理想のクイズ会場を求めて、、、

メリカ横断ウルトラクイズのロケハンでは、最初から理想の目的地を決めて、探した場所もありました。
今日はその様な中の一つのエピソードを書いて見たいと思います。
当時、アメリカの歴史的な場所をあれこれ調査していた時に、面白い情報が入ってきました。
それは、アメリカの郵便に関するお話でした。

郵便馬車


本での郵便の始まりは飛脚制度だった事は良く知られています。
時代劇をの中には、時々登場するので日本では常識的な知識でした。
ウルトラクイズでも飛脚に関する問題は何回か出されていたと思います。

れはさておき、アメリカの郵便制度の初期の頃、アメリカ大陸を走り回った、郵便馬車があったのです。
当時、入手した資料によると、1860年のアメリカにはポニー・エクスプレスという名の速達の郵便サービスがあったのです。
名前の通りに受け取ればポニーですから、小馬の郵便馬車だったのかも知れません。

の速達馬車は、東海岸のミズリー州から西海岸のカリフォルニア州まで、2000マイル(約3220Km)強を、7日と7時間で走り抜けるのが通常の仕事だったそうです。
その途中には10マイルから20マイル間隔で150個所の中継点(駅)があって、新たな馬に乗り換えていたと資料には書かれていました。
当時の新聞には、この馬の乗り手を求める、求人広告がありました。
その文章は、実に興味深いものでした。

「求む。若くて痩せた男、18歳未満、気持ち良く毎日死の危険をおかせる、優秀な馬乗り野郎を希望。特に孤児は大歓迎! 週給25ドル。希望者はセントラル陸上特急便まで連絡されたし」
という広告文です。
恐らく、馬に乗って走り回る冒険好きな若者を求めていたのでしょうね。
危険も付き物で、それは孤児を大歓迎という部分で推察されます。
今ならバイクで走り回るような、そんな命知らずを求めていたのでしょう。

Pony_Express


々はこの情報をウルトラクイズの中で紹介したかったので、中継点になった駅を探しました。
多分、荒野の中のゴーストタウンに古びた建物が、ポツンと残されていると想像したのです。
その様な場所に、当時使用されていた郵便馬車が飾られていたら、最高のロケーションです。
このような場所を勝手に想像しながら、西部劇の舞台になった砂漠地帯を探しましたが、その様な情報は残念ながら掴めませんでした。

ルトラクイズのロケハンでは、この様な頼りない情報でも、可能性を求めて探していたのですが、結局は見つからず、このネタはお蔵入りとなってしまったのでした。

今インターネットで「ポニーエクスプレス」とワードを入れて調べてみれば、一発で色々な事が解ります。
馬車ではなくて馬に乗った配達人である事や、銅像のある場所、かつては厩舎だったところもすぐに調べがつきますが、当時は調査にも限界がありました。

クイズの定番、漢字の読み方にも一捻り

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、クイズ問題が番組の重要な要素でした。
クイズ問題を作る場合、他のクイズ番組を見ても解りますが、定番の問題形式があります。
例えば、漢字の読み方をクイズ問題にするという方法が、それの一つと言えるでしょうね。
よくある問題ですが、次のような問題です。

・河の豚と書けば河豚(ふぐ)。では、海の豚は何?
・海豚(イルカ)

いるか

ちょっとおもしろそうですが、小学生が漢字を覚える時に、友達同士で出し合って遊ぶクラスのクイズ問題でしょうね。
この様な問題はウルトラクイズのクイズ問題会議で「教科書問題」との一言で却下されそうです。
もし、この程度の問題が採用されてしまうと、

海に星と書いたら?
海に鼠と書いたら?
海に像と書いたら?
海に豹と書いたら?

漢字の辞書を広げれば、際限なく問題が浮かんできます。
これでは問題作りの作家の仕事とは言えないでしょうね。
クイズ問題というのは、作家の工夫が加わってこそ、視聴者の興味を引くわけで、一問毎に高い原稿料が支払われている訳ですから当然と言えます。
因みに、上記のクイズの正解を出しておきましょう。

海星(ひとで) 海鼠(なまこ) 海象(せいうち) 海豹(あざらし
と言ったところが正解になります。

同じような漢字の読み方でも、
・河の馬と河の鹿、日本にいるのはどっち?
というような問題ならば、早押し問題として採用される可能性は高いと思います。

何故なら、早押しの短い瞬間に2つの事を考え、答えなければならないからです。
河の馬は何だっけ? そうだ、河馬(かば)という事が解らないと早押しボタンは押せません。
河の鹿は? ええと、何と読むのだ? ウーンと答えが出ない事もあります。
河鹿(かじか)と分かった時に、河馬はアフリカ、河鹿は日本の川に生息する、という判定をし、ボタンを押すのが手順でしょう。
それよりも、クイズ慣れしている人なら、河馬が解った段階で、河馬は日本に居ないから、逆の「鹿」とヤマ感で答える事でしょう。
いずれにしても、考える事が頭の中で幾つかある複雑性がクイズ問題として、面白いとなるようです。

・鹿
河鹿(かじか)は日本の清流の川に生息し、カエルの仲間です。鳴き声が鹿に似ているところから、河鹿と書かれ、この名前が付きました。

また、同類の問題で面白くするならば、この様な問題も出来ます。
・漢字の問題です。河の豚、河の鹿、河の馬、と書く生き物で、足が無いのは、豚、鹿、馬の内どれ?

・豚
河豚(ふぐ)は魚ですから足が有りません。だけど、最後に念を押すように聞いた「豚、鹿、馬」という言葉で勘違い、或は判断が混乱する可能性があって、誤答を期待したひっかけ問題になります。平坦な戦いが続いた時には、笑える問題になるでしょう。
クイズの変化球って所です。

変化球

泥んこ○×クイズ最初の問題は?

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、名物になった恒例のクイズ形式が幾つかありました。
その代表はグァムの浜辺で名物になっていた「○×泥んこクイズでしょうね。

泥んこクイズ4

このブログにコメントを下さる方の中にも、「○×泥んこクイズに挑戦したかった」という方が沢山いました。
ウルトラクイズと言えば、泥んこクイズのイメージが思い浮かぶ方も、多分多いのではないでしょうか。
それだけ強烈なインパクトがあったクイズ形式でしたが、この形式が最初に行われたのは第4回の事でした。
この時の挑戦者は40名でした。
グアム上陸の最初の夜、挑戦者が眠りについた夜中の事、我々スタッフは密かにホテル前の浜辺に集合しました。

タッフ全員参加で、浜辺に黙々と穴を掘りだしたのです。
それも2つの大きな長方形の穴です。
勿論を選んだ挑戦者が飛び込む穴と、×を選んだ人用の2つの穴です。
穴掘りが終わると、その穴に水を注入し、次の作業はグアムの粘り強い土を穴に放り込んだのです。
その後は全員が泥んこプールに入って、足を使って土をかき混ぜる作業です。

このような作業を、夜中にスタッフ全員が黙々とこなしていた状況を思い起こしてください。
滑稽であり、不気味な光景といって良いでしょう。
作業をしていた我々も、まさかこの穴掘り作業が、あのような名物クイズになるなんて夢にも思っていませんでした。
それ以上に、もし失敗したら「誰だ、あんな形式を考えたのは?」と構成スタッフに不満が飛んでくる方が心配でした。

翌日、いよいよ「○×泥んこクイズ」が始まったのです。
挑戦者も、自分たちに一体どのような結果が待っているのかも解らず、○×のパネルに飛び込んで行ったのでした。
この伝統ある泥んこクイズの最初の問題は…。

・ところてんは 乾燥すると寒天になる。○か×か?

泥んこクイズ2

解説・テングサなど、寒天質を含む海藻を煮て溶かし、箱に流して冷やし固めた食品がところてん(心太)。その、ところてんを寒ざらしにしたものが寒天。そもそも「寒天」の由来を調べると、寒ざらしにしたところてんで「寒天」と呼ばれるようになったそうです。

最初の泥んこプールは、スタッフ全員の協力で作りましたが、その後は現地の人達の協力によって作るようになりました。
何故か? 本番前夜のスタッフには、穴掘り作業以上にやる事が山ほどあって、手が回らないのが現実でした。

クイズは時代の鏡

メリカ横断ウルトラ・クイズでは、毎年沢山のクイズ問題を作りました。
クイズ問題の重要な要素の一つは、何故その問題が今の問題かという事です。
所謂タイムリー性ですね。
その意味では、毎年時の人と呼ばれる有名人が生まれます。
前人未踏の偉業を達成した人、芸能やスポーツ界で大活躍をした人などがその範疇に入りますね。

の人をテーマに作られたクイズ問題は、クイズの選考会議を通過する確率が高いのは言うまでも有りません。
但し、答えを時の人の名前にするよりは、もっと別の角度でクイズ問題を作った方が面白くなります。
例えば王選手が756号のホームランを打った時でも、クイズ問題は「王選手の血液型はO型である」
○か×か、という問題でした。

王貞治756号ホームラン

これは○×問題の典型的な面白い問題として、このブログで以前にも書いた事がありました。

このように時の人の周囲を詳しく調べると、クイズ問題になるような材料が沢山眠っています。
クイズ問題の制作者には、いつもこの様な注文を出し、問題を作ってもらっていました。

ころでウルトラ・クイズが現在あったならば、周囲を見渡すとクイズ問題の材料が沢山転がっている事が分かります。
例えば、東京五輪の招致に活躍した人達をテーマにしても、特集が出来るくらい問題が浮かんできます。
あの頃は、毎日ブエノスアイレスからニュースが送られてきて、その動きを日本中が固唾を飲んで見守ったわけですから、オリンピック関連の知識も興味も盛り上がっていました。
また、プロ野球日本一に輝いた楽天球団を始め田中マー君なども、問題の宝庫になりそうですね。
マー君の連勝記録、その前の記録保持者は誰? などいろんな問題が浮かんできます。

にすごいのはワールドシリーズで、日本人として初めて胴上げ投手になった上原浩治投手ではないでしょうか。
彼のプロ野球選手としての足跡の中から、沢山のクイズ問題が浮かび上がってきます。
怪我に悩まされたり、苦労人だけに山あり、谷ありの野球人生だった事も、クイズのネタになりそうです。

・上原浩治投手が最初に所属したメジャー・チームはどこ?
・上原投手が得意とする「スプリット」は、別名何と呼ばれている球種?
などが問題になりそうです。

・ボルティモア・オリオールズ。
・フォークボール。

ウルトラ・クイズの問題集を見ると、何となくあの時代の背景が浮かんでくるのは、クイズ問題の中に、この様な要素が含まれていたからではないでしょうか。
クイズは時代の鏡 と言っても良いような気がします。

鏡

アメリカ映画が情報源だった時代

メリカ横断ウルトラ・クイズが始まった時代には、現代ほどアメリカの情報が入って来ていません。
だから我々スタッフがアメリカを知る一番の手段はアメリカ映画だったのです。
ですから、クイズ地の選定にしても映画でお馴染の場所が候補に上がって来ることが多かったのです。
それが顕著に表れていたのは第3回だったように思います。
例えばハワイでのクイズ会場が西部劇の巨匠、ジョン・フォード監督の持ち船「ウインド・ジャーマー号」でした。

j-ford

この大型クルーザーにはジョン・ウエインも時々招かれて乗ったというお話でした。
次のロス・アンジェルスでは、ゲストクイズが行われ、今は亡き大スターが天国から3人もやってきました。
ジョン・ウエイン、マリリン・モンロー、エルビス・プレスリーのそっくりさん達でした。

グランドキャニオンは西部劇ではお馴染の舞台で、ウエスタン・ファンをワクワクさせる風景でした。

グランドキャニオン

今にもその辺から幌馬車に乗ったカウボーイが現れそうな雰囲気でした。
更にその次のクイズ会場はアリゾナ州ツーソンで、ここはサボテンの砂漠の中にある映画村です。
ジョン・ウエインもこの映画村で何本も映画を撮った場所との説明がありました。

saguaro-national-park

次に訪れたのはラテンムードが漂うサンアントニオです。
ここは何回も映画化されている名作「アラモの砦」がクイズ会場でした。

アラモ砦

日本で言えば「川中島古戦場」か「白虎隊の飯盛山」みたいな場所です。
会津の白虎隊はこの飯盛山で若い隊員達が切腹して果てましたが、このアラモ砦でも、勇敢なテキサス兵がメキシコ軍の総攻撃に遇い、13日間も砦を守り、最後は玉砕したという歴史が有ります。

に進んでマイアミでは、あの時代のヒット映画「真夜中のカウボーイ」の主役の2人が目指した、夢の地マイアミというナレーションでクイズ会場を紹介しています。

Miami

当時は情報の収集力がまだお粗末だった事もありますが、我々スタッフが知っていたアメリカは、映画の中で見た憧れの地という意識が強かったのでしょうね。
だから結果的にアイディア会議でも、その様な映画の知識が中心になって、クイズの候補地が上がってきたのだと思います。
でも、今も昔もアメリカ映画は楽しい作品が多かったのも事実ですね。
映画を発明したエジソンもアメリカ人ですから、まさに映画の本場です。

Hollywood