年の瀬に思う事

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの裏話を書いていますが、今年最後の記事になりました。

良く年を取ると月日の流れが早く感じると言いますが、確かにそれを感じる昨今です。

つい、数か月前に新年の記事を書いたように感じますが、早くも一年が経っていたのですね。

こんな気持ちを表すクイズ問題があったようなので、調べたところ第14回のレバノンで出題されていました。

問・「夢うつつ」の「うつつ」とは何のこと?

答・現実

解説 日本語の辞書では、(夢に対して)目が覚めている状態を指す、つまり「現実」と記されています。

私の場合、一年が「夢うつつ」のように早く過ぎたという表現かもしれません。

同義語には夢中、夢心地、夢、などがあり、この言葉を時と場合によって上手く使い分けるのが日本語です。

日本語は奥ゆかしい分、難解な言語ですね。

ところで、ウルトラクイズはこれらの言葉に深い関わりがありました。

放送当時、視聴者の皆さんは夢中で楽しんでくださいました。

挑戦者の皆さんは夢心地のうちに旅を重ね、残夢のような罰ゲームを体験しました。

また、夢よもう一度、と願うクイズ・マニアが多勢いるという話も伝わっています。

何はともあれ夢は楽しいものです。

皆さま、夢の多い良い新年をお迎えください。

 

 

 

視野を広げると見えるもの

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの思い出を書いていますが、今年も余すところ一週間を切りました。

テレビでは年末の恒例として、一年の出来事を振り返る番組が増えています。

スポーツで活躍した選手、政治の出来事、世界の大きな動き、年内に亡くなった著名人の思い出、今年もいろいろありました。

毎年選ばれる今年の漢字は「安」との事でした。

これは日本漢字能力検定協会が1995年から始めたもので、その年のイメージを一般公募して選ぶ年末恒例行事です。

今年1位に選ばれたのは安全、安心、安らぎなどで使われる「安」の一文字でした。

漢字は一文字の中に、いろいろな意味を含みます。

クイズ問題にしても意味を求めて、漢字の問題は恰好の素材と言えるかもしれません。

第7回のデスバレーで、次のような問題がありました。

問・一面だけを見て、全体を見ない例え「木を見て何を見ず?」

答・森

解説 小事に囚われて、大事を見失う事の例えに使われる諺ですね。

私はクイズ問題を創る作家の皆さんに、良くこの諺を引き合いに出して説明していました。

今年の漢字「安」も、応募者の皆さんは今年の出来事を縦、横、斜めから見てこの文字を選ばれたのだと思います。

例えば、平和安全法制の成立、爆破テロに会わないための安全安心して生活出来る国日本、高齢者の安らぎ

日本の出来事を多角的に見て、選ばれたのが多分この安という文字に凝縮されていたのでしょう。

来年は日本人が全員、安心、安全に暮らせる安らぎの年になって欲しいものです。

 

年末の行事・いろいろ

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、森羅万象の中から創られていました。

クイズは知識を競い合うゲームですから、あらゆる分野の出来事に目を向け、知識を吸収しなければ優勝は出来ません。

長年番組を続けて驚くのは、何時の年も決勝戦まで残った人達は実に知識が豊富でした。

「何故こんな事まで知っているの?」と頭の中を覗いて見たいほどの達人が揃っていたのです。

12月は1年の締めくくりの時期になりましたが、年末ともなると各業界毎に異なる行事がある事でしょう。

第15回のニューヨーク決勝戦で、次のような問題がありました。

問・証券取引所で開かれる、一年最後の立ち合いと言えば何?

答・大納会

解説 現代は一般の人でも株に興味のある方が増えているので、この問題に正解出来る人は多いかもしれません。

でも、第15回が放送された20年以上前には、状況も現代とは違いました。

しかし、決勝戦に残った2人はこうした難問にも早押しボタンを競って押してきたのです。

証券業界では、1年の締めくくりを大納会と呼び、原則は12月30日と決まっています。

今年も大納会は12月30日(水)で、2016年の最初の取引・大発会は1月4日(月)と決められています。

こうした或る業界の専門用語でも、簡単に正解してしまう強者揃いでした。

どの分野でも強い人の戦いは、迫力があり、興味を盛り上げてくれます。

古くは宮本武蔵佐々木小次郎の「巌流島の戦い」。日本人はみんな大好きでした。

大相撲でも野球でも、優勝戦は手に汗握る白熱戦になりますね。

ウルトラクイズもニューヨークの決勝戦はクイズの名人戦と位置付け難しい問題を並べて彼らの博識ぶりを強調したのです。

毎回、何万人の中から勝ち抜いた強者ですから、頂点に立ったのはクイズ名人の名に相応しい実力者ばかりでした。

問題の文言にヒントが潜む

 

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、出来るだけ正解を答て欲しいというのが、我々問題を創る担当者の本心でした。

折角考えた問題なのに、誰にも理解出来ずに無回答だったり、誤答では視聴者の心に残りません。

視聴者が「面白い」或いは「へー、そうだったの!」と興味を持たれる問題を作るのが理想でした。

従って、「難しい」「誤答するかも?」と感じた問題の場合は、問題の文言の中にヒントになるような言葉を潜ませて出題していました。

第14回のグランドテイトンで、次のような問題がありました。

問・安土桃山時代の武将・細川忠興の妻は細川ガラシア。では、細川ガラシアの父で近江坂本城主だった武将は?

答・明智光秀

解説 問題で、例えば戦国時代に近江坂本城の城主は誰? と出題しても余程歴史好きの人でなければ正解は出ないでしょう。

でも、悲劇の女性であった細川ガラシアは多くの物語で知られた人物であり、その父親が明智光秀であったのはクイズ・ファンなら当然承知の情報です。

創られた問題を無駄に消化させないために、我々は問題の文言に何気なくヒントを潜ませる、このような工夫をしていたのです。

今だから話せる問題担当者だけが知る、秘策でした。

御神籤で運を占う

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズは、知力、体力、時の運をキャッチフレーズにしていた番組でした。

クイズ番組なのに、運で勝負を決められたのでは敵わない!」とクレームが付きそうですが、出場者はそれを承知で参加していました。

クイズに勝ったのにジャンケンで負け、飛行機に乗れなかったという悔しい思いをした人が、毎年50人も居たのです。

自分の「運の悪さ」を悔やむしかありません。

その様な歴史の中で、凶運の中の大凶運の人が居たのでご紹介しましょう。

その方は、第11回に出場したFさん(当時25歳)東京のOLさんでした。

東京ドームで、18,017人の中から数多くの難問をクリアして選ばれた104名の中にいました。

普通なら、次は成田空港でジャンケンに勝てば、憧れのグアムへの切符が手に入る段取りでした。

ところが普通ではない、超へそ曲がりの揃ったウルトラクイズのスタッフは、悪魔の様な落とし穴を考え付いたのです。

埼玉県の人形の街、岩槻市に久伊豆神社と言う名の神様を見つけてしまったのです。(クイズとも読める)

となると、この神社を黙って通過する訳には行きません。

そこで成田空港の前に国内第2次予選をこの久伊豆神社で行う事になったのです。

それも神社なので御神籤を引き、凶を引いた人だけに問題を出すという形式です。

104名中、運に見放された3名が「凶」を引き当てたのでした。

この3名による2ポイント勝ち抜けの早押しクイズ。正解は「今日でお別れ」「背水の陣」厄日」といった縁起の悪い言葉ばかりのオンパレードでした。

この地で散ったFさんは、凶の中の「大凶」という汚名を着せられて、成田へ向かう挑戦者の乗ったバスを1人淋しく見送ったのです。

この瞬間、彼女は「敗者が主役」の主役の座に付いていたのでした。目出度し、メデタシ…。