アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題の中には、日本語の語源を問う問題が時々出て来ます。
語源は、その意味を理解して使うのと、知らずに使うのでは同じ言葉でも、大きな隔たりがあるのは当然ですね。
良く使う言葉でも、語源を知って使うと意味合いが深まり、心が通じるもので言葉とは面白い性格があります。
そんな語源の典型的な問題が、第12回のサンパウロで出されていました。
問・俗に、親が大切に育てた娘は何に入っている?
答・箱
解説 外国人が聞いて「娘を箱に入れて育てる」となると「それは虐待だ」と誤解されそうな日本独特の表現ですね。
語源の基は江戸時代の商人の感覚です。
大切な品物は、誤って傷が付かないように箱に入れて「保管」したり「運んだり」していました。
特に大切なものは「桐の箱」に入れ、高級感を演出しますね。この様に「箱入り」とは大切な物の比喩として使われた言葉です。
別に、娘を箱に閉じ込める訳ではなく、箱に入れたいくらい大切に育てた、との親心の表れでこの言葉が使われていました。
逆に、息子の場合「箱入り息子」と言わないのは何故でしょう?
多分、男は跡取りとして大切どころか厳しく育てなければロクな者にならない、との親心でしょうね。
時代劇でも、甘やかされて育った息子は奉公人に「馬鹿旦那」と呼ばれ、放蕩息子に成り下がっています。
だから息子は、奉公人と区別なく厳しく育て立派な跡取りに育て上げたのでしょう。
大切な物を「箱に入れる」習慣は現代にも残っており、特にブランド品は箱のデザインまで有名デザイナーが担当します。
一方、資源の無駄を省こうとの動きが世界的に広まり、包装や梱包を簡略化しようとの運動も活発になっています。
木製、プラスチック、段ボールなど様々ですが、箱の運命も時代と共に変化しています。
近い将来、箱などと言う無駄なものは要らない!と言う時代が来るかもしれません。
本日の裏話は、娘と息子に関して箱に入れたいのはどっち? 親心の違いを江戸時代の親を例に考えて見ました。