
セイウチは普段、水の中で生活しているので水に強く、ボートの素材にぴったりだったのでしょう。
また、は価値が1番高いのですが、工芸品に加工しないと持ち出しが禁止されていました。
工芸品になった場合は1本3,500$~4,000$と高値が付きハンター達の目標になっていたようです。

た、北極圏で名高い動物は白熊ですが、ハンターはこれをあまり熱心に追いません。
何故なら、白熊の肉は食用にしますが、毛皮は政府が売買を禁止していたのです。
だから、折角射止めても価値が低いという事で人気が無かったようです。

その他、カリブー、白キツネ、オオカミなどが居て、禁漁期は無いそうで、闇黒夜でも彼らはせっせと狩には出かけるのだそうです。
イヌイットは顔も日本人に似ていますが、働き者という点でもそっくりですね。
もっとも、毎年春頃は動物達が妊娠の時期なので、この頃は猟を控えるように、政府が指導しているという話も聞きました。
1日中真っ暗な世界で、猟師達が食料となる獲物を求めて探し回る姿。
何百年も前から続くイヌイット達の生活、この様な情景を想像すると、人が生きて行くというのは、昔から大変だったのが解ります。
その点、我々の住む日本は四季があって、本当に恵まれていると思います。