世の変化で正解が変わる!

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、人々の興味のある事柄から答えを求める事が多くありました。

その中で、何時の時代でも国民の話題に上がるのが国会議員の質と人数の問題です。

国会議員の数が多過ぎるのではないか? 議員削減の声は上がっても中々減らないというのが日本の姿でした。

第8回ですから今から31年前の後楽園第1次予選で、次のような○×問題がありました。

問・日本の国会議員とプロ野球選手、人数の多いのは国会議員である。

答・○

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解説 この時代の国会議員は衆議院議員511名。参議院議員252名、合計定員は763名でした。

対するプロ野球選手は定員720名だったので、国会議員の方が43名人数は多かったのです。

目を現代に向けてみると、実態が逆転しています。

国会議員は717名、プロ野球選手は70名×12球団=840名で、プロ野球選手の方が多いのですね。

国会議員もプロ野球選手も、将来の目標として希望者が多く共に狭き門です。

クイズの正解は時代によって変化する例として、花形職業の代表で、この問題を取り上げてみました。

それにしても議員の皆さん、何時の時代にもその質が問われていますが、いい加減に尊敬される存在になって欲しいものです。

大衆は「冠」が大好き

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は森羅万象の中から、興味の持てる事柄を選んで創っていました。

良い問題を創るためには、常に大衆の求めるニーズをリサーチし、それに応えなければなりません。

商売の戦略と良く似ていますね。

大衆の好みは時代によって変化しますが、何時の時代にも「冠」「権威」が大好きという傾向は変わりません。

例えばグルメが人気ですが、ミシュランの★が幾つ付いたというだけで、大勢の人達が押し寄せるというのは世界的な傾向と言えるでしょう。

権威が大好きな証ですね。

また、世界遺産に登録されたという「冠」が付くと昨日までは閑散としていた観光地に、多数の人達が押し寄せ駐車場が何時間待ち、という珍現象が起こります。

同様な意味では「国宝」と呼ばれる冠も興味を惹く大きな力を持っているのです。

第11回のカンクーンで、次のような問題が出されていました。

問・京都の広隆寺にある国宝第1号の仏像は何?

答・弥勒菩薩(みろくぼさつ)

解説 国宝とは読んで字の如く、国の宝物です。

建築物、美術工芸品、古文書などの文化財の内、特に優れたものを保護するために与えられる資格です。

また、人間では重要無形文化財として人間国宝としての資格が与えられる事もあります。

これは1950年に制定された文化財保護法によって、守られており、それ以前のものは旧国宝とよばれ、価値の高いものは再登録されています。

問題の仏像第1号とは、1951年の6月に登録された台帳の1番目に登録されたという意味で、同じ日に仏像は幾つか登録されています。

では、何故この仏像が第1号になったのか?

これには「国宝第1号広隆寺の弥勒菩薩はどこから来たのか?」との文庫本が出ているくらいで、奥の深い事情があるようです。

いずれにしても大衆は「冠」と「権威」で引き寄せられるという事ですね。

各国が、世界遺産登録に国を挙げて懸命になっているのが良く理解出来ました。

 

 

外来語と純日本語

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には言葉に関する問題が沢山含まれていました。

クイズですから言葉の意味、語源、などから面白そうな情報を探して問題を創っていましたが、その中に外来語に関する問題がありました。

元々は外来語なのに、今では日本語と区別のつかないほど、人々の生活に溶け込んでいる言葉も多いですね。

例えば背広、カステラなどが良くクイズ問題になって出題されています。

背広は元々ロンドンのセビルロー通りから来た言葉と言われています。

この通りには、オーダーメイドのスーツの仕立て屋さんが多く漢字の宛字で出来上がったという説があります。

外来語の多くはカタカナで表記されるのが慣習になっていますが、今では漢字で表記されている言葉も多いので、その辺がクイズ問題になり易いのです。

第12回のグアムの泥んこ○×クイズで、言葉の問題として次のような問題がありました。

問・その昔、材木問屋の「紅屋」さんが初めて合板を売り出したので「ベニヤ板」と呼ばれた。

答・×

解説 紅屋さんが売り出したのでベニア板、ありそうな問題ですが、これは引掛け問題でした。

日本では合板をベニア板と呼んでいますが、実は紀元前3500年に古代エジプトですでに合板の板は創られていたという歴史があります。

日本には1912年、ロシアから合板を輸入し、その時の呼び名が英語のベニアだったので、そのまま合板をベニア板と呼ぶように定着したようです。

合板は安価な建築資材のイメージがあるので、嫌う人もいますが、近代では品質改良も進んで世界中に広がっています。

消費量の多い順では中国、アメリカ、に次いで日本は第3位なのだそうです。

言葉の語源や歴史を調べると、思わぬ真実が隠されています。

この問題では、ベニヤ板が古代エジプト時代にすでに創られていた、という意外性が面白い発見でした。

 

 

3個並べる名物は?

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、有名な事象を当てる時に、3つの物を並べ、その一つを当てさせるクイズが多数ありました。

例えば日本の3大名園と言えば何? のような問題です。

答は金沢の兼六園、岡山の後楽園、水戸の偕楽園で、日本人は同じような名物を3つ並べて評価するのが好きなようです。

クイズ問題としては、定石のような問題と言えるでしょうね。

宮城県の松島、天の橋立、宮島厳島を並べて日本三景と呼んだのもその代表的な例でしょう。

日本の3大霊山、3大名瀑などこの様な分類は数多くあります。

単に、この抜けた一つを当てさせるだけでは、能がありません。もう一つ工夫を加えて、知識の深さを計ろうと創った問題があります。

第9回のオーランドで出題されています。

問・日本の三大奇矯、ユニークな橋の一つ、山口県の錦帯橋は幾つのアーチで出来ている?

答 五つ

解説 錦帯橋は、山口県岩国市を流れる錦川に架けられた五連の木造アーチ橋です。

3大奇矯は、甲斐の猿橋、日光の神橋と並んで評価されていますが、それを当てるよりは更に詳しい知識を試す方が高度と判断し、この問題にしたのです。

1,673年に建造され、春は桜、夏は鵜飼に花火、秋は紅葉、冬は雪化粧と風光明美な人気の観光スポットです。

錦帯橋(2010年7月)

木造である、も着眼点でしたが、五連の姿も特徴が鮮明なので、これを問題にしたのです。

錦帯橋という一つの建造物を取り上げるにしても、その何処を問題にするか、クイズ問題会議の重要な作業だったのです。

一つの事象を縦、横、斜め、時には上から、或は下から眺めてクイズの問題点を探す問題作りの楽しみでした。

 

 

諺は知識の源泉

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、諺に関する問題が多数出されています。

諺を辞書で引くと、「昔から人々の間で言い習わされた風刺、教訓知識、興趣などを持った簡潔な言葉」と記されています。

我々の先祖が、長い間に作り上げた教えや教訓で、知識の基礎になる言葉が多いのです。

昔の人は子供や後輩を説教する時に、諺を例に出して「石の上にも3年と言うだろ」のように我慢をして頑張れのように教訓にしていました。

つまり、諺には永い間に培われた真理が含まれているので、説得力のある諺が多いのです。

例えば、人体の細部に亘る知識など医学を学んだ経験者でなければ、持ち合わせていないのが普通です。

でも、諺によって普通の人でも一般の知識として知り得る事が多々あります。

第11回のパームスプリングスで、次のような問題がありました。

問・深い恨みはここまで浸み込むと言われる、人間の骨の内部にある柔らかい組織は何?

答・骨髄

解説 骨の内部にある柔らかい組織? と問われても医学生でなければ答えられないでしょう。

でも、日本人は「恨み骨髄に徹す」という諺を知っているので、この難問にも正解出来る知識を持ち合わせていました。

言い換えれば「諺は知識の源泉」とも言えそうです。

クイズに強い人は多くの諺を暗記しており、諺を題材にした問題では、誤答も少ないというデーターもありました。

「諺」は先祖が子孫に残してくれた有難い教訓と心得、時々は思い返してみるのもボケ防止に良いかと思います。自分の事ですが……。