新しい日本語の条件

 

アメリカ横断ウルトラクイズでクイズ問題を作っていると、流行の出来事や言葉を題材にする事があります。

その様な現象の中から、クイズ問題を作るには面白い情報になるという部分を選んで、問題を作り上げる訳です。

例えば流行語の解釈や、その発信者を当てる様な問題は沢山作られたと記憶しています。

しかし、その様な日本語が単なる一時的な流行なのか、その後も日本語として定着するものなのか、我々のクイズ問題の区分では変わってきます。

一時的な流行であれば、「流行」という分類ですが、日本語として定着するものは「言葉」という範疇に入ります。

その分かれ道は、日本語の辞書に出ているか否かで決まります。

それも伝統ある辞書の代表的な存在「広辞苑」「大辞林」などに出れいれば日本語と認めるという判断でした。

広辞苑

そのような言葉の中から、何時から日本語として認知されるようになったのかが分かる面白い問題がありました。

第16回のグアムでの問題です。

「広辞苑」に掲載された新しい言葉で、「投機によって生ずる実態経済とかけ離れた相場や景気」と言えば、その言葉は何?

答・バブル経済(バブル、バブル現象でも可)

解説  バブルが当時の流行語でしたが、「広辞苑」に初めて登場したのは1991年11月15日に出版された第4版からです。

この時、同時に日本語として認知された言葉は「過労死」「エイズ」「花金」などで新語として新たに掲載されています。

バブルという言葉が世の中に登場したのは1985年から91年頃までの好景気の頃でした。それが日本語として辞書に掲載されたのはバブルが弾ける寸前だったのですね。

「過労死」「エイズ」「花金」など、今では立派な日本語として通用している言葉も、同じ時代に流行語となり、定着して行ったという歴史が見えてきます。

日本語としてはわずか25年くらいの歴史ですが、その間に死語となって忘れられて行く言葉も数多いと推察できます。

10年一昔という言葉が有りますが、クイズ問題を振り返るだけで時代がどんどんと過ぎて行くのが実感できます。

お年寄りが古い事を良く知っている、その典型的な例でしょうね。

三大名物の頂点は?

 

アメリカ横断ウルトラクイズのクイズ問題に出されるパターンに、三つの名物を並べて、その中の一つを当てさせるという手法が有りました。

以前にも書いた事が有りますが、日本の三名園は? とか日本三景は? といった類のクイズ問題です。

人物でも、偉業でも、作品でも通用し、例えばシェークスピアの三大悲劇は? と言ったような問題もしばしば登場していました。

このパターンの出題は日本でも、世界でも通じる手法で、挑戦者の知識を計る恰好の方法で、何回となく使われています。

その様な三つを並べる問題で、頂点に立つのはどの様な問題か? ちょっと調べて見たのですが、スケール、知名度共にこれに勝るものはないという問題を見つけました。

第14回のツインレークスで出題されていました。

・カイロの西南に建つギザの三大ピラミッド。「カフラー王」「メンカウラー王」とあと一つは何王のピラミッド?

答・クフ王

解説  エジプトのピラミッドは人類初とも言える古い時代に作られた謎の多い世界遺産と言えるでしょう。

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観光名所としても、これ以上知名度の高い場所は無いほど、世界的に有名な建造物です。

三つあるピラミッドの中で、第一のピラミッド「クフ」は、規模も最大であり、最も完成されたものと言われています。

因みに、このピラミッドは世界の七不思議と言われており、エジプト第4王朝クフ王の墳墓として、紀元前2540年頃に20年以上の歳月をかけて建造されたと伝えられています。

14世紀にリンカン大聖堂(英国)が完成されるまでは、人類が建造した世界一高い建造物で、144.6mでした。

それにしても東京のスカイツリーが634mですから、時代と共に技術の発達で、とんでもない高い建造物が世界中で作られるようになったものですね。

問題! 世界一高いビルは? 

毎年のように記録が塗り替えられるので、この様な問題は通用しない時代になりました。

クイズ・マニアの皆さんも、知識の収集が大変ですね。

 

宗教の問題は?

アメリカ横断ウルトラクイズのクイズ問題は森羅万象あらゆる分野から問題を作っていました。

とは言え、事が宗教に関する問題は誤解を招く恐れが大きいので、慎重に扱うように気を配っていました。

例えば現在、イスラム国が世界的な話題になり、イスラム教とイスラム国を混同して論ずる人も居たり、本来のイスラム教の信者の人にとっては、大迷惑になっています。

その様な誤解が起こらないように配慮するのは当然の事でしたが、中には宗教に関する問題も数多くありました。

日本人の知識として、仏教伝来に貢献した偉大な僧侶の皆さんの働きはクイズ問題になり易い知識でした。

また、仏教の開祖であるお釈迦様に関する知識も、日本人なら知っておくべき教養の一つと言えるでしょう。

第11回のカンクンで、次のような問題が出されました。

釈迦が誕生した所は現在の何という国?

答・ネパール

解説  お釈迦様は仏教の開祖として紀元前563年の4月8日に誕生したと伝えられています。

お誕生を祝うお祭りが「花祭り」で、お釈迦様の像に甘茶をかけて祝うというのが、仏教徒の仕来りとして残されていました。

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誕生の伝説として残されているのが、生まれて直ぐに7歩あるいて「天上天下唯我独尊」とおっしゃったという事で、子供の頃にその様な話を聞かされたというのが、多くの日本人の子供達でした。

真実は兎も角として、仏教の開祖ですから、その教えを多くの人達が守り、数々の宗派が生まれています。

キリスト教にしても、イスラム教にしても、弟子たちに伝えられた言葉が経典となって後世に残されます。

しかし、その解釈を巡り宗派が分かれ、世界中で戦争にまで進んだ例が数多く見られます。

所謂、宗教戦争ですが、天の上で神様はさぞ呆れ果ててご覧になっている事だと思いますね。

お釈迦様が誕生したのはハンビニーの花園と伝えられ、その場所は現在のネパールに当ります。

この事実は解釈で変更される事もなく、クイズ問題として成立したのでした。

仏教はキリスト教、イスラム教と並んで世界の三大宗教と呼ばれています。キリスト教が20億人、イスラム教が13億人、これに対して仏教徒は3億6千万人。

3大とは信者の数では無いのだそうです。では、何をもってその様に表現されるのでしょうか?

実は民族、地理を超えて拡がっている事。また、文化的、社会的に影響が大きい事で、その様に呼ばれているようです。

信者の数ではヒンズー教が第3位に多いそうですが、神様を巡っての勢力争いは、科学万能の21世紀には似合わないですね。

クイズ問題を巡って、喜んだり悲しんだり、そんな平和な時代が続いて欲しいものです。

 

語源を探る問題

「アメリカ横断ウルトラクイズの答を聞いて、視聴者が「なるほど」と納得する問題は面白いとされていました。

例えば言葉の語源までは知らずに、普段使ったり聞いたりする言葉ってありますよね。

時代劇の喧嘩のシーンなどに良く登場する台詞で、「雁首揃えて何だ!」というような使われ方をすると、「雁首とは何?」という疑問が湧いて来ます。

意味は通じるのですが、その語源は一体何なのだろう? こうした疑問をクイズ問題にすると、答えを聞いた時に「なるほど」と納得感が湧いてきて、面白い問題となるのです。

その疑問に答える問題が第5回のテオティワカンで出されました。

煙管で、タバコの葉を入れて火をつける部分を何という?

答・雁首(火皿でも可)

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解説  江戸っ子たちの威勢の良い啖呵で使われる「雁首」は元々は煙管の煙草をつめる部品の事なのですね。

形が「雁の首」に似ているところから、その様に呼ばれていました。

でも、煙管の部品というよりも、人間の首を当て込んだ使い方の方が、江戸っ子たちには多様されていたようです。

健康管理上、世間では禁煙運動が盛んですが、しかし、その様な意見に耳を貸さない愛煙家も沢山います。

中には日本古来の煙管を愛好する人達もいたりして、趣味趣向の世界は幅が広いのに驚かされます。

特に煙管は歌舞伎や落語などにも良く登場するので、庶民の伝統文化と言えるかもしれません。

煙管の持ち方一つを見ても「町人」「武士」「花魁」など、所作が異なるようで、芝居でもその表現が重要な演技の基本になっているそうです。

「たかが煙管、されど煙管」 小さな小道具ですが昔から愛煙家には長く愛された品物でした。そして日本語の中にもそれが綿々と受け継がれていたのでした。

 

時代で変わる生活習慣

アメリカ横断ウルトラクイズでクイズ問題を作っていると、普段の生活では考えもしない、日本古来の習慣や決まり事を探ってクイズ問題を作る事が有ります。

この様な知識は知らなくても実生活で困る事は有りません。

でも、知っていると「物知り」「知識人」「教養がある」と周囲の目も変わり、クイズ好きな皆さんはその様な欲求を満たす目的もあったろうと思います。

その様な古い日本人の習慣の中で、現在全く使われていない分野がありますね。例えば暦の旧暦、現在のカレンダーと比べてどのように違っているのか大多数の日本人が知らない常識でしょう。

例えば赤穂浪士の討ち入りは12月14日と伝えられていますが、これは旧暦なので現在の暦とは異なります。

だからと言って、旧暦で割り出す必要もなく12月14日で定着し、この日に様々なイベントが行われています。

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時間の考え方もそうです。江戸時代までは一時、二時の様に表現しましたが、現在では全く死語になっています。

とは言え時代劇の世界では時々登場する言葉なので現代に置き換えると、どんな価値なのか、その様な知識を掘り当ててクイズ問題にする事もありました。

第10回のエルパソで出題された問題です。

問・江戸時代、小半時(こはんとき)とは、現在の時間でいうと何分?

答・30分。

解説  小半時とは一時の4分の1でした。では、一時は? これが判明しないと先へ進みません。

一時は現在の時間で2時間なのです。従ってその4分の1ですから、30分が小半時だったのです。

この様な知識は知らなくても現代の生活に困る事は一切ないでしょう。

でも、こうした余分な知識がクイズを楽しむ材料になっていたので、雑学愛好者には好まれた番組だったのかも知れません。

我々は、クイズ問題の一つ毎に楽しめる情報が欲しい、そんな理想を掲げて問題作りをしていたのです。