地獄の風景を見た

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズは、日本人がそれほど外国旅行をしていなかった時代に放送された番組です。

従ってアメリカ各地の景色も、今ほど世の中に知られていませんでした。

その様な時代なので、我々がクイズ会場に選ぶ場所は、珍しい風景憧れの地を紹介する目的もありました。

その中で、我々が選んだ一番凄い景色と言えば、第11回に訪れたバッドランドの様な気がします。

サウスダコタ州の南西部にある国立公園で、岩山と砂地など無機質な景色が924㎢も続いているのです。

あの世に、若し地獄があるならば、多分この様な眺めだろうと不吉な気分にさせる光景でした。

西部開拓時代に、幌馬車も通れない場所から、バッドランドの名が付けられたとの伝説があります。

「バッドランド」の画像検索結果

人間が近付けないので、動物にとってはワクワク・ランドと言えそうで、2種類の動物が生息していました。

一つはプレイリードッグ(草原の犬)と呼ばれるリスの様な動物で、あちこちに穴を掘って生活しています。

「プレイリードッ...」の画像検索結果

もう一つはアメリカで唯一、野生のバッファローの生息地で、運が良ければ姿を見る事が出来るとの事でした。

この地で出された問題に、次のような設問がありました。

問・メリカ開拓時代の19世紀後半、バッファローが乱獲されたのは何の障害物になったから?

答・大陸横断鉄道(鉄道)

解説 18世紀までは、アメリカ大陸に凡そ5,000万頭のバッファローが生息していたと言われます。

しかし、大陸横断鉄道が完成すると、バッファローの群れが、鉄道を走らせる上で障害物になったのです。

そこで、大規模なバッファロー狩が始まったのです。

中には客車の窓から、銃を発射する輩まで現れ、そうした目的のツアーまであったと伝えられています。

正に、バッファローの乱獲で、一気に数が減少し野生のバッファローは、このバッドランドにしかいなくなったのです。

かつてのアメリカには、動物愛護協会が聞いたら仰天するような時代が存在していたのですね。

難を逃れたバッファローの生息地。それは地獄を連想させる荒涼たる原野だったのです。

 

 

ご当地問題の宝庫はパリ

アメリカ横断ウルトラクイズの定番に、ご当地問題という枠が有り、クイズ地の関連問題を創っていました。

ニューヨーク、ワシントンなど知名度の高い都市の場合は、クイズ問題になりそうな素材が豊富に有ります。

第9回で、パリが決勝地になった時には、問題の選択に悩むほど、数多くの問題が完成しました。

パリはファッションの街芸術の街文化の街など形容詞が多いだけに、クイズの素材も豊富でした。

とは言え決勝の地なので、誰でも知っているような簡単な設問では、視聴者の皆さんも満足しないでしょう。

エッフェル塔凱旋門ルーブル美術館など、誰でも知っている関連問題は容易な問題になり勝ちです。

知っているようで、意外と知られてない知識をクイズ問題にしなければなりません。

知識の盲点ですね。そこで選ばれたのが次のような設問でした。

問・日本の道路の起点は東京の日本橋。では、フランスの道路の起点はパリの何処?

答・ノートルダム寺院

解説 起点ですから、フランスを代表する場所。エッフェル塔、凱旋門、ベルサイユ宮殿等が思い浮かぶでしょうね。

しかし、フランスの中心地はシテ島にあるノートルダム寺院なのでした。

大聖堂の正面広場に、直径70cmほどの丸い石板が埋め込まれ、ポイント・ゼロと呼ばれています。

この石板が、パリからフランス各地に向かう道路の起点とされているのです。

ノートルダム寺院は「我らの聖堂」との意味でフランス人の中心的な場所なのですね。

この大聖堂は12世紀に着工し、200年後の14世紀に完成したカトリック教会の中心的な建造物です。

勿論、世界遺産に登録された、パリ観光の目玉的な存在ですが、道路の起点は意外や盲点となっていたのです。

 

日本史のややこしさ?

アメリカ横断ウルトラクイズの問題の中には、日本史に関する設問が多数ありました。

最近、天皇陛下の退位が話題になり、日本独特の元号の話が、テレビで詳しく報じられるようになりました。

明治以来、天皇が代わる度に元号も変わるようになりましたが、その昔は一代の天皇で、何回も変った事があったのです。

我々の番組でも、一番多く使われた漢字は何?のような、元号に関する問題は多数出されていました。

元号の最初は? 大化の改新大化」という問題もありましたね。

元号は、覚え難く「だから日本史は苦手」という方も多分多かったと思います。

世界史の年表と比べ、日本史の年表がややこしいのは、元号で表記される事に原因があるようです。

そんな中で、次のような問題が第16回のニューヨークで出題されていました。

問・江戸幕府が開かれたのは1603年だが、その時の日本の元号は何?

答・慶長

解説 慶長8年2月12日に、徳川家康が征夷大将軍に任ぜられ、江戸幕府が成立しました。

この終焉は、1867年15代将軍・徳川慶喜の大政奉還で幕を閉じています。

奇しくも、この時の元号が慶応3年で、始めと終わりが同じ「慶」の文字というのも記憶し易い年号でした。

なお、慶応は4年まであり、慶応3年4年は近代日本の動乱の年でした。

4年には戊辰戦争があり、その後は江戸城の無血開城となります。

「江戸城無血開城」の画像検索結果

主人公は、勝海舟と西郷隆盛の会談など、近代化物語の宝庫的な時代でした。

「明治は遠くなりにけり」などと言われますが、平成も30年で幕を降ろす事が発表されています。

と、なると昭和生まれは古い人間との印象も強くなりますねえ。

明治生まれ、大正生まれの皆さんも昔は若者だった時代があったのです。

だから、年寄り扱いには慣れるしかありません。

そのうち、正真証明本物の年寄りになりますよ。それが時代の流れです。

 

 

 

 

 

細かい事が気になります

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、人々が気にもしない細部の事を取り上げる事がありました。

所謂、オタクと呼ばれるような細かい、専門家しか知らないような知識を試す問題です。

人気テレビ・ドラマ「相棒」の杉下右京さんの口癖「細かい事が気になるんです。僕の悪い癖」的な問題です。

第3回のワシントンDCで出題された問題。

問・バイオリンの胴に開いている穴の形、アルファベットの何という文字?

答・f

解説 レオナルド・ダ・ヴィンチと言えば、美術、科学、哲学をはじめ、あらゆる分野で後世に影響を残した人でした。

ルネサンスの万能の巨人と称されていた天才で、ヘリコプターの原型も彼の発案と言われます。

「バイオリン 画...」の画像検索結果

何と、バイオリンの胴に開いている穴も、彼の発案によるものと伝えられています。

イタリア生まれの彼は、フランス王フランソワ1世に招かれて王に仕えるようになりました。

バイオリンの穴の形も、音の伝達があの形が一番と言われています。

あの形のfを選んだのには、以下の様な伝説があるのです。

バイオリンの穴は、フランソワ王の頭文字、fが選ばれその形が定型になったと伝えられています。

右京さん状態の、細かい事が気になる人は、何故あの形になったのか、気になっていた事でしょう。

本日で、この疑問は解決です。

バイオリンのfの文字は、フランソワ王の頭文字、そして発案者はレオナルド・ダ・ヴィンチ。

本日の裏話は、雑学的な知識一つ増えたクイズ問題のお話でした。

忘れられた調理の常識

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には、世の中で忘れられた常識を喚起する目的のクイズもありました。

生活をする上での躾、常識などは、昔は親から子へと教えられたものです。

でも、近代ではテレビや雑誌など情報源が多岐にあるので、親の手間が省かれているようです。

例えば、昔なら当然親が教えていた料理の常識も、今は子供に伝えられていないのが現実でしょう。

その盲点を突いた問題が、第5回のヒューストンで出されていました。

問・昔の板前さんは、野菜を切る時、まな板の裏・表、どちらの面を使用した?

答・裏

解説 語源を調べると「まな」とは動物性食品の事だったのです。

魚や肉などを切る板なので、まな板と名付けられたのですね。

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プロの板前さんは、野菜に動物の匂いが付くのを避ける意味で、野菜は裏面を使っていたのです。

昔は、これが主婦の常識になっていて、母から娘へと伝えられていたようです。

現代では肉類と野菜類では、別のまな板を使うなど使い分けをしている方もいるようです。

でも、折角先人の知恵、両面の使い分けの工夫があるのですから、これを利用しない手はありません。

衣料だってリバーシブルの時代です。

昔の人の知恵は、素直に受け継ぎましょう。これが日本人の伝統というものですよね。