動物の生態は面白い

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題でしばしば取り上げられた分野に動物という分類が有りました。

犬、猫をはじめ動物大好き人間は多いので、動物の問題は視聴者にとっても興味の持てる題材です。

最近ではペット愛好家も多く、ペット関連のニュースが度々取り上げられていますが、クイズ問題にするには知って得する面白い情報がなければ価値が有りません。

クイズ問題作家も動物に関する一般常識を超えた問題を考えなければ採用とはなりません。

誤った一般常識を正す、というのも問題の視点としては良いと思います。

そんな中で忘れられない動物の生態に関する傑作問題があったのを思い出しました。

クイズ問題の作成者は、自分で感じた疑問を調べて問題にしたのだと思います。

クイズ問題会議で問題が紹介された時に、参加者全体が「ウーン?」と考え込み「即採用!」と決まった問題でした。

第8回の後楽園球場で出題された○×問題でした。

・カメレオンは目隠しをされると、身体の色を変えられない。

答・×

解説  カメレオンは外敵から自分を守るために、周囲の環境に合わせて自分の身体の色を変える珍しい爬虫類です。

この辺りは学校で習った知識として誰でもが知っている常識の範疇でしょうね。

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でも、問題を聞いた瞬間に、普通は2つの考え方が頭の中を駆け巡るはずです。

①は自分の目で周囲を見て、脳が反応して色が変わるのだろうと考えるでしょう。

②は視神経から脳へではなく、身体全体が周囲の状況を脳へ知らせ色が変化するのかも知れないと疑って考えます。

正解は専門家に尋ねたところ、カメレオンの身体の色は光、温度、湿度など周囲の環境に合わせて変わるので、目隠しされて周囲が見えなくても色は変わるとの事でした。

という事は、例えば近視、遠視、白内障など目に障害のあるカメレオン(そんなの居る筈ない!)でも、外敵から身を守る事が出来るのですね。

この様な珍問は作者自身が自分で疑問に思った事から生まれており、それが我々ウルトラクイズの特徴でもありました。

知って楽しい語源の話

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題には良く語源の問題がありました。

語源には必ず理由が在る訳で、それが昔の人々の生活習慣などに由来しており、知って得する楽しい話題になるので、時々クイズ問題に組み込ませていました。

第12回のパシフィカで次のような問題が出されています。

春の七草の一つ。実の形が三味線のバチに似ているのでこの名が付いたのは何?

答・ペンペン草

解説  先ずは春の七草を知らないと答は出てきません。

春の七草は、せり、なずな、御形、はこべら、仏の座、すずな、すずしろ、の七種類の草ですが、良く知られているのは「すずな」が蕪の事、「すずしろ」が大根の別名ですが、あとは何となく不明という人が多いと思います。

昔の子供たちは、小川の畔や道端に生えている草を年長者に教えてもらいながら、名前と実物を覚えたものですが、現代ではこの様な草が自生している場所が減少しています。

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答は「なずな」で、これは別名がペンペン草と呼ばれ、何処の空き地でも簡単に見られる雑草でした。

その実が三味線のバチに似ているところから、三味線の音に引掛けてペンペン草と呼ばれ出したのです。

粋な三味線と、何処にでもある雑草、この組み合わせが何となく江戸時代の庶民の暮らしを思い浮かべることが出来、言葉の由来は懐かしさを感じさせます。

 

同じ意味の諺は多い

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題で日本の諺に関する問題は多く出題されていました。

クイズは知識を競うゲームですから、諺を理解して数多く知っている人が有利になります。

それも単に意味を理解するというよりは、問題として多少の面白さがあった方が採用され易いので、作者の皆さんは工夫を凝らさなければなりません。

諺辞典を見ると「同義語」という項目があって、クイズ研究会の皆さんは多分その辺を勉強していたのではないでしょうか?

同義語を求める問題で次のような設問が有りました。

第9回のハワイで出題されています。

「二兎を追うものは一兎も得ず」と同じ意味の諺。2種類の昆虫で言うと何?

答・虻蜂とらず

解説  意味は同じですが、「兎」という動物に比較して、昆虫を例に出したところが作者の工夫でしたね。

欲を出して同時に2つの物事をやり遂げようとすると、2つとも成功しないのだよ、という先人の教えですね。

こうした諺は親や教師、先輩に口で教えられて知識となるのですが、これも時代によって変化します。

今ではマルチ人間が重宝される時代なので、一つの事どころか2つも3つも同時に抱えて、それを見事にこなす人が出来る人間として評価されています。

逆に一つの事を一生懸命にやっても、それしか出来ない単細胞というレッテルを張られてしまうかも知れません。

その意味では諺は時代によって変化する、これをしっかり認識しないと「恥」を掻くような結果になってしまいます。

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お年寄りが子供や孫に良かれと思って教える事も、時代で変化するので、古い諺など持ち出さないのがお利口のようですよ。

「古いなあ、爺ちゃん」と言われないように転ばぬ先の杖ですね。老婆心です。ハイ!

問題文にヒントが入る場合

アメリカ横断ウルトラクイズの問題を考えていると、着眼点は良いのですが、ストレートにクイズ問題に仕上げても正解が得られそうも無いという難問が時々登場します。

その様な場合は、ヒントとなる言葉を問題文の中に含ませる事でカバーするという手法を取っていました。

例えば世界の火薬庫ともいわれる中東のパレスチナ。

有史以前の昔から、この地は戦争のメッカと言われるくらい、何時でも人々が戦い、血で血を洗うような戦争が行われていたという歴史が有ります。

現在でも、イスラム国を巡るニュースが毎日のようにテレビで報道されていますね。

このパレスチナで生まれた或るものが、医療の現場で欠かせない品物として世界中で流通しているという情報が上がってきました。

医療の現場で欠かせないと言えば、手術の道具、薬の名前などが思い浮かびますが、その様な設問で正解が出る筈はないという意見が多数を占めました。

でも、戦争の本場で医療品が生まれたという情報は捨てがたいので、ヒントを含ませた設問に仕上げ採用されたのです。

第7回のデスバレーで出された問題です。

・パレスチナのガサの町で作られたところから、名の付いたという柔らかな布は何?

答・ガーゼ

解説  柔らかな布でガサの町、答えを教えてしまっているようなヒントですね。

ガーゼと言えば医療現場の包帯などに欠かせない布です。といって最初から戦場で包帯用に生まれた布という訳では有りません。

その昔、パレスチナのガザ地区で細い木綿糸で粗く織った布が使われていて、これがヨーロッパに伝わった時に、吸収力が強いのでドイツの医療現場で使われ出したのだそうです。

明治時代に日本の医学は主にドイツから伝えられていましたが、その時にガーゼも同時に入って来たようです。

生まれたのガザ地区なので、ガーゼと名が付いたと伝えられています。

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パレスチナはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地で、それらが極めて近い場所に接近しており、宗教的にも意義の深い場所なのです。

ガーゼと言えば白衣の天使が、戦場で傷ついた兵士を看護している姿が想像出来ますが、それがパレスチナで生まれたというのも雑学として面白いと思い、問題となった裏話でした。

伝統文化の意味を知る

アメリカ横断ウルトラ・クイズのクイズ問題を作る立場で言うと、クイズは知識の競い合いですから、森羅万象の知識をどこまで理解しているかを試すのが基本です。

例えば日本の伝統文化という括りがありますが、衣食住にそれぞれ伝統的な基本的な知識が付いて回ります。

とはいっても、学校で習った知識の他、親や先輩、本で読んだりテレビで見たり、知識の吸収の場は人によって千差万別なのは言うまでもありません。

例えば新しい言葉に接した場合、何にでも興味を持って「その正しい意味は?」と尋ねる様なクセを付けると、それだけで知識が増えるという事もありますね。

天才発明家のエジソンは、子供の頃に疑問に思った事は周囲の大人たちに「何でそうなるの?」と何でも質問して、知識を吸収したという伝説が残されています。

クイズの場合も、日頃から疑問に思った事柄や、言葉などを直ぐに調べたり、年長者に聞いたりして自分の知識にするという人が強くなるようです。

クイズ問題を作る作家の皆さんにも、この様なクセを付けて問題を作るようにお願いしていました。

そんな日頃生活していて疑問に感じた言葉から作られた問題が第8回のグアムで出題されています。

日本料理で「お通し」と言えば前菜。では「お作り」と言ったら何?

答・お刺身

解説  今や外国人観光客が日本に大量にやって来て、グルメ・ツアーを楽しんでいるようです。

彼らはインターネットで情報を調べ、グルメと聞けば日本中を訪ね歩いて名物料理を食べまくっているようで、その様な情報が毎日テレビで取り上げられています。

その様な中で、日本人より伝統的な日本料理に詳しい人も居て、アレコレと専門用語を使って注文したりするので、仰天してしまいます。

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「お作り」は元々女房言葉で、刺身を丁寧に言った言葉から始まったのだそうですね。

台所で丁寧に魚を切って、作り上げたという意味で「お作りしました」と旦那様に報告している、昔の奥方の姿が目に浮かぶような上品な言葉です。

せめて外国人旅行者に負けない程度、日本の伝統的な言葉は知って欲しいものですね。