アメリカの旅は時代で変わる

メリカ横断ウルトラクイズで、クイズ会場を探しアメリカ各地を旅をしました。
この番組が初めて放送された30年以上前には、日本人も海外旅行に行くようになっていましたが、当時の人気はハワイグアム東南アジアが主流で、アメリカ本土へ渡るなどは夢の世界でした。
番組が10年を過ぎた辺りから、日本人も本土へ旅行をする時代になっていったのです。

初の頃は、アメリカの旅情報も少なく、我々は旅行会社を頼らずに独自のルートでクイズ地を探し、ロケハンをし、クイズ地を選定していました。
何時の間にかそれが伝統となって、クイズ地は全て自分たちの情報で決めるようになったのです。
今では、我々のクイズ地が、アメリカ・ツアーのコースになったりして驚く事もあります。
第16回にニューメキシコ州の州都、サンタフェに行き、クイズを行いました。

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この地はニューメキシコ州の高地にあって、アメリカ中の芸術家が注目する芸術の街として知られていました。
我々は車で1時間の距離にあるアルバカーキーへ何度も行っていますので、ついでに立ち寄って、何時かは「この街でクイズを行いたい」と、度々候補に上がっていたのです。
その頃は全く無名の地でした。
ところが我々がこの地でクイズを行ったのは1992年の事ですが、その前年に、この街の名が日本中で注目される出来事があったのです。
それは当時18歳の人気アイドル宮沢りえさんヌード写真集がこの街で撮影され、150万部という大ヒットを飛ばしたのです。
以来、それまでは全く無名に近かったサンタフェが、日本人の憧れる観光地に変身してしまったのです。

今では「アメリカの宝石」とか「アメリカ一の古都」など、サンタフェの街を形容する言葉が氾濫し、アメリカ観光の売りものの一つになっています。
そこで、我々もこの注目の街を紹介する意味で、16回はこの地を訪れ、クイズを行いました。
とは言え、街の紹介だけでは面白くありません。
歴史を振り返れば、この地はメキシコ文化とインディアン文化の交差点と呼ばれ、郊外には先住民族プエブロ・インディアンの聖地と呼ばれるブラック・メサと呼ばれる岩山があったのです。

ブラックメサ

その前方には壮大な草原があり、しかも海抜2,000mで空気が薄く、少し走るだけで心臓がドッキン、ドッキン。息はハアハア苦しくなります。
ウルトラ名物バラ撒きクイズには最適の場所、という事でこの地では恒例のバラ撒きクイズが行われました。
その頃に調べた資料では、1607年に創設されたニューメキシコ州の州都で、これはアメリカで一番古い州都なのだそうです。
名前の由来はスペイン語で「聖なる信仰」という意味だそうです。
街の建物は天日で乾燥させたレンガで作られ、街並みが低いのが特徴です。
17世紀に建てられた住宅が、今ではギャラリーやお土産屋さんに変身、観光客を迎えてくれます。

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芸術家が全米から集まって住みついているだけに、彫刻や絵画陶磁器などが数多く陳列されていました。
また、インディアン・クラフトと呼ばれる手創り製品も多く、「古都」の名が示すように日本の京都、金沢、鎌倉のお土産屋さんに通じる雰囲気がありました。
今では、アメリカ旅行の思い出を綴るブログで沢山紹介されているので、これ以上紹介する必要はなさそうです。
芸術家の集まる街というだけに、音楽祭や芸術祭が毎年開かれ、ニュースとして時々この街の名を耳にします。
サンタフェと言えば「白」、「薄いベージュ」、「薄いピンク」などの建物が頭に浮かんできますが、海から遠く離れた内陸なのに、魚料理を出す和食屋さんがありました。
メニューに「鰤(ぶり)のかま」とあったので、喜んで注文すると、何と甘い餡かけソースがかけられてあって、仰天した思い出があります。
外国で和食屋さんを発見すると、思わず嬉しくなりますが、所変われば品変わる、この格言を思い出すようにしたいものです。

スーパー・スター ポール・マッカートニー

メリカ横断ウルトラクイズでは、毎年沢山のクイズ問題が出題されました。
今月はポール・マッカートニーの日本公演が、彼の体調不良によって全て延期になった事が大きなニュースになりましたので、我々のウルトラクイズでも彼に関するクイズ問題が無かったか、ちょっと調べたところ、ありました。
何しろ世界のトップスター、ビートルズの一員ですから、当然芸能問題で何問かは出ているはずだと思ったのです。
この問題は第11回のニューヨーク決戦で出題されていました。

・ジョン・レノンの息子ジュリアン・レノンの事を唄っているビートルズのヒットナンバーは何?

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・ヘイ・ジュード

解説
「ヘイ・ジュード」はビートルズの数多いヒットナンバーの中でも群を抜いた知名度の高い曲と言えるでしょう。
作詞・作曲ともにポール・マッカートニーで、発売が1,968年の8月、18枚目のオリジナル曲として世の中に知れ渡りました。
発売から44年後の2,012年に開かれたロンドン・オリンピックの開会式では、式典を締めくくる形で、ポール自身が歌唱し、後半は観客と共に大合唱となり、この様子は世界中に中継されたので記憶に残っている方も多いと思います。

この曲の「ジュード」とは一体誰の事? というのが発売当初から話題になりました。
小説や歌のモデル探しは、宣伝方法のパターンとして昔からある手法の一つです。ヘイ・ジュードと語りかけている訳ですから、誰に語っているの? と思うのはファンの自然の心理でしょうね。
ジュードは男性名ですが、女性名ジューディスの愛称としても使われるので、私の事を唄ったのだと自薦、他薦名乗り出る人間が居たりして、話題を提供した事もありました。
真相はその頃、ジョン・レノンと当時の妻シンシアの破局が決定的になっていて、ジョンの長男ジュリアン(当時5歳)を励ますために、仲間のポールが作った曲である、というのが定説になっていました。
ポールの発言でも、この曲を歌う時にはジョンを思い出すと語っていますので、仲間やその息子を大切に思う彼の人柄がうかがえますね。
今回の日本公演は延期になりましたが、10万円の指定席が完売だったという話も伝わり、衰えを知らないスーパー・スターに脱帽です。

Paul_McCartney

問題の裏にある知識の宝庫

メリカ横断ウルトラクイズで出題された問題を振り返ってみると、忘れていた知識を思い出す事があります。
私はすでに高齢者と呼ばれる年代に入っていますので、中学、高校あたりで習った勉強はすっかり忘れていますが、たまたま昔の問題を眺めていて、懐かしい名前を思い出しました。
それは第16回のアトランタで出題された問題の中にありました。

・「万物の根源は水である」と説いた、古代ギリシャの哲学者は誰?

タレス

・タレス(ターレス)

解説
古い時代の哲学者と言えばソクラテスを思い出しますが、タレスはそれよりも古い紀元前6世紀の人で、人類史上記録に残る最古の哲学者でした。
彼は哲学者の他、科学者、数学者、天文学者など数多い顔を持っていましたが、我々は中学校の数学の教科書で「ターレスの定理」として、彼の名前を記憶させられていました。

タレスはその他、水に関する理論や、世界を変える名言でも名前が出て来る、古代ギリシャの七賢人と呼ばれています。
彼は一体どのような名言を吐いたのか?

正解になった「万物の根源は水である」の他、
『外見を飾りたててはならない。美しさは生き方の中に現れる』
という言葉を残しています。

現代人の胸にもジーンと響いてくるような、鋭い名言ですね。
最近では、世界的に水不足が社会問題になるなど「水」が話題になっていますが、2,600年以上前に「万物の根源は水である」と言い切った賢人が実在したこと自体が驚きです。
ウルトラって、遊んでいるようで勉強になる 良い番組でしたね。
これ、手前味噌!

知ってビックリ、語源の問題

メリカ横断ウルトラクイズでは、沢山のクイズ問題が出題されました。
クイズ問題は、知識の競い合いですから、色々な分野から出題されます。
中には知らなくても良いような雑学的な問題も含まれていましたが、でも、基本的には知って得するような知識が多く含まれていました。
番組が放送された翌日、友人や家族との会話で話題のネタになるような面白い問題が理想的な問題と言えます。
その様な話のネタの範疇で、語源問題というのがありました。

段、何気なく使っている言葉でも、語源を知らされると「へー!」と驚くような語源の問題が結構沢山ありました。
例えば、日本人ならよく食べる漬物の「タクワン」は、臨済宗の僧、沢庵禅師が考案したので、その名が付いた、という話はクイズファンなら皆さんお馴染みの語源でしょうね。
勿論、ウルトラクイズでも、この問題は出た記憶があります。
そうした語源の問題で、第12回のラスベガスで次のような問題がありました。

・古代中国の料理の名人で、後に料理道具の名前になったものは何?

荘子

解説
この問題は、クイズ問題作者が料理道具の歴史を調べていた時に、偶然発見したもので採用されました。
クイズ問題会議で出題されると、スタッフがそれぞれ勝手な想像で答えを出します。
「鍋」「まな板」「薬缶」「お玉」料理道具で思いつく品を当てずっぽうに答えます。
いずれの答えもブーッ!です。
という事は、誰かがヤマ勘で答えて、正解になる可能性があります。
また、誤答になっても、正解を知らされれば「ああ、そうなのか!」と一つ知識が増える事になります。
どちらに転んでも面白い、という事で問題に採用されました。

正解・包丁

包丁さんは中国古代の書物「荘子」に出て来る料理の名人のお名前なんですね。
日本のテレビ局なら、この包丁さんの子孫さんを探し出し、番組が一本出来そうな話題ですね。
何と、どこの家庭にも何本かあって、毎日使っている「包丁」が料理名人の名前とは知ってビックリの語源でした。
そう言えば、鍋も、薬缶も、お玉も、みんな人の名前のようで、語源を調べると面白い結果が出て来るかも知れません。
それこそ、掘り出し物 と言えるかも?

問題用紙の裏側

メリカ横断ウルトラクイズの第12回がCS放送の「ファミリー劇場」で6月に再放送される事になりました。
そこで、これに因んで第12回に出題された問題を調べて見ると、結構面白い裏話が浮かんできましたので、本日はそのお話をご紹介したいと思います。

の回は北極圏から南極圏まで、アメリカ大陸を縦断したのが特徴でした。
北極圏はアラスカ州のバローという最北端の街に行きました。
この街は北極海に面した場所なので、クイズ問題もこれに関連した問題が出されました。
敗者復活戦の問題でした。

・北極点を通過し、太平洋から大西洋に抜ける事に初めて成功したアメリカの潜水艦は?

ノーチラス


・ノーチラス号

解説
ノーチラス号は世界初の原子力潜水艦として知られています。
番組では潜水艦の名前を当てるだけで終わっていますが、我々クイズ問題を作ったスタッフはその裏付け調査としてノーチラス号に関する詳しい調査をしていました。
何故か それは現場で挑戦者が正解に異議を申し立てた場合、どのような疑問にも答えられるように準備をしているのです。

例えば次のような解説文が、問題用紙の裏側に記入されていました。
ノーチラス号は世界初の原子力潜水艦として1954年アイゼンハワー大統領夫人を迎えて進水式が行われました。
1958年8月3日、潜航状態で北極点を最初に通過する事に成功したのである。これによって、太平洋から大西洋に抜ける事に、初めて成功し最初の偉業を達成したのである。
ノーチラス号は原子力潜水艦として有名ですが、フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」「神秘の島」に登場する架空の潜水艦の名前としても有名になっています。
この様な資料を持っていないと、挑戦者が
「ノーチラス号って、架空の潜水艦でしょ?」
とクレームをつけてきた場合、対応できません。
クイズ問題の責任者として、私は全ての問題の疑問に答えられる準備をしていたのです。

なお、同艦は1980年に退役しました。
と言って解体される事も無くコネチカット州のグロトンで記念艦として保存、公開されています。世界初の原子力潜水艦ですから、解体なんてする訳ないですよね。
問題の裏側には、全てこの様な調査がなされ、詳しく説明文が付いていたのです。
今だから話せる、これが本当の 裏話 でした。