最近入院していました

メリカ横断ウルトラクイズのブログは、毎週月、水、金の3日更新していました。
一日置きに思い出を書くとなると、結構大変な作業です。
ちょっと怠けると直ぐに次の更新日がやって来るので、旅行に出かけたりする様な場合は、何本か書き溜めをしなければなりません。
病気で入院するのも同じような気分で、書き溜めていかなければ週に3本のノルマは達成できません。
実は2月3日に、入院する事が決まり、その前に準備をしていました。
事前の予定では一週間位と言われていましたので、その分に加えて5話ばかり書き溜て、のんびり入院をしました。
いよいよとなれば病室にパソコンを持ち込んで、書けば良いという楽観的な気持ちでした。
しかし、世の中は中々思うように進まないという現実に直面してしまったのです。
実は私の入った病室ではインターネットが出来ないという事が解ったのです。
更に入院のスケジュールに大幅な誤算が発生したのです。
予定では、最初の2日が検査、3日目に手術、その後半日ほどICUで経過を見て、3日後には退院との流れでした。
私の手術は脳につながる頸動脈が狭くなっているので、これを拡げるというものでした。
昔で言えば大変な状況ですが、現在は狭くなっている部分にステントという人工的な部品を差し込むだけで、完了するというものだそうです。
そして、手術は成功したものの、その後の経過が思わしくなく、ICUに何と5日間も釘付けになってしまったのです。
しかも、その間は手足をベッドに固定され、立ち上がる事も許されない状況でした。

レビ番組の中では時々見るICUですが、こんな経験は滅多に出来ないでしょう。
この際、しっかり観察しようと思うのですが、食事時以外はベッドに半身を起す事も出来ません。
本も読めない状況ですから、先生が気の毒に思い、テレビだけは見られるようにセットしてくださいました。
私の入ったICUは大学病院のフロアにありましたが、ベッド数は10床ほどで、日中は医師が4~5人常駐していました。
看護師は出入りが多いので何人いたのか解りませんが、私の担当者は24時間いつでもボタン一つで、直ぐに駆けつけてくれます。
私の身体にはコードで沢山の機材と連結され、モニター画面には記録が映し出されていました。
時々その数値が記録されるのか、担当医師に報告されているのが聞こえてきます。
私には一体どのような問題が発生しているのだろうか?
どうやら、血圧が安定しない。腎臓の数値に不安が発生している。呼吸の方も点検しているようだ。
夜中に
「呼吸していません」
という声が聞こえてきました。
そんな馬鹿な! と私は大きく深呼吸をしたところ、
「ああ、大丈夫のようです。戻りました」との反応。
呼吸が止まれば、常識的には死んでしまうのに、これは拙い状況のように見受けられます。

ろいろ不安は広がりますが、医学知識がある訳ではないし、もうお任せするしか無い、と居直った気分になっていました。
5日経ってICUを出る時、担当医師は
「順調に回復しました。ご安心ください」と太鼓判を押してくれました。
それを素直に信じて、ICUから解放されましたが、この数日間は貴重な体験をしてきました。
テレビドラマのような緊迫した場面も何度か有り、医師たちの過酷な仕事ぶりも生の目で見ました。
私が放送作家の現役時代なら「ICUの24時間密着取材!」のような企画を提出したでしょう。
すでに何年も前からその様な番組は有ったような気がしますが、医師の立場、看護師の立場、患者の立場で描き方は変わってきますし、その周囲でうろたえる家族の姿など、ドラマになりそうな材料が沢山詰まっていました。

話が長くなってしまいましたが、その様な出来事が有りましたので、皆様から頂いたコメントに直ぐに反応出来ない状態だったのです。お許しください。
実はこの大学病院もウルトラクイズが縁で、お世話になっているのです。
ロケの同行ドクターがこの病院のA先生だった関係で、以来外来に通うようになり20数年、沢山の名医と知り合うようになったのです。
縁は異なもの、と言いますが人と人の縁、大事にしたいものですね。
A先生、有難うございます。今回も無事に退院できました。

縁結び

クイズ番組の生命線

メリカ横断ウルトラクイズで、私は構成作家、クイズ問題の責任者として17年間関わってきました。
クイズ番組で、答が誤りだった、などという事は許されません。
この様な事が一度でも有ったら、視聴者の信頼を築くことが出来ないのは当然です。
だからこそ、私は問題のチェックという事に神経を配り、そこまでやるのか、と担当者が悲鳴を上げるほど慎重に行いました。
具体的に言えば、担当者を変えて3重の調査を実行していました。
だから問題用紙の原本には、必ず3人の担当者の印が押されていて、責任の所在をはっきりさせていました。

れでも抜け落ちる事が想像されるので、或る取り決めをしていました。
例えば、漫画に関する問題では、作者の制作事務所のスタッフの確認では十分とはみとめません。
作者が生存している場合は「ご本人の確認これが無ければOKを出しませんでした。
この様にしなければ、作者自身が問題は誤り、と言い出したら収拾が付かないからです。

また、医学問題のように意見の分かれるものは、極力問題にしないようにしていました。
1人のお医者さんの意見で正解、とするには危険だからです。
何人かの裏付けをとっても、間違う可能性があるからです。
その様に慎重になったのには、理由がありました。

確か2回か、3回、初期の頃の事です。
動物の問題が出され、後日挑戦者から強烈な抗議が有ったのです。
勿論、我々は間違いを認めず、抗議だけは受け付けました。
その後、動物の専門家何人かにお集まりを戴き、問題を討議したところ全く「問題なし」との結論を得ました。
しかし、抗議者は「自分はその分野の専門家を目指す学生だ」と称して、専門家も驚く屁理屈とも思える事を繰り返し、後に引かないのです。

の様になると、我々の手には負えないので、日本テレビの法務部にバトンタッチしました。
法務部とは、法律に詳しい専門社員の属する部署で、訴訟問題や裁判になるような事案を担当するセクションです。
その後、法務部から当人は慰謝料の請求している、又は次回の後楽園を通過させる事、このどちらかで手を打とうと申し込んできたそうです。
どちらもキッパリはねつけたのは当然です。
慰謝料を幾ら要求したのかは聞いていません。
でも次回の後楽園無条件通過などは「問題を事前に教えろ」と言っている訳で、その様な悪質な要求は門前払いが当然です。
訴訟問題には発展はしなかったので、諦めたのでしょうね。
ただ、テレビ番組には、この様な悪質なクレーマーが出現する土壌があるのかも知れません。
ウルトラクイズは、初期の頃にこうした悪質なクレーマーの洗礼を受けているので、問題担当の私は神経過敏になっていた訳です。

からと言って、誤りが絶対に無かったと断言はいたしません。
人間のする事ですから、完璧と思っていても抜け穴は有るかも知れません。
でも、我々は完璧を理想に向かって努力をしていたという事を、裏話 としてご紹介しました。

i_believe_i_can_fly

ツキに見放された気の毒な敗者

メリカ横断ウルトラクイズの挑戦者は、17回の内チャンピオンになった17名以外は、どこかで敗者の汚名を着せられています。
一番早い人は東京ドームの○×問題で敗者になっていますが、あの難関を通過しても、次々と戦いの場が設けられ、知力、体力、時の運を賭けて、そのどこかで敗者になる運命が待ち受けています。
その敗者には例外なく罰ゲームというおまけ付き。
この番組は、敗者が主役ウルトラクイズですから、我々も知恵を絞り、主役が引き立つような罰をあれこれ考えました。
その中でも、特にツキに見放された敗者は誰か考えたところ、思いつくのは第8回で、グアムの敗者になった男性です。
彼こそツキに見放され、罰ゲームに見込まれて散々な体験をさせられています。

アムでは○×問題で、25人がハワイ行きの切符を手にしました。
通常ならば、これでハワイまでは安心して旅の気分を楽しめるところですが、そうは問屋がおろしません。
この夜は満点の星を眺め、波の音を楽しみながら浜辺で大宴会が開かれたのです。
飲めや歌えや、フリードリンクは飲み放題。
トロピカルドリンクで、良い気分になった挑戦者がコテージに戻り、ベッドに入ったのが午前2時過ぎでした。
1日の疲れで、ぐっすり寝込んだ午前4時、彼らの寝入りばなを襲って、早押しクイズをやろうという訳です。

題して「時差ボケ調整、暁の奇襲作戦、敗者たらいまわしクイズ」というものです。
ルールは簡単、2人1組で寝ている部屋を急襲し、寝ぼけマナコの挑戦者を起こして早押しクイズで対戦させます。
勝てばそのままベッドで眠りに付く事が出来ますが、負けると大変。
荷物をまとめて、次の部屋へ移動です。そして、寝ている2人を起こして3人で早押しクイズを行います。敗れた1人が又次の部屋へ、と次々と敗者がたらいまわしにされ、25人の中で最後に敗れた1人が敗者に決定というものでした。
つまり、夜中じゅうグルグルクイズを行い、生贄を1人だけ選ぶというものでした。

奇襲クイズ

奇襲クイズ2

「暁の奇襲作戦」で選ばれた敗者さんは、負けた後でも、まだ夢見心地で状況を把握していない様子でした。
そこで気の毒な彼を慰めてあげようと、グアムで最上級の食材を使った夕食会が開かれたのです。
会場は何とグアムの墓地。
料理はファニヒの姿煮というスペシャル・メニュー。
周囲が真っ暗な墓地で、レストランから届いたファニヒを闇鍋状態で食べさせられた敗者さん、「美味しい、美味しいと食べていたその時です。
突然周囲に照明の電気が煌々と点きました。
と、同時に皿の上のファニヒの姿煮が目に飛び込んだのです。

アムの名物料理、ファニヒとは日本語の「大コウモリ」だったのです。
ギャー!と叫んでもあとの祭り。
すでに大半のお肉は彼の胃の中に収まっていたのでした。
敗者が主役の番組だけに、放送後彼へのファンレターが多数舞い込みました。

fanihi

スタジオ・パートの思い出

メリカ横断ウルトラクイズは、クイズ・サバイバルをしながらアメリカ各地を旅をする、これが基本路線でした。
しかし、番組としては収録されたVTRを見ながら、スタジオで高島忠夫さん石川牧子アナの掛け合いで、番組を盛り上げる役目をしていました。

スタジオ

今回は、読者の方から、スタジオ・パートのご質問を戴き、エピソードがあれば、それも紹介して欲しいとのメッセージを戴きましたので、お答えしたいと思います。

ず、ご質問でスタジオ・パートの台本は別の構成作家が担当していたのか、とのご質問なのでお答えします。
番組のエンドロールには、構成として私の他、数人の放送作家の名前が出ておりましたが、スタジオ・パートもロケの部分も我々が全部書いて台本を作り、それに沿って進行していました。但し、ロケには台本など有りません。
でも、ナレーションはすべて、台本に沿って録音されていますので、アドリブのナレーションというものは有りませんでした。
その台本は名前の出ていた放送作家が手分けして書いていました。

て、皆さんの興味は高島さんと石川アナの絶妙な会話にあったようです。
あの場面は台本通りですか、或はアドリブですか?とのご質問にお答えします。
石川アナはベテランのアナウンサーですから、普段はアドリブもお得意です。
しかし、高島さんは元々映画の大スターですから、台本を大切にする習慣が身に沁み込んでいて、すべて台本の通りにおしゃべりをしていたのです。
それも、大変几帳面な方なので、一字一句、間違いなくお話したいという希望でした。

のため、マネージャーの女性が大きな模造紙にカンニング・ペーパーを書き、カメラの横でそれを掲げて収録していたのです。
高島さんはベテランのスターだけに、カンペを見ながらも、その様な事を感じさせない明るい演技で、アドリブのようにおしゃべりをしていたのです。
石川アナもその様な状況を楽しみながら、明るい雰囲気を出していました。
それが結果的に、明るいウルトラクイズのイメージを盛り上げてくれたのだと思います。

に石川アナは、ウルトラが大のお気に入りで、第7回には進んでロケに参加して、若いスタッフに混ざって荷物運びや、ロケの後片付けなどを、積極的にお手伝いしていました。
あの頃を思い出すと、画面に出る人と、裏方で作る人が一丸となって作業をする。
その様な熱気が視聴者の皆さんに伝わる、それがウルトラ・クイズだったような気がします。

ピンチをチャンスに

メリカ横断ウルトラクイズでは、ロケがピンチに陥った事が何度かありました。
中でも、我々ロケ隊にとって大ピンチは第16回のグアムでした。
この時は、我々がグアムに向かう前日に台風15号がグアムを直撃、大暴れして去ったばかりだったのです。
グアムの空港では軽飛行機が逆さまに倒されたり、空港の屋根が吹き飛ばされるなど、壊滅状態になっていました。

んな事とはつゆ知らず、我々は機内400問のペーパークイズをやり採点も終わってホッとした時、機長からとんでもない事が告げられたのです。
「グアムの空港は大騒ぎになっている。何時ものようにブーブー・ゲートのような呑気な撮影には協力できない」との知らせです。

ブーブーゲート

「さあ、どうする?対策を考えてください」
と、番組構成者の私に突然の仕事が発注されました。

ンチをチャンスに変える仕事、これが構成者としての務めです。
直ぐさま原稿を書き上げて、司会の福澤アナに手渡しました。その内容は?
「今、スタッフ会議で、重要な事が決定しました。良く聞いてください」
このアナウンスで、挑戦者は真剣な眼差しで、福澤アナを見つめます。
シーンと静まり返った中、福澤アナの口から次のような言葉が発せられました。

「皆さん、ウルトラクイズは第16回目にして、全員がグアムの地に上陸出来る事になりました」
ウォーと喜ぶ挑戦者達。
番組的には、機内の盛り上げの場面が一つできました。

だが、現実はその様に喜んでいる場合では無かったのです。
まだ、豪雨が残っていて、若しかすると着陸出来ない事になる、という情報です。
スタッフ全員が緊張する事約1時間。
機長の素晴らしい技術が発揮され、飛行機は何とかグアムの地に着陸しました。

内の窓から空港を見ると、確かに呑気なゲームにも似たブーブー・ゲートの撮影などやっていられる状況では有りません。
我々は全員が入国審査を受けてバスに乗り、ホテルに向かいました。
挑戦者達もこれで、全員がグアムに1泊は出来そうだ、と期待を持ったことでしょう。
しかし、そんなに甘くないのがウルトラクイズです。

ブーブー・ゲートが無くなった代わりに、そのお友達のブーブー・ステップという装置が登場しました。
これがバスの降り口にセットされ、機内ペーパーテストの合否を判定をする事になったのです。
折角、ホテルの目の前までやって来たのに、バスを降りる事なく空港へUターンしなければならない15人が発表されたのです。
人権を無視したこの所業! 何と非情な番組なのでしょう。
でも、それをテレビで見て喜ぶ視聴者の皆さんがいる限り、このような落とし穴を掘り続けなければなりません。
番組の犠牲者は挑戦者であり、同時に彼らこそ盛り上げるための最大の功労者でした。
功労者の皆さんにカンパーイ!

乾杯