言葉の意味を探るのは楽しい

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、答えを聞いた人が「そうなんだ!」と楽しい気分を味わえる問題を理想としていました。

所謂、知って得をする情報で、知識が増えた満足感が味わえる訳ですね。

最近のテレビ番組でも、雑学の勉強をするようなコーナーや番組が増えています。

何時の時代も、視聴者は知識欲が旺盛なので、我々のクイズ番組と企画意図が似ているように思います。

知識欲の中に、言葉の意味を探ると新しい発見が見えて来て、これも面白い作業です。

第4回のグアムの○×問題で、次のような問題がありました。

問・アミダクジと阿弥陀様は何の関係もない?

答・×

解説 アミダクジは昔からある、クジの方式で日本人なら誰でも知っている言葉ですね。

でも、なんで仏様の阿弥陀という名前が付いているのだろう? との疑問が湧いて来ます。

「阿弥陀如来」の画像検索結果

この問題は、当初「アミダクジは阿弥陀如来に願えば当たるので、この名が付いた」という問題でした。

原文では、ほとんどの人が〇を選び正解してしまうだろうと予想しました。

でも、真実は別の意味だったので、問題文を変え正解を×として採用となったのです。

アミダクジと阿弥陀様は関係が深いのです。その理由は以下の通りです。

アミダクジの図形が、阿弥陀様の後光に似ているので、自然発生的に名付けられたというのが語源なのです。

日本は仏教国だっただけに、仏教から派生した言葉が沢山あり、クイズ問題に採用される例も多いのです。

本日は知って面白い雑学の一つをご紹介しました。

 

タイムリーな話題ノーベル賞

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、時代に合わせたタイムリーな話が採用されていました。

毎年の事ながら、10月には世界中の関心が高いノーベル賞の発表があります。

我々の番組でも、ノーベル賞に関するクイズ問題は多数作られ採用されていたのは言うまでもありません。

その年に日本人の受賞者が出れば、確実にクイズ問題になっていました。

日本人では、今年の大隅良典教授で25人の人が受賞しているので、問題の作り方も変化するでしょうね。

例えば最初の受賞者は?のような問題は過去にありましたが、これからは各賞の受賞者を求めたり、受賞者の多い大学は? などがクイズ問題になるでしょう。

今年の話題で問題を創るならば、次の様な問題は如何でしょう?

問・今年のノーベル文学賞に選ばれたボブ・ディランはデビュー当時「フォークの何」と呼ばれていた?

答・フォークの貴公子

解説 予想出来そうな答としては「神様」「レジェンド」などが浮かびますが、正解は貴公子でした。

アメリカ生まれの彼は、64年頃シンガーソング・ライターとして登場。若者文化の中心的人物として大活躍しました。

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日本のフォークソング界も、彼の影響を受けた人が多く、文学界の村上春樹さんも作品の中に彼の名前を何度となく登場させたと語っています。

それほど、世界の若者に影響を与え続け、半世紀以上現役で頑張っているシンガーソング・ライターなのです。

ノーベル賞関連で、今年の話題NO1は、文学賞に音楽のボブ・ディランが選ばれた事でしょう。

彼の作った多くの詩が文学に値するとの判断でした。

でも、それならエルトン・ジョンは? ポール・マッカートニーは?と今後人気スターが次々候補に上がりそうです。

音楽の他、映画や絵画など、芸術の分野でも人類の平和に貢献した人物が星の数ほどいます。

と、なるとノーベル賞に「芸術賞」という枠を新設するのも良いかな~ なんちゃって! 夢ですよね。

日本語の真実を見る

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、昔から伝わる習慣や言葉など、日本人の常識的な知識が出題されていました。

第7回のナイアガラで、日本語に関する常識的な問題が出されていました。

問・困っている時、助けてくれるものに例えられる乗り物は何?

答・舟

解説 渡りに舟、という言葉がありますね。困っている時に丁度その場に都合の良い事が起こる場合、この言葉が使われます。

また、「助け舟」という言葉も日常によく使われる日本語ですね。

今年は、例年に比べ台風の発生が多く、各地で大洪水が起こりテレビのニュース番組でも、その様子が度々報道されました。

「台風、洪水、救...」の画像検索結果

現地の救助隊が大活躍しますが、その時に主役となる乗り物が、例外なく救命ボートや小舟のボートでした。

いわゆる「助け舟」の大活躍です。

昔から使われている日本語が、正しかった証と言える場面でしたね。

勿論、現代では救急車や救命ヘリなど、困っている時に助けてくれる乗り物も増えています。

でも、日本語の中では、一番頼りになる乗り物は「舟」というのは揺るぎのない事実であり、昨今のニュースが示しています。

本日は生きた日本語のお話でした。

 

翻訳の面白さ

 

 

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、知って得する面白い話を紹介する目的もありました。

第二次世界大戦中には、外来語の使用が禁止された時代がありました。

敵国からの外来語は使うべからず、との軍部のお達しでしょうね。

行け行けドンドンの時代ですから、無茶苦茶な決まりですが、これを破ると非国民!と呼ばれてしまいます。

スポーツ用語など、ほとんどが外来語の場合はそれぞれ苦労してこじ付けの日本語に翻訳していました。

第8回のインディアナポリスで、次のような問題がありました。

問・外来語の使用が禁止されていた太平洋戦争中の海軍で「辛味入り汁かけご飯」と呼ばれていた食べ物は何?

答・カレーライス

解説 漢字で「辛味入り汁かけご飯」と読めばカレーライスは想像出来ます。

でも、耳で聞いた限りでは、中々正解に辿り突かないでしょう、との理由でこの問題は採用されました。

日本の海軍とカレーライスの繋がりは、明治時代に遡り知る人ぞ知るエピソードが伝えられています。

「横須賀海軍カレ...」の画像検索結果

日露戦争の時代、海軍兵士の健康を案じた医師が、イギリス海軍の食事を参考に考案したと伝えられています。

肉と野菜のバランスが良いとの理由で、軍港のあった横須賀カレーとの命名で現代に伝わっています。

現代では、海上自衛隊で伝統が受け継がれ、横須賀は海軍カレーの街としても知られています。

因みに当時でも、友好国であったドイツからの外来語やラジオなど、すでに日本語化していた言葉は使用禁止では無かったそうです。

横文字が日常的に使われる現代人には、理解不能とも言える時代があったのですね。

思えば表現の自由職業選択の自由など、自由が沢山ある民主主義は良い時代ですね。

 

真実・昔からの言い伝え

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は、正確さが「いのち」と言われるくらい裏取りに重点を置いていました。

正解者が勝ち進み、誤答者が脱落する番組なので、答えの誤りは絶対に許されないのです。

番組が放送された後に「あの答は誤りだ!」と指摘されたら「ゴメンナサイ」では済まされない番組でした。

視聴者の中には、各分野の専門家も沢山居るので、ごまかす事は絶対に不可能です。

従って、クイズ問題の裏取は担当者を変えて3重に行っていたので、17年間で誤りは一度も無かったのです。

そうした中で、第13回のゴールド・コーストで次のような問題がありました。

問・夏には「絵に描いてでも食え」と言われるくらい美味いが、冬になると「枯れすすき」「丸太ん棒」と言われるほど味が落ちる魚は?

答・スズキ

解説 この問題には2通りのアプローチがあります。Aは実際にその様な言い伝えがあるのか?

Bは夏は美味くて、冬は不味い魚は?

AとBどちらの知識があっても、正解する事が出来ます。でも、問題の裏取は、それが真実でなければクイズとして成立しません。

スズキは、海岸近くや河川に生息する大型の肉食魚で、成長につれて呼び名が変わる出世魚です。

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関東ではセイゴ、フッコ、更に4~5年で成熟しスズキと呼ばれるようになります。

旬は油の乗っている夏で、秋には産卵するため冬は油が落ちて、昔の人の言い伝え通り不味くなります。

江戸時代には「絵に描いても食え」といわれていたほど庶民に愛されていました。

昔からの言い伝えだけではダメ。現代の料理の常識もしっかり裏を取って、初めて問題が成立するのです。

クイズ問題は、次から次へと出題されますが、その一問毎に綿密な裏取りが行われていた、実に手間の掛かる番組でした。

だからこそ、昔の番組なのに思い出してくれる方が沢山いるのでしょうね。

ウルトラクイズは、お金も掛かるし手間も掛かる、良い時代の贅沢な産物だったのです。