歴史は繰り返される

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を読み直すと「歴史は繰り返す」の言葉を実感する事が多いのに驚きます。

世の中の動きは、何年か毎に同じような出来事があるため、この言葉が生まれたのでしょう。

1984年、今から34年前ですがウルトラ・クイズでは第14回の時です。冒険家の植村直巳さんが国民栄誉賞を受賞しました。

当然、この年には国民栄誉賞が話題になり、関連するクイズ問題が数多く採用されました。

勿論、植村さん以外の受賞者の問題も多く、その中から知って面白い話題がクイズ問題となって放送された訳です。

国民栄誉賞とは何か? 国民に夢や希望を与える行為をした人物に与えるもので、スポーツ、文化、芸術活動など広い分野から選ばれます。

今年は冬季オリンピックで活躍した選手が多いので、若しかすると国民栄誉賞ラッシュになるかも知れません。

総理大臣が表彰するので、人気取りの為との陰口もささやかれますが、確かにその後の支持率が上向きになっていますね。

話は戻って、今年は将棋の世界では初となる羽生善治棋聖(47)と囲碁の7冠独占を果たした井山裕太氏(28)が将棋・囲碁界で初の受賞となりました。

囲碁や将棋は、日本古来の庶民の娯楽・文化でありこの分野からの初の受賞とのニュースを見て不思議に感じた方は多いと思います。

何故、今まで陽が当たる事も無く放置されていたのでしょう? 想像するに選考する担当者の関心が無かったのではないでしょうか。

何れにしても、国民栄誉賞が制定されたのは1,977年(昭和52)で、プロ野球王貞治選手(当時37才)が本塁打世界記録を達成。

「王貞治 ホーム...」の画像検索結果

この偉業を表彰するため、時の総理大臣・福田赳夫氏の時に制定されました。

本来であれば叙勲ですが、それには年齢が若すぎるとの理由で総理大臣官邸での表彰になっています。

因みに現在までの受賞者は26名、現役の他、古賀政男氏、美空ひばりさん等没後表彰との場合もあります。

アメリカ横断ウルトラ・クイズが始まったのも正にこの年、第1回の後楽園球場は、王選手の記録達成の興奮冷めやらぬ球場での予選でした。

国民栄誉賞とウルトラ・クイズとの縁は単なる偶然ですが、関係者としては親しみを覚えます。

国民栄誉賞の成り立ちと経緯、今後はクイズ番組の問題になるかも知れませんよ。雑学の一つとして記憶してくれると嬉しいのですが……。

 

問題・正誤チェックの苦労

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を振り返ると、問題の正誤を調べるチェック担当者の努力が思い出されます。

ウルトラ・クイズは、他のクイズ番組と異なり答の「誤」は絶対に許されないルールなのです。

何故なら、敗者が主役の番組なので、その答えが間違えていた場合、間違えた人が勝ち進む事になり、ルール上番組は成立しないのです。

従って、チェック担当者は、1人の確認ではなく最低3人の目を通し、ハンコが3つ並ばなければ合格とはなりません。

中でも大変なのは、現在生存中の人物が絡んだクイズ問題です。本人の証言を取らない場合は不合格とのルールを作りました。

そんな問題で、記憶に残る問題が2問ありました。

その一つは、問・海部総理大臣は国会へ行く場合、必ず水玉模様のネクタイを付ける、との問題でした。

これは、当時新聞、雑誌などで話題になっていたので、世の中の人が良く知っていた常識です。

とは言え、新聞や雑誌の記事で確認しただけではダメ。また、総理の秘書や家族の証言もダメ。本人の確認が必要でした。

どんな人気番組でも、現職の総理大臣に証言をもらうというのは至難の技でした。そこで、報道局の政治部総理番の記者を通して本人確認をしたのです。

二つ目の大変な問題は、第16回のグアムで出された問題でした。

問・お椀を船にして川を下ったのは一寸法師。では、お椀にお湯を入れてお風呂にしていた水木しげるのマンガのキャラクターは何?

答・目玉おやじ

解説 「ゲゲゲの鬼太郎」の主人公・鬼太郎のお父さんが目玉おやじです。これは掲載漫画雑誌を見れば確認出来ます。

「ゲゲゲの鬼太郎...」の画像検索結果

しかし、若しかすると目玉おやじの他にも、お椀をお風呂にしたキャラクターが居るかも知れません。

マンガ雑誌の担当者、水木事務所のアシスタントの証言ではダメ。

何故なら、ご本人が冗談で他のキャラクターをお椀のお風呂に入れる事だって想像出来ます。

電話での確認では失礼な話。従って、主旨を説明しご本人に面会、ご本人から「間違いない」との確認を取って、放送に至ったのです。

これには後日談があって、水木先生自らが面白がって、目玉おやじが一度だけ瞼を降ろしたシーンを作ったと伝えられていました。

17年間に亘って放送されたクイズ問題で、答えの正誤の間違いが一問も無かったのは、こうしたチェック担当者の地味な働きのお蔭だったのです。

番組のスーパーに、個人名が出て来ない裏方さんに感謝です。

繰り返される歴史的出来事

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を振り返ると、現代でも十分に面白い情報が出題されている事があります。

クイズ問題は時の話題「旬」の情報から出されるのが基本ですから、放送当時と現代が似た状況だという事です。

ズバリそんな問題が、30年前の第12回の東京ドームで出されていました。

問・将棋の対局中、相手側に回って将棋盤を眺めるのは反則である。〇か✖か?

答・✖

解説 日本将棋界の大天才と称される加藤一二三九段は、相手側に回って盤を眺める事がしばしばありました。

「加藤一二三」の画像検索結果

将棋の神様的な加藤九段がその様な行為をするのですから、当然反則ではなくルールに沿った行いと言えます。

昨年来、当時中学生だった藤井聡太君が連戦連勝記録を更新し、社会的に話題になっていますね。

彼が話題に上りだしたのは、加藤一二三九段を破り50年振りに登場した天才中学生だったからです。

一方の加藤さんですが、実は彼も中学生当時に将棋界に登場、数々の記録を残した方です。

現在は単なる面白いオジサンですが、藤井聡太クンとよく似た注目の棋士だったのです。

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藤井君の登場で、加藤センセイもCMに登場するなど、昨年来時の人になっています。

庶民の娯楽、将棋が見直されてきたのは愛好家の皆さんに取っては嬉しい事でしょうね。

「歴史は繰り返される」との言葉がありますが、今回の将棋ブームは正にその典型的な出来事と言えるでしょう。

この先、藤井聡太クンの記録がまだまだ更新されそうで、天才少年の健闘を祈り、本日の話題で取り上げて見ました。

今年は40周年です

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を振り返って思い出を書いていますが、今年は最初の放送から40年を迎えたそうです。

これを記念して、先月の26日第1回の関係者が同窓会を開きました。40年前に現役でバリバリ活躍した仲間ですから、互いに齢をとっていました。

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最初は名前と顔が一致しない人もいましたが、司会のk氏が良い事を教えてくれました。「頭を見ず、目から下を見れば昔の顔です」との言葉です。

確かに、頭は剥げたり、白く変色していますが、顔は皆さんほとんど変わらずに「なーんだ、○○か?」と当時の仲間言葉になって大笑いでした。

司会のK氏は、当時新人のADクンで、みんなから呼び捨てでしたが、現在は現役のPDとして、素晴らしいドキュメント番組を作っています。

しかし、そんな現状を無視して、スタッフたちは昔の通り呼び捨てで「お前が全体を仕切れ」と偉そうに命令していたのです。

学校の同窓会と似て、先輩は何時まで経っても先輩風を吹かせ、後輩に偉そうに命令したがるものです。

さて、40年ぶりに明かされた様々な笑い話がありました。

第1回で、アメリカへ渡る時、日付け変更線を超える瞬間を撮影したかったS氏がカメラマンに命じた言葉、日付け変更線を手前からパンで狙えと指示。

2名のカメラマンは意味が解らず、命令の通り操作したそうです。当時のS氏はワンマンなので、スタッフは気を使って質問など出来なかったのです。

そこで、昔の疑問をS氏に正しました。

S氏は大まじめな顔で「俺は赤い日付け変更線があると思ってたんだ」との事で一同は大爆笑!

クイズに強いと自慢していたチーフDが「まさか?」と問題担当の作家達は呆気(あっけ」に取られました。

この様な笑い話が数多く紹介され、40年の月日が懐かしく思い出された、我々にとっては素晴らしい同窓会でした。

司会の福留さん敗者担当の徳光さん、スタジオのアシスタント石川牧子さん、総合演出の佐藤さん、みんな変わらず元気でした。

でも、亡くなったスタッフも多勢いて、彼らの思い出話も多く語られ、有意義な一夜を過ごす事が出来ました。

私は50年近くテレビ業界で働き、数えきれないほど番組に関わりましたが、番組の終了後の同窓会は初の体験でした。

アメリカ横断ウルトラ・クイズはその位稀有(けう)な番組だったのかも知れません。本日は内輪の裏話でした。

言葉の盲点を探す

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は一般常識が基本ですが、時には常識の盲点を突いた問題もありました。

盲点と言われるのは、誰でも知っているようで実は正確には理解していない、或は記憶がはっきりしない、といった曖昧な知識です。

第8回のグアムで、その典型的な問題がありました。

問・海の水を「海水」というのに対し、湖や川の水を「陸水」という。〇か✖か?

答・〇

解説 「海水」は子供でも知っている常識です。

しかし、陸にあるから「陸水」とは、何となく引掛け問題で、トメさんの「そんな訳無いだろ!」の声が聞こえそうな予感がします。

と、なると全国的な笑いものになってしまう、との嫌な気分が頭の中を駆け巡る事になるでしょう。

我々も、その様な挑戦者の心理状態を計算して出題したのです。

陸水は紛れもなく正しい日本語で、辞書には地球上にある水のうち「海水」を除いた水と記されています。

湖、河川水、地下水、雪水などで、蒸発・流動を繰り返し地球上を循環すると説明されているので、多分理科の時間に学んだのでしょう。

でも、一般の会話に「陸水」との単語は出てくる機会が少ないので、記憶から遠ざかってしまう言葉かもしれません。

「水不足 関東」の画像検索結果

世の中では、雨が少なく「水不足」といったニュースが時々ありますが、そんな中でも「陸水」の単語が使われる事は滅多にありません。

文字を読めば理解出来る日本語も、耳で聞いただけでは意味が解らない、との日本語は結構多いのです。

そうした視点で、辞書をペラペラめくるとこの様な言葉の発見があるものです。えっ? 「そんな閑人はいないよ」

御尤も。当方、現役を引退した閑な隠居なものでスイマセン。