好事魔多し(こうじまおおし)
【意味】好事魔多しとは、良いことはとかく邪魔が入りやすいということ。
【注釈】良いことには邪魔が入りやすいものだから、良いことがあったからといって有頂天になってはいけないという戒めの意を含む。
「魔」とは、「邪魔」の「魔」。「好事魔を生ず」とも。
※故事ことわざ辞典より
アメリカ横断ウルトラクイズに関係したため、ロケ、ロケハンと毎年世界中を旅する事になりました。
個人的には大変有り難い体験でしたが、飛行機に乗る機会も多く、それなりに危険な経験を何度か味わっています。
第12回で、アルゼンチンからマイアミに戻る航路に乗った時のことです。
出発前に旅行代理店の担当者から面白い話しを聞いていました。
「飛行機に搭乗する時は、締め切り真近にカウンターに行き、喫煙席に申し込んでみると、良いことが起こりますよ」
と言うものでした。
我々はK氏と二人旅でその事を思い出して、締め切り直前にカウンターへ行き、
「喫煙席を頼みます」と申し込んだのです。
すると係りの女性がパソコンでアレコレ操作していましたが、しばらくして
「申し訳ありません。喫煙席が満席ですので、こちらの席で我慢してください」
とボーディングパスをくれたのです。
その色を見るといつもの切符と違うではありませんか。
切符の表面にはファースト・クラスと印刷されています。
「ええっ!本当かよ?」という驚きと同時に、初めての体験に胸を躍らしたのは言うまでもありません。
いつもファーストクラスの客を横目で眺めながら搭乗していた姿を考えると、こんな事が実際に起こるのに吃驚です。
K氏と顔を見合わせ「やったぜ、ベイビー!」と叫びたい気持ちを抑えて飛行機に乗りました。
↓画像はJALのファーストクラスのイメージです

憧れのファースト・クラスは席もガラガラで、ほとんど我々の独占状態です。
これでマイアミまでは優雅な旅が出来るとニンマリと席に座りました。
ファースト・クラスは客の扱いもまるで違います。
スチュワーデスさん(今ではCAさんですね)が
とご丁寧にもこちらの名前を呼んで、会話が交わされるのです。
普通の2倍3倍の料金を取るわけですから、無理もありません。
我々は機内食も普通ではない、ファーストクラスの高価な食事を味わうことになりました。
などと悠長な会話を交わしながら、飛行機はマイアミを目指して飛んでいきました。
しかし、楽しみは此処までで終ってしまったのです。
『好事魔多し』という諺がありますが良いことは永続きしません。
間もなくエンジンの音がおかしいのに気が付きました。
「どうしたんだろう?」
我々の不安が高まったところで、機内のアナウンスがありました。
「当機はエンジンが不調のため、ブエノスアイレス空港に戻ります」
との放送です。
間もなく目の下にブエノスアイレスの街の明かりがキラキラと見えてきました。
しかし飛行機はその灯りを通過して、真っ暗な海の上に来てしまったのです。
後で調べるとそこは海ではなく、
ラプラタ川の上空でした。
↓ラプラタ川は海のように広いのです

兎も角、空港に着陸するまでに相当の時間がかかり、ようやく着地した時には胸を撫で下ろし、乗客が全員で拍手をし、パイロットの腕をたたえたのでした。
それから、エンジンの調整に何時間もかかって、翌日の早朝に飛行機は飛び立ったのでした。
我々は疲労の為ウトウト眠って次に目を覚ましたのは、ブラジルのジャングルの上空でした。
窓から下を覗くと、な、なんと低空飛行でジャングルの葉っぱの形が肉眼で確認できるではありませんか。
耳を澄ますと、エンジンの音が以前と同じように不調のようです。
「これは若しかすると、アマゾンのジャングルに墜落するかも知れないぞ」
K氏と私はロケハン用にテープレコーダーを持っていましたので、
「若しものために遺書を吹き込もう」
と、テープに遺書らしき言葉を語りかけたのです。
後で考えれば笑い話ですが、その時は真剣で、やっぱり変な策略で良い席を確保したために、
罰があたったのだと反省しきりだったのです。
↓せっかく低空で飛んだのに、アマゾンの絶景を楽しむ余裕はありませんでした
