アメリカ横断ウルトラクイズのクイズ問題は、一味違った視点でクイズ問題を作っていました。
例えば世界的に有名な作曲家や小説家、画家などの問題でも、単純に作品名と作者名を結びつけるような問題は極力避けて、その人物を少し突っ込んで調べ、その中から面白いエピソードを拾い上げて問題にしていました。
例えば、後期印象派の画家で「ひまわり」の作者は誰? という問題がありました。
普通のクイズ番組なら、これも立派な問題として出題される事でしょう。しかし、我々のクイズ会議では「どこが面白いの?」と拒否をされるのが目に見えています。
クイズ問題の責任者だった私は作者がゴッホを問題点にしたいという事が解りましたので、ゴッホについてもう少し突っ込んで調べ、みんなの知らない盲点を探して再提出するように注文を付けました。
やがてクイズ問題作者は
「ゴッホは生前に書いた絵はたった1枚しか売れなかった」
という驚くべき情報を見つけて問題を作ってきました。
第16回のフロリダキーズで、出題された問題です。
問・「生きている間に『赤い葡萄畑』という一枚の絵しか売れなかったオランダの有名な画家は誰?」
答・ファン・ゴッホ
解説
クイズ問題の会議でこの問題を読み上げた時に、「赤い葡萄畑」なんて名画は知らないな、とスタッフは頸をひねりました。
しかし、作者がゴッホと聞くと、みんなの視線が真剣な眼差しに変わったのです。
ゴッホはゴーギャン、セザンヌと並び称される世界の有名画家で、小中学校の美術の時間で必ず習う後期印象派の巨匠です。
代表作と言えば「ひまわり」「医師ガシェの肖像」「自画像」などが、教科書にもあったような記憶が有る事でしょう。
これらの作品名を出してゴッホを答えにする問題だったとすれば、クイズ問題会議で「教科書問題」という簡単な言葉で「没」となってしまうでしょうね。
しかし、あの巨匠の絵が生前には一枚しか売れていなかったという話は興味を惹きます。
ついでに説明するならば、ゴッホは1890年に37歳の若さで早逝しています。
生前に一枚だけ売れたのも、貧乏画家を気の毒に思った友人の姉が400フランで買ってくれた「赤い葡萄畑」だけだったのだそうです。
そのようにゴッホが名を挙げたのは死後1年目に開かれた展示会で油絵8点、素描7点が展示され、絶賛されたのを機に人々の関心が高まったのだそうです。
死後3年目には伝記的な事実が伝わり、絵画の作品以外にゴッホという人物にも人々の興味が集まって来たのです。
没後10年目辺りからセザンヌ、ゴッホらの作品が市場で高騰し始め、画家としての地位も不動のものになってきました。
1934年「炎の人ゴッホ」との題名の伝記小説が出版され、全米でトップセラーになりました。
ゴッホは生前に860点の油絵、150点の水彩画を残し、世界でトップクラスの高価な値段が付けられています。
有名な「医師ガシェの肖像」は90年の価値で$8,250万だと言いますから、一番驚いているのは地下で眠るゴッホ自身でしょうね。
この様な意外性もクイズ問題の魅力なのでした。
面白いエピソードが入った問題もウルトラの特徴で、(そうなんだ)と、感心して見てた事がよくありました。
早とちりを防ぎ、尚且つ面白い。
ウルトラの問題は素晴らしい問題ばかりでした。
問題を褒めて頂くと嬉しいですね。作った皆さんには無理な注文ばかりで、発注役の当時の私は憎まれ役だったような気がしますが、間違いではなかったのが今になって実感しています。
こんにちは。
U/Qには、解答者の盲点を突け!という感じの問題もよくあったような気がします。特に、「~ですが」「~では」系のキーワードで解答者のミスを誘発させるフェイントです。この手の問題でトラップに引っ掛かった解答者に対する「ブー!」は、何故か「ザマミロ、この野郎!引っ掛かりやがって。」「この慌て者め!」「落ち着いて問題を最後まで聞け!」「ホレ言わんこっちゃない!」等にも聞こえる冷酷なものです。ミス回数の累計が多ければ多いほど、出題者冥利に尽きる問題かと思います。
さて、ゴッホ関連の問題でいうなれば、確かに、ただ単に
後期印象派の画家で「ひまわり」の作者は誰?
だけでは、U/Qクオリティどころか、教科書Q、なぞなぞレベルからも程遠いといえます。
U/Qでなくても、クイズ問題たるもの、最低これくらいひねる必要があるでしょう。(笑)
トラップ1つの例題:
本人の自画像や「ひまわり」等で有名な画家/といえばゴッホ。何派の画家?
トラップ2つの例題:
後期印象派の画家で「ひまわり」の作者/といえばゴッホ。彼の生前に売れた唯一の作品は/「赤い葡萄畑」。さて、いくらで売れた?(買ったのは誰?)
解答:いずれも記事の本文参照
ミスした場合に早押し順位が次の解答者に解答権が移動する方式ならば、たとえ押し負けても、自分より早押し順位が上の解答者がトラップに引っ掛かって、良いタイミングでチャンスが回ってくれば(押し負けた解答者にとって)サービス問題ともとれるでしょう。
金額を問うならば、現在の貨幣価値、日本円でいくら?という感じの近似値Qとしても使えそうですね。こうなると計算問題です。
Q極のやつは何と言っても第6回U/Q、敗者復活@成田での超意地悪Qですね。これを知っている解答者ならば警戒するのでは、と。接続詞問題は、それなりにクイズ的コストパフォーマンス?が悪いけれど、その分だけ、出題者と解答者との駆け引きが楽しめるものです。
的確なご意見ですね。クイズマニアの「早とちり」は我々の大敵でしたから、それを防ぐために問題文も工夫を凝らしたものです。その戦いはイタチごっこの様相でそれもウルトラも特徴になっていたようです。
こんにちは。
おっしゃられてみると、たしかに違った角度で、また、挑戦者の意表を突くように、問題を作成されていたなぁと感じます。
ドームの予選、○×クイズでもこんな問題がありました。
「豚に真珠とは、イエス=キリストの残した教えである?」
聖書をまさにバイブルとして愛読されている方には簡単でしょうが、多くの人には、「豚に真珠」と「キリスト」とがリンクしない問題だと思われます。
通常の一問一答はもちろんですが、○×クイズでは、特に、盲点を突くようなユニークな問題が多かった印象があります。
ウルトラのクイズ問題は、単なる知識の披瀝ではなく、面白い情報が入るような問題作りをしていました。それが番組全体のカラーになったのだと思います。
今回の記事の趣旨から大きく離れますが、どうしてもお伝えしたくて書きました。お許しください。
今回の記事の問題の「ゴッホ」に関することなのですが、tsutomu様がご存じであったとしたならば…それほどたいしたことではないのですが…、ちょうど今週末、NHKラジオの英語講座の題材が「ゴッホ」です。リスニングメインの講座ですので、英文内容は初回放送を終えるまで見ませんが、深く「予習」が必要な番組で…。たまたまだとすると、タイミングとしてはすごいなぁ(偶然にしても…)!と思いました。問題の解説を「予習」の参考にさせていただきます。
かなり逸脱した内容で申し訳ございません。
貴重な情報を有難うございました。あなたは本当に勉強がお好きなのですね。これからも頑張って知識を増やしてください。
2年ぐらい前だと思いましたが、とある番組で「赤い葡萄畑」を問う問題を見た事がありましたが、既にウルトラの時代から出題されていたんですね。
あとゴッホ繋がりですと14回のニューヨークで「医師ガシェの肖像」が答えの問題が出題されていましたね。
ニューヨークで敗れたTさんが何回も噛みながら答えていたので単語として耳に残った記憶があります。
色々な知識がクイズと共に記憶に残る、これこそクイズの楽しみなのでしょうね。あなたもクイズを十分に楽しまれているようで、真のクイズ・ファンだと思います。