橋は問題になり易い?

アメリカ横断ウルトラクイズの問題を作っていると、良く問題として登場する建造物があります。

ビルで言えば、世界で一番高いビルは? 橋でも、塔でも同じような設問はクイズ問題の定石パターンと言えるでしょう。

但しウルトラクイズの場合は、単に大きさや歴史の長さをストレートに問題にしても採用される事はありません。

そこに何らかの工夫を凝らして、興味を持たせるように文章化しなければクイズ作家とは言えないというハードルを設けました。

その様な条件の中で、あの当時は「橋」はクイズを作り易い建造物と言えました。

例えば歴史的な出来事、物語、小説といった作品の中で、橋の場面が描かれている事柄が多いので、知識を競うクイズの問題には最適な建造物と言えます。

この様な話を若いクイズ問題作家の皆さんにお話すると、翌週には橋に関する問題が沢山提出されるというような事になります。

我々はその様な中から、面白いと思う問題を選別していました。
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第7回のジャスパーで出題されたのも橋の問題でした。

義経と弁慶と言ったら五条大橋。では、真知子と春樹はどこの橋?

答・数寄屋橋

解説  現代の人が聞いたら何の話か解らない方も多いかもしれません。第一に数寄屋橋そのものが姿を消していて、わずかに地名として残されている場所になっています。

でも、中年以上の皆さんなら、誰でも知っているほど知名度の高い名作「君の名は」の舞台がこの数寄屋橋でした。

元々はNHKのラジオ・ドラマでしたが、松竹で3部まで映画化され、佐田啓二と岸恵子が主演で大ヒットしました。

映画のお蔭で「恵子巻」というファッションまでが日本中の若い女性に流行するなど、ブームになった物語でした。

それほどの舞台だった数寄屋橋も今では影も形も無いのですから、時の流れは世の中を変えてしまいます。

五条大橋の様に、姿が残っている場合は弁慶と義経の伝説として、末永く日本人の記憶に残るのでしょうね。

近年の橋を見ると、明石海峡大橋、東京ゲートブリッジ、瀬戸大橋、レインボー・ブリッジなど、有名な橋が綺羅星のごとく並びますが、長さを競うだけではクイズ問題になりそうもありません。

橋げたの高さ、吊り橋としては? などの条件を付けて競い合う事も出来ますが、その様なクイズは面白いはずもないですよね。

という事はクイズ問題の宝庫だった「橋」も、今ではクイズになり難い立ち場になったような気がします。

 

 

車のエンブレム

アメリカ横断ウルトラクイズの問題には、街の中で良く見かける物の中から、盲点になっている事柄から出題される事があります。

例えば、現代の街では何処を歩いても、車が溢れるように走っていますが、この様な中にもクイズ問題になるような事柄が沢山転がっています。

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カーマニア、或は車好きな人なら常識になっている知識も、一般の人にとっては難しい問題も在り得ますね。

第15回のモハーベ砂漠のばら撒きクイズでは、次のような問題がありました。

・フェラーリとポルシェのエンブレム(紋章)に共通する動物は何?

答・馬

解説  これは車大好きな大人はもちろんですが、小学生でも車好きな子供なら常識になっている問題です。

でも、車に無関心な人に取っては全くチンプンカンプンな難問の部類に属するでしょう。

テレビの視聴者の中にも、この様な両者の立場の人がいる訳ですからみんながクイズに参加出来るわけです。

この馬のエンブレムに関しては、それぞれの車種に理由があるのは当然です。

先ずはフェラーリの紋章が跳ね馬なのは、その昔イタリアに伝説的な戦闘機のパイロットがいて、その機体に跳ね馬のエンブレムが描かれていたのから来たのだそうです。

イタリア人にとっては勇ましいイメージの紋章で、いかにもフェラーリらしい印象を与えます。

ポルシェの方は、本社のある地方が「馬の国」と呼ばれているところから、馬を中心に描かれたデザインになったようです。

車が誕生する以前は、馬が乗り物の中心だった事を考えれば、エンブレムに馬が描かれるのは実に自然な流れとも言えます。

街の中で見かける盲点から作られたクイズ問題の典型的な例としてご紹介しました。

定番クイズ動植物の分類

アメリカ横断ウルトラクイズの裏話を書いていますが、前回は「稲荷神社とキツネ」のお話だったので、本日は狸に関するお話です。

日本では昔からキツネとタヌキは、何故か対で語られる動物になっています。

共に人を騙す動物という印象で、その代表的なのはタヌキの「カチカチ山」のお話ではないでしょうか。

また、タヌキ親父という言葉もあって、代表選手は徳川家康を形容する時に使われています。
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キツネも他人を騙す印象が強く、特に雌のキツネは「女狐」という言葉で、男を惑わす代名詞にもなっています。

キツネもタヌキも人間に愛される印象が薄いのに対して、対極にあるのは「犬と猫」で、多くの家庭でペットとして家族に愛されています。

この様な人間に関わりの強い動物は、クイズ問題のネタになり易いので、良く問題に登場していました。

第2回の後楽園球場の第一次予選で○×問題に出されています。

・タヌキはイヌ科の動物である。

答・○

解説  重要な第一次予選で、何故このような単純な問題が採用されたのでしょう? そんな疑問を持たれる方も多いでしょうね。

人間に愛される犬が、嫌われる動物の代表的なタヌキと同じ種族のはずが無い、と否定的な人が半分。

否、これが同じ種族だから面白くて問題になったのだ、と肯定派が半分、我々はその様に計算しました。

当然のことながら○×問題は、答えが半分に分かれる問題が理想的です。まだ、番組も初期の頃で我々の勘も手探り状態でしたが、この問題は予想の通り半々に分かれました。

実はキツネもタヌキも揃ってイヌ科の動物だったのですね。

その他、各種のキツネ、タヌキ、コヨーテ、オオカミなどがみんなイヌ科に属す動物だったのです。

キツネやタヌキが何故人間を騙す動物となったのでしょうか?

多分、古代から人間の住む村の近くに棲んで、作物などを荒らす動物で、対策を練っても上手くかわすので、人間を騙す(化かす)動物となったような気がします。

ペット愛好者が多い現在、この種の知識は一般常識になっていますので、今ではクイズ問題には向かないかも知れません。

クイズは時代の鏡ですので、常に時代に気を配るべきでしょう。

その様な、斬新なクイズ番組がそろそろ誕生して欲しいものです。

 

 

常識の裏側の真実

アメリカ横断ウルトラクイズで、クイズを作る時の心構えを時々書いていますが、一般に常識と思われている事象の裏側を探ってみるのもクイズ作りの一つの方法です。

世間で常識と思われている事の中には、親や先輩などの年長者から聞き及んだ事が、自然に知識となって身に付く事が多いようです。

その教えてくれた人も、多分同じような経緯でその人の常識となっているのでしょうね。書物で読んだり、何かの資料で学んだ知識ではない事も多いのですね。

一般に常識と思われている事も、キチンと調べて見ると真実は全く違った所にあって、その誤りの方が世の中で常識化されていたりします。

この様な常識を疑って出来たクイズには結構楽しい問題が含まれていました。

第3回の後楽園球場の1次予選で出された○×問題です。

お稲荷さんには狐が祀られている。

答・×

解説  稲荷神社は「稲荷大明神」或は「お稲荷さん」と呼ばれ古来から日本人の信仰の対象となっていました。

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神道上、日本各地にある稲荷神社の総本山は京都市伏見区にある「伏見稲荷大社」で朱い鳥居と白い狐がシンボルになっています。

何処の稲荷神社にも狐の像がありますので、狐を神様とする神社と勘違いされたのでしょうが、ここに祀られている神様は「宇迦之御魂神(うかのみたま倉稲魂命とも書く)」と言い、五穀豊穣の神様だったのです。

記述としては「古事記」や「日本書紀」など、日本神話としても登場していて古い歴史が潜んでいます。

一方狐は古来から神聖視されていた動物で、稲荷大明神の使いと考えられていたので、何時の頃からか混同されて、間違えた常識となって行ったようです。

稲荷神社は五穀豊穣を祈る神様で、別に動物崇拝の神様ではないのですね。

今年も朱い鳥居を潜って、お稲荷さんに五穀豊穣を願った善男善女も多かったことでしょうが、間違えた常識は気が付いた時から改めましょう。

 

難問が出来るまでの過程

アメリカ横断ウルトラクイズでは、時々、超が付くような難しい難問が出題されていました。

中にはそんな問いに答えられる筈が無いというような難しい問題もありますが、時にはそれをラクラク答えてしまう挑戦者も居て、その辺が視聴者の驚きにつながるのですね。

時々勝者予想というお遊びを取り入れたのも、こうした難問に答える人を引き立たせるためのテクニックでした。

では、なぜ突然そのような難しい問題が登場するのでしょう?

例えば以下のような経緯で誕生した問題があります。

世の中で女性の活躍が話題になっているので、「女性解放運動」に関する問題を作るように問題作家に注文を出したのです。

女性解放運動の創始者と言えば平塚らいてふに行き付きます。

そこで、彼女の伝記を調べた作者が婦人文芸誌「青 鞜 (せいとう)」の創刊号に執筆した論文の中に在る名言を発見したのです。

その言葉が第11回のバッドランドで出題された難問でした。

女性解放運動の創始者、平塚らいてふは「元始、女性は何であった」と言った?

平塚らいてふ

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