素朴な疑問は面白い

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を振り返ると、人々の素朴な疑問が問う設問がありました。

この種の問題は、雑誌や新聞などの資料から引用して出来た問題ではありません。

実は、クイズ問題作家の皆さんが、自分で疑問に思った現象を調べて問題にしていたのです。

即ち、作家としてのオリジナル問題なのです。それだけに印象に残り、面白い問題と評価されていたのです。

例えば、第8回のグアムでの「突撃〇×泥んこクイズ」で次の問題が出されていました。

問・飛行機雲、ジェット機には出来るが、プロペラ機には出来ない。〇か×か?

答・×

解説 飛行機雲は、ジェット機が高度を飛行中に我々が良く見る現象ですね。

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でも、プロペラ機が飛行機雲を出しているのは、あまり見た事がありません。

そこでクイズ作家は「飛行機雲は何故出来るのだろう?」と疑問を抱き、調べたところ次の事が解りました。

大気中にはかなりの水蒸気が含まれています。その場が低温であれば、スピードや機種に関係なく飛行機雲は出来ます。

おそらく物理や理科が得意な方は、この原理が解り正解出来たでしょうが、一般の人は迷ってしまいます。

「さあ、どっちだろう?」と迷いながら、〇×のパネルに飛び込んで行く、その姿が面白くこのクイズ形式は人気でした。

他人の災難は蜜の味、これを楽しんでいたクイズ・ファンは本質意地悪だったのですね。

そんな番組のスタッフはもっと意地悪だったのです。ヒヒヒ…。

数奇の運命を辿った人物

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、日本の歴史に関わる知識が数多く出されていました。

例えば、第6回のバーストウで次の問題がありました。

問・アメリカに渡ったジョン万次郎の本名は?

答・中浜万次郎

解説 人間の運命は波瀾万丈と言えます。

元々は土佐の漁師だった万次郎は、遭難でアメリカの漁船に救助されたために人生が一変、歴史に名を連ねる人物になりました。

英語の理解出来ない彼は、アメリカ本土に渡り教育を受けます。

その後、アメリカで漁師として働きながら帰国の旅費を貯めるため、数々の苦労の後ハワイ経由で帰国しました。

しかも、この時は密入国の容疑で拘束され、キリシタンの疑いで検査を受け、難を逃れています。

日本で唯一、アメリカ生活の経験者で英語が堪能のため、島津藩などから誘いを受けるが、最終的に故郷・土佐藩に迎えられる。

黒船来航

当時、黒船の来航で江戸幕府からも協力を要請されるが、ペリーとの通訳は妨害が入り、実現しませんでした。

しかし、勝海舟と初のアメリカ訪問に同行、通訳として活躍しました。

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明治政府には、政治家への道を進められたが断り、教育者への道を選び72歳で死去、文字どうり波乱万丈の人生でした。

たった1問の本名を問う問題にも、裏側には興味深い偉人の物語が隠されているのです。

本日の裏話は、数奇の運命を辿った偉人のお話でした。

 

何で難問が正解出来るの?

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、普通の人の常識を遥かに超えた難しい問題「難問」が1~2割程度含まれていました。

この難問を、スラスラと正解する挑戦者は多くありません。

とは言え、我々は難問の正解者をメモし、決勝に残るのは誰?の資料を作成していたのです。

これは番組の構成上、大切な資料であり、その記録はナレーションで十分に生かされていた筈です。

そうした難問の一つをご紹介しましょう。          第5回のテオティワカンで出された問題です。

問・別名「シバの女王」の国とは、現在のどこの国?

答・エジプト

解説 古い記録では旧約聖書にも出て来る、3,000年も前の伝説上の人物です。

これは、1,959年に「ソロモンとシバの女王」の題名で映画化され世界的なヒット作品になっていました。

シバの女王」

主演は、ユル・ブリンナージーナ・ロロブリジーダの世界的な大スターの共演だったので、これで記憶に在った人も居たでしょうね。

何れにしても、エジプトに実在した女王で、ソロモン王国の文化を輸入するためエルサレムに渡ったと記録されているそうです。

外国の古代史など、研究者でなければ知り得ない知識です。

でも、クイズ好きな皆さんには、映画や舞台・音楽などでこの様な知識を得る機会があるのです。

知識のアンテナを拡げ、あらゆる情報をキャッチする貪欲さを持ち合わせているのですね。

「本日の裏話」は、一見無駄に見えるような知識を仕入れる、熱心なクイズマニアの手法を覗いて見ました。

クイズ番組の楽しみ方

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題は日本人の平均的な常識を問う問題が中心でした。

勿論、知識の幅を競うゲームなので、目を世界に向けたり、専門家しか知らない知識まで、幅広く記憶している人もいました。

これ等の問題は、正解率も低く「難問」と呼ばれる区分けで整理されていたのです。

但し、こうした難問は問題の1割~2割程度で、中心となる問題はやはり、日本人の森羅万象の中から創られていました。

ごく平凡的な日本人の知識を試す、典型的な問題をご紹介しましょう。

第7回のデスバレーで出題された問題でした。

問・次の産地で作られる織物は何? 長井・十日町・塩沢・結城・大島

答・紬(つむぎ)

解説 デスバレーは最高気温57℃、死の谷と呼ばれる極暑の砂漠地帯です。

気温があまりに高いので、息をするだけで肺が痛く感じる過酷な地なので、頭の回転も鈍ります。

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クイズ問題も、場所に合わせて易しい問題を多くしました。

また、幾つかのヒントを並べ、早く気が付いた挑戦者の「勝ち」との問題も多く配分しました。

この問題は、昔から織物の有名な産地ですが、十日町、結城辺りで「紬」と気が付くだろうと、我々は予想していました。

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この時の挑戦者は、男性8名、女性1名なので、この問題は女性に有利との予想でしたが、全く逆で敗者は女性だったのです。

我々は毎年、旅の中盤を過ぎると、勝者の予想は良く当たるのですが、敗者には「予想外」の事が多くありました。

視聴者の皆さんも、優勝者を予想して家族で「賭け」をしたり楽しんでいたようですが、他人の頭の中は計り知れませんね。

今も昔もクイズ番組の愉しみは「一緒にクイズに参加する事」ですが、加えて誰が優勝するか?を予想する事ですね。

本日の裏話。我々スタッフは挑戦者の頭の中を連日のように予想して、「勝者は誰か?」を討議していたのです。

 

人気のクイズ形式は?

アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、日頃気にも留めない事柄が問われる事があります。

知識としては「雑学」と呼ばれる分野ですが、知って面白い知識なので、クイズ・ファンには喜ばれていました。

第13回のグアムでの「突撃〇×泥んこクイズ」での問題です。

問・目をそむけたくなるほど本当に嫌いなものを見ると、人間の瞳は小さくなる。〇か×か?

答・〇

解説 動物の身体は、実に良く出来ています。防御反応で、見たくないものを目にすると、瞬時に瞳は小さくなるそうです。

と、言う事は〇×のパネルを見た瞬間、瞳を小さくして泥んこプールに飛び込んだ挑戦者も多かった事でしょうね。冗談!

因みに、この「〇×泥んこクイズ」はウルトラの名物クイズですが初めての登場は第4回のグアムでした。

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以来、17回まで毎回行われ、挑戦者の皆さんも「絶対飛び込みたい!」と希望者が多かったクイズ形式でした。

この泥んこプールの土は、グアムの赤土をコッテリと練り上げたもので、前の晩スタッフが必死で仕上げているのです。

この土は粘りが強く、海へ飛び込んでも簡単には落とせません。シャワーでシャンプーでゴシゴシ。皆さん苦労していました。

クイズ史上、最初に飛び込んだ犠牲者は何と第2回のクイズ王のKさんでした。「栄えある記録」と言えるかも知れません。

この難関を何度も通過したと自慢していた自信家がいましたが、「自慢高慢何とやら…」で、簡単な問題で敗退していました。

彼には「油断大敵」の言葉を進呈したい気分です。

結論は、クイズ王を2度獲得した例が無いがこの番組の面白さだったのです。

本日の裏話は、名物クイズの起源に関するお話でした。