クイズ研の対抗策

メリカ横断ウルトラクイズが始まって何年かすると、全国の大学にクイズ研究会というサークルが沢山誕生しました。
我々はクイズ研究会を嫌っていた、という噂が飛び交った事が有りますが、決してその様な事実は有りません。
多分スタッフの誰かが新聞か、雑誌のインタビューで、不用意に喋った話に尾ひれが付いて、そのような噂になったのでしょう。

クイズ研究会はクイズが好きな人達の集まりですから、むしろ我々にとっては有難いお客様なのです。
その様な大切なお客様を番組スタッフが嫌うはずがないでは有りませんか。
ただ、大学のクイズ研しかクイズ王になれないとなると話が変わってきます。
一般の人の参加意欲が落ちてしまっては、番組の当初の目的「誰でも楽しめるクイズ番組」ではなくなってしまいます。
クイズ好きは大歓迎、しかし、一般の人も同じように楽しめる番組でなければ、長続きしないでしょう。
だから、クイズ研の皆さんだけに番組を独占されないような問題作りをしなければなりません。
それが、問題担当の私に課せられた大切な使命でした。

のやり方を具体的に知りたい、というコメントを頂きましたので、本日はそのさわり程度の具体例を書いてみたいと思います。
クイズ研の皆さんは、クイズに出そうな常識的な知識を毎日訓練しているはずです。
例えば日本で一番高い山は問題になりませんが、2番目、3番目くらいは知識に加えているでしょうね。

富士山を問題にするにしても、日本には○○富士と呼ばれる山があります。
青森県の岩木山は、別名「津軽富士」。では鳥取県の大山は別名何富士?
第12回の決勝で出された問題です。

このように変化させて問題にしていました。クイズ研の皆さんはその様な日本中の「○○富士」というような問題は当然知っているでしょう。
しかし、一般の方でも答えられるレベルです。
・伯耆富士(出雲富士でも可。大山は1729mで、中国地方では最高峰の山です)

同じように一番広い湖、一番長い河、都道府県の人口、広さ、この様な学校の社会科で、或は理科で、音楽で、国語の授業で習って、テストに出る様な常識問題をストレートに問題にするような事は一切しませんでした。
この様な問題をクイズにしたら、普段訓練をしているクイズ研の皆さんが一番に早押しボタンを押すのが目に見えてきます。
多分問題を読んでいる途中で先を読んで押してくるでしょう。
我々が一番嫌っていたのは、問題を最後まで聞かずに早とちりする挑戦者です。

何故かと言えば、先を読んで正解が解るような文章に仕上げていないという自信が有ったので、そのような場合は当然誤答になってしまいます。
誤答になると折角作った問題が、無駄になるので、その様な早とちりがないように、現場では問題を最後まで聞くように、福留さんが時々注意をしていました。
毎年、早とちりをするのは残念ながらクイズ研の皆さんだったのです。
このような事実の積み重ねが、スタッフがクイズ研を嫌っていたという話に変化したのかも知れません。

では、我々のクイズの作り方です。
学校のテストのように、うわべだけ知っていれば点数になる、というような問題は少なかったと思います。。
例えば学校だと、文学でも作品名と作者が解れば正解になるような問題が多いですよね。
文学作品群があって、作者と線で結べというようなテストです。
他のクイズ番組の中には、その様な単純な問題がありますが、我々の番組では少なくとも、作品を読んでいない限り、正解は得られないという目線で問題を作っていました。
だから、試験勉強のような一夜漬けの丸暗記ではダメなのです。

えば歴史の問題でも、徳川幕府の何代目の将軍は誰? と言ったような問題は一問もありません。
但し、将軍の残した功績を挙げて、それは何代目将軍? というように少なくとも歴史を学んだ知識の中から、将軍の名前を当てる様な問題はあったと思います。
つまり、上部だけの知識ではなく、少し中身に入り込んだ知識、それも意外性のある問題が好まれて採用されていました。

答を聞いて、「ああ、そうだったのか」と視聴者が一つ知識を増やす、それが理想の問題です。だから、雑学辞典に出ていた、というような知識は極力避けて問題のセレクトをしていたのです。
例えばこれも漢字の盲点でした。
・よく似た姿の「アヤメ」と「ショウブ」。漢字で書くと全く同じ文字である。

アヤメ

ショウブ

解説 両方とも漢字では「菖蒲」と書くのです。

いずれがアヤメ、カキツバタ、というように姿形が見分け難い上に、漢字の表記が同じというややこしさ、それにショウブが加わると頭の中が混乱して来ます。
何故、同じ文字なのだろう?という疑問も起こってきます。
この様に、番組の後、余韻が残る問題は、家族の会話にもなりますし、良い問題と私達は考え問題を作っていました。
でも、何故同じ文字なのでしょう? 解った人は教えてください。

「クイズ研の対抗策」への23件のフィードバック

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    >・+゚★高橋 佳奈 or 一條 想來★゚+・さん
    会社経営は大変ですが、目標を大きく頑張ってください。又の訪問、お待ちします。

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    >まんねん♂さん
    勿論、ウルトラクイズを盛り上げてくれたクイズ研の皆さんにはスタッフは感謝していました。東京ドームでも、クイズ研の皆さんの旗が沢山上ると、お祭りの始まりの雰囲気が出て、我々も胸が高まったものです。

  3. SECRET: 0
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    やはりクイズ研究会のみなさんのご活躍は目を見張るものがありました。
    問題の途中で先を読み解答する…13回準決勝はその総本山的要素が随所に散りばめられていて、見るものを引きつけて離さないものでした。
    しかし、全てが上手くいくはずもなく、誤答もあったでしょう。その為に作られた問題が最後まで読まれる事なく廃棄…確かに悲しいですよね。その為に問題が更に多角的見地から練られたのも、挑戦者だけでなく作成者の皆さんのレベルアップも著しいものだったのでしょう。恐らくウルトラの後に出てきたクイズ番組も、その辺を踏まえて解答を手書きにしたりと工夫を凝らしてらっしゃるんでしょう。
    ですけど、研究会の皆さんのご活躍があったからこそ、あそこまで盛り上がった功績は否定できませんよね。

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    まだ補足コメントがないようなので…。
    >上越狂太(仮名)様
    >そして学生はここで全滅し、以後はクイズ未経験者が主体となって行きました
    アーチーズ終了時点では、まだ学生さんは3人(レバノンと準決勝で敗退)残っていますね。
    あと浪人の方がいらっしゃいました(エリーで敗退)。
    タヒチで機内1位の方が落ちてからはほぼクイズ未経験の方々で占められましたね。

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    >マル51さん
    それぞれの○×攻略方が有るでしょうが、我々は裏の裏を掻くような問題作りをしていたので、クイズ研の方も、泥んこに良く飛び込んでいましたね。「キツネと狸の化かし合い」でした。

  6. SECRET: 0
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    >風水で毎日運気アップへ導くシルバーミストの部屋さん
    また、覗いてください。おまちします。

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    >とどさん
    詳しく調べて頂き勉強になりました。漢字検定は色々問題を抱えた団体のようですが、ルールまでは知りませんでした。この疑問はハッキリ断言出来る研究者は少ないような気がします。諸説入り乱れた情報が辞書などには書かれていますね。
    随筆なら、この調査で一本書ける様なテーマのように思います。時間を取らせて有難うございます。

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    クイ研対策のお話、ありがとうございます。
    さて、アヤメとショウブなど参加者・視聴者が「へぇ、そうなんだ」という○×の問題を長年出してきましたが、クイズの猛者たちはどう対処してきたかというと、「問題文の不自然さ」で見極めた様です。
    何故こういった問題を出してきたのか? という時は○が正解だから成立する。もし×であれば「何それ?」となってしまうからだそうです。
    長戸さんの本でも、出題側の立場で考えて、なぜポールが「トゥモロー」を作ったか? なぜ桑田真澄は車のナンバーを「6499」で無四球としたのか? それがひとつの真実であるからと語ってます。
    それだけ、ウルトラクイズが一年かけて厳選した問題を作ってきたことを、挑戦者たちは十分理解した上で、長年にわたって攻略法を編み出し続けたのでしょうね!

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     次に、漢字検定では…ですが、漢字検定では短文の中で下線の漢字を読ませると思うので、たとえば…、
     端午の節供には「菖蒲」を飾る。「」の読み方は?
    みたいな感じかもしれません(短文はもっと区別ができる文章にすると思いますが…)。ついでに、文脈がないと判断がつかない熟語は意外とあって、「銀杏」「市場」「利益」など…。
     ついでにコメント投稿後さらに調べたら、「菖蒲」を「アヤメ」と読むのは「漢名からの誤用」と辞書などに表記されているものもあるとのこと。このような「漢名からの誤用」といわれる熟語はけっこうあるようです。
    例:「カキツバタ」の 「杜若」など。(植物名に多いようです。)
     ということで、なかなか奥深いですね。少し勉強になりました。

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     ご返信コメントを拝読いたしました。いろいろと調べてみましたが…私的見解も入りますが以下のようなことではないでしょうか…(長くなりますがお許しください)。
     まず、文科省で問題にならない件ですが、同省の「常用漢字でのルール」によると、「常用漢字は、固有名詞は対象としたものではない」ことと「過去の作品などでの漢字の使われ方を否定するものではない」とのこと。このことから、「菖蒲」は固有名詞であるし、漢字の読みの歴史が奈良時代以降と長いので、問題視しないのだと思います(義務教育の教科書ではおそらく漢字表記は避けていると思います。ついでに、学術名の和名はルールでカタカナ表記です)。

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    >とうま☆けいさん
    良く調べて頂き有難うございます。
    もう一度ウルトラクイズの件、面白いですが無理のようですね。何故なら、経験者が皆さん年を取ってしまって、あのような無理なスケジュールに付いていけません。といって、全く新しいスタッフで作れるようなものでも無いと思うのです。我々の自惚れではなく、昔と今では価値観が変わってきましたので、あのような作り方を「無駄」と受け付けないのではないでしょうか。これが時代の流れでしょう。

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    >上越狂太(仮名)さん
    その様な事もありましたね。クイズ研は確かに皆さんクイズの強い人でしたが、その様な人だけの番組にならないように、我々も工夫していました。

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    >月舟さん
    意見は自由ですから、何を言われても気になりません。ウルトラの問題は素人っぽい、でも面白ければよいではないですかねえ。だから、番組が続いたと信じています。

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    >とどさん
    詳しく調べて頂き有難うございます。
    漢字検定試験で、「菖蒲」の読み方はどうなのでしょうね。あやめ、しょうぶ、両方書かないと×なのか、どちらでも○なのか、ヘンですよね。
    それ以上に何故このような判然としない漢字が文科省で問題にならなかったのか、ハッキリ示す資料が見つかりませんでした。
    これぞ、知りたい謎なのですが。

  15. SECRET: 0
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    ときおり、楽しく読ませていただいております。
    菖蒲と菖蒲…もとい、しょうぶとあやめが同じ文字を使う件ですが、国語の授業で
    「ときの奈良朝廷が中国で行われていた『端午の節句(節供)』を日本に導入しようとしたときに、中国で「白菖」と書くショウブを、いずれも「菖」の字を用いるところから当時すでに知られていた「菖蒲」と間違えて覚えられたのが始まり」と習った記憶があります。
    ただ、これについてもいわゆる「裏取り」をしていないので、100%正しいという自信はありません。参考になるかわかりませんが、何かの手がかりになれば幸いです。
    自分はいわゆる「涙の(昭和)49年組」のひとりなのですが、今の時代、経費やコンプライアンスなどの複雑な事情を考えると、ウルトラクイズという番組はもう生まれないのかな…と思っています。でも、(自分はもちろん、留さんが)生きているうちにあと1回という願いは、今も持ち続けています。…無理でしょうか?

  16. SECRET: 0
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    「クイ研落とし」の言葉もちらほら聞きますからね。それこそその目的には持って来いの企画を14回で多用してたと思います。中でも絶対落とせそうな企画が「アーチーズ・地獄のクイズ道」です。スタッフとトメさんが先行して、訪問先でクイズを作るという、予習不可能ものでしたから。そして学生はここで全滅し、以後はクイズ未経験者が主体となって行きました、ね(アーチーズ罰ゲームのオチ)。

  17. SECRET: 0
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    クイズ研究会対策はクイズ研究会が作らないような問題を作ることが一番ですね。ひと味違う問題の展開の捻り、みんな同じスタート地点のなぞなぞっぽい問題は作り甲斐もありそうです。
    ある方の本では、当時日本テレビにはレギュラーのクイズ番組がなく、ウルトラの問題は素人っぽいと書かれていましたが、結局その方はいつも大本命といわれながらも、哀れクイズマニアの思考の型から外れたウルトラならではの形式で敗れ去っていったのでありました。

  18. SECRET: 0
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     さらにややこしいお話し。「サトイモ科のショウブ」と「アヤメ」、それらと非常に類似した植物に「ノハナショウブ」があります。この「ノハナショウブ」は大昔には「アヤメ科のアヤメ」と一緒にされ「あやめ」と呼ばれていたようです。
     しかし、江戸時代頃に「アヤメ」=「花あやめ」、「ハナショウブ」=「花しょうぶ」と分けられるようになったようです(花菖蒲の育種で有名な松平左金吾も前述のように分けたようです)。
     なお、現在の学術的な分類では、アヤメ科のアヤメ=アヤメ、アヤメ科のハナショウブ=ハナショウブ、アヤメ科の野生のハナショウブ=ノハナショウブとしっかり分けられているとのこと。
     同一漢字名になった経緯は完全にはわかりませんが、似た植物で混同して混同して…という歴史は、漢字名にも名前にもありそうです。
    (植物関連のホームページを参照させていただきました)

  19. SECRET: 0
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     アヤメとショウブがなぜ同じ漢字なのか…、この疑問については他のサイトでも気になっている人がおられました。
     植物の形状が似ているために区別が難しい「アヤメ」と「ショウブ」。「アヤメ」の語源の一説ですが、奈良時代の朝廷が「端午の節供」に「ショウブ」の漢名を誤って「菖蒲」と名づけ、「端午の節供」に使わせようとしたが、一般の人々は在来の「アヤメ」である「アヤメグサ」を「菖蒲」と呼んでいたため混同したのではないかという説があります。
     ただ、現在の「アヤメ」と「アヤメグサ」は違うそうで、現在の「アヤメ」は最初は「はなあやめ」と呼ばれ、後々「アヤメ」となりました。一方の「アヤメグサ」は、本当は「サトイモ科のショウブ」のことで、現在の「アヤメ」が「アヤメ」となったので、「アヤメグサ」は「ショウブ」となったようです。

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