知識の混乱はミソだった

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には時々共通点があります。

例えば2つの同じような物を並べて、挑戦者の記憶を混乱させ、真実を求めるという問題です。

日本の地理で言えば島根県と鳥取県、滋賀県と佐賀県、これらの県に関しては、社会科の時間に何となく混同して記憶違いを起こす事がありますよね。

地元の皆さんにすれば「ふざけるな!」と言いたいところでしょうが、この様に2つの記憶が混同する事象というのは結構あります。

第14回のグアムでの○×クイズで、次のような問題が出題されました。

・ハーバード大学は何とケンブリッジ市にある。

答・○

解説  ハーバード大学と言えば世界の名門大学で、留学希望者にとっては憧れの的といっても過言ではありません。

この大学はマサチューセッツ州のケンブリッジ市に本部を置くアメリカ屈指の名門大学でオバマ大統領をはじめとして8人の合衆国大統領を輩出しています。

thLFRFNK1A

一方、世界の名門大学にケンブリッジ大学もあるので頭は混乱します。

但しこちらはオックスフォード大学と並ぶイギリスの名門大学なのですね。

世界の名門大学を目指した人なら間違えることもないのでしょうが、世界の名門大学という記憶だけですと、所在地まで記憶にないのが普通です。

その辺の記憶を混乱させるのが目的で作られた問題だったのです。

最近ではアメリカ留学も珍しくないので、このような問題を出すと、現役大学生に馬鹿にされそうですね。

でも、20数年前のウルトラが放送されていた時代には、これでも挑戦者が迷う難問の部類だったのです。

 

 

ブランド品の代表格

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題を振り返って見ると、時代の移り変わりが手に取るように解る事があります。

放送当時に流行していた事柄がクイズ問題に反映していて、時の流れに懐かしさを感じてしまいます。

逆に、何時の時代にも変わらないのが、若者たちの流行に関する関心度の高さがありますね。

あの時代にも、若者達はブランド商品に興味がありましたが、それは現代でも全く変わっていません。

勿論、人気のブランド名は多少変化していますが、ブランド信仰に変化はありません。

最近は中国人旅行者が高価なブランド品を買い漁っているというニュースを度々目にします。

先日も中国人旅行者の母娘が、数十万円もするブランドのハンドバックを買って「安い!」を連発している姿が紹介されていました。

80万円もするハンドバッグを母娘で買って「安い」という神経も庶民感情を逆撫でしそうですが、成金の感覚は万国共通のようですね。

さて、紹介されていたハンドバックは女性の憧れの的、エルメスのケリー・バッグでした。

ウルトラクイズでもこのバッグに関してはクイズ問題として登場した事がありました。

第16回のレイクパウエルで出題されていました。

・モナコ王妃の名前に因んで名付けられたバッグといえば何?

答・ケリーバッグ

解説  エルメス製の、この形のバッグは1,935年に発売されていたものです。

th3F506N1D

ところが1,956年に女優でモナコ王妃となったグレース・ケリーが愛用していたところから、彼女の名前をブランド名にして売り出したところ、世界的なヒット商品となったのです。

エルメスも同時に世界のトップブランドに躍り出たという歴史があったのですね。

世界のお金持ちの女性は、競ってこのバッグを持つようになり、文字道理「富の象徴」のような存在となっているようです。

「にわか成金が、似合う訳ないだろう!」と言いたくもなりますが、それをひがみ根性というようです。

日本男子たるものひがみ根性だけは持ちたくないものですね。ハイ!

備えあれば患いなし

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題を振り返ってみると現代に通用する問題も沢山ありました。

不変の知識は何時の時代でも通用するので、20年前でも現代でも答えに変化が在る訳では有りません。

最近のニュースで「免震ゴムの不正問題」がマンション居住者に不安を与えているという報道が有りました。

地震の災害に備え、最近の高層マンションでは激しい揺れを吸収するために、基礎に免震ゴムを使い安全性を強調していました。

ところがこの免震ゴムが基準の強度に達していないものが発見され、不安解消の問い合わせが殺到しているというお話です。

諺では「備えあれば患い無し」とあるように、地震の怖さを避ける備えで、免震ゴムのマンションに入ったのにそれが基準に達していないとなれば、「備えあっても患い有り」となってしまいますね。

何時来るか解らない、地震に対する恐怖は4年前の東日本大震災をきっかけに日本中に蔓延しています。

そうした不安の中で昨年は「御嶽山の噴火」で多数の被害者が出、益々不安を高めています。

御嶽山は昔から日本人の信仰の対象でもあって、興味を持たれる山でした。

ウルトラクイズでも、御嶽山の問題があったような記憶を頼りに調べて見たら確かに有りましたね。

thF1FVHFZH

でも、クイズの問題は噴火山の知識では有りませんでしたが、日本人なら知っているべき知識を問うていました。

第4回のソルトレイクシティーでの問題です。

お馴染の民謡「木曽節」に使われる合いの手「ヨイヨイ」と、あと一つは?

答・ナンジャラホイ

解説  〽木曽のなー、中乗りさん、木曽の御嶽山はナンジャラホイ、夏でも寒いヨイヨイヨイ 。民謡の一節を知っているかどうか?

単にそれだけの問題ですが、クイズに強い人はこの様な問題にも素早く正解して先へ駒を進めていたのですね。

クイズは森羅万象に対して、備えあれば患い無しですから、油断大敵、火がボウボウとも言えます。

一時帰国の変則ルート

アメリカ横断ウルトラ・クイズのルートは日本を出発してゴールはニューヨークというのが基本的なコースでした。

しかし、アメリカへ上陸する前にオーストラリアやニュージランドに寄り道をしたり、アメリカを突き抜けてパリで決勝戦を行うなど変則のルートを組んだ回も有りました。

でも、スタートがグアムかサイパンで、次にハワイを経由してアメリカ本土に渡るというのは、ある種お決まりのコースとなっていて、視聴者も挑戦者も定番のコースと認識していました。

でも、日本を出国してトンボ返りし、最出発という不思議なコースを辿った事が一度だけありました。

それは第6回の事で、サイパンから次のチェックポイント、アラスカに向かうというコースだったためです。

理由はサイパンからアラスカへ直行する航空便が無かったので日本経由となったためです。

日本では成田で1泊して翌日にアラスカへ向う航空便に乗るのですが、スタッフは休む間もなく成田で挑戦者を喜ばせる仕掛けを計画していました。

前日にサイパンで敗者となった挑戦者は20名。彼らは1泊2日のサイパン旅行を終えて失意の帰国をしたのですが、成田に到着すると福留さんがいきなり「敗者復活戦をやるぞー!」と叫んだのです。

いきなり降って沸いた様な朗報に、全員が「オーッ!」と喜びの雄叫びを上げ、目もランランと輝いたのです。

th391LBA7J

敗者20名の中から4名を復活させてアラスカへ連れて行こうという大ボーナス・クイズ。

20名全員参加の○×札挙げクイズで、4名を選出するという方法です。

ウルトラクイズは夜中に眠っている処を叩き起こしてクイズを仕掛け、負けた人を敗者にするような非情な仕掛けも有りましたが、失意の人間達に突然ボーナスを与える様な、喜びの場面も作りました。

挑戦者の「涙と大喜び」この悲喜こもごもが、大きな味付けの要素だったので、我々は「涙」の落とし穴と同時に、「喜び」の仕掛けも常に考えていたのです。

挑戦者の身になれば、ハラハラドキドキの1か月の旅、ストレスの貯まる心臓に良くない思い出なのでしょうね。

でも、懐かしいという方が多いのが救いになっています。

苦しい思い出、嫌な出来事、これも時間が経つと懐かしい良き思い出に変化する、人間の心は面白い仕組みになっているのですね。

 

源流を辿る面白い情報

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、正解を聞いて意外性のあるものが、面白い情報として時々出てきます。

放送の翌日、番組を見た視聴者が「知ってた? こんな話」と話題になる様な問題が好まれていました。

その様な問題の多くは、クイズ問題作家が自分で疑問に感じた事柄を調べて問題を作る訳ですから、問題用紙の「出典」という欄に「発想」と記入します。

自分の発想で問題を作り、採用になる数の多い作家が優秀な作家と評価されていたので、クイズ作家は皆さん発想の問題を一生懸命作っていました。

次に紹介する問題も作者の発想から出来た問題でした。

第5回のフェニックスで出題されています。

元々羊の肉を使った中華料理の一つだった日本のお菓子とは?

答・羊羹

解説  耳で問題を聞いて、肉と和菓子を結びつけて思い浮かぶものはそんなに有りません。強いて結びつけるなら「羊」という漢字の文字から、こじ付けで羊羹という言葉が浮かんで正解に辿り着く事が出来ます。

thGOIP7LLC

それで良かったのですが、元々は肉を使った「点心」で、中華料理のコースの最後に出るお菓子だったのです。いわばデザートですね。

それが点心の甘い餡の部分だけを変化させ、和菓子として再構築されて、あの羊羹に生まれ変わっているのです。

源流を訪ねると、似ても似つかぬ変身ですが、羊羹の先祖が羊の肉とは意外性のある話のネタでした。