アメリカ横断ウルトラ・クイズの問題を振り返りながら、今だから話せる番組の裏話を書いています。
クイズの専門誌「QUIZ JAPAN」の最新版を見たところ、クイズ番組の出演者が、テレビ番組の体験談を語っていました。
中でも、「ウルトラ・クイズの体験談」が数多く語られていましたが、我々スタッフの考えも及ばない意見もありました。
ウルトラ・クイズはスタート以来、一貫してスタッフと挑戦者が親しく話をしない事、との規則がありました。
旅は長い挑戦者の場合、1か月に及びます。短い場合は1日でお別れになりますが…。
この旅の中で、スタッフと親しい挑戦者が出来ると、翌日のクイズの情報、問題等が漏れる事があったら、番組は成立しません。
勿論、その様な不心得なスタッフはいませんが、それにしても挑戦者に疑念を持たれるだけで不愉快でしょうね。
こうした不快感を生むのを避ける意味で、挑戦者と親しく話をしないという基本的な決まりがありました。
但し、例外がありました。
旅の途中の都市で、スタッフの数名と挑戦者が食事をする「励ましの食事会」がありました。
スタッフ側の数名は、審査委員長(PD)司会の福留さん、その回を担当する(D)、構成の私、近畿日本ツーリストの責任者、以上です。
挑戦者側は、その日まで勝ち抜いた皆さん。
この食事会では、挑戦者の意見、希望、など番組に反映させる情報を得るのが目的で親しく話をします。
また、「次に負けそうなのは誰?」のような冗談めいた話題も出ていました。
実は、これには航空券の問題があって、業界の規則で氏名を空欄で予約する事は出来ないのです。
従って、予想される敗者の氏名で予約をし、外れた場合は一度キャンセルをして、再発行してもらう事になります。
複雑なこの手間を省くため、近畿日本ツーリストの責任者はこの食事会では、挑戦者の敗者予想を熱心にメモしていたのです。
話は「QUIZU JAPAN」の体験談に戻ります。
ウルトラ・クイズの挑戦者の皆さんは、常にスタッフの動向を観察し、自分たちなりに分析しています。
その中で、大きな誤解をしていた事がありました。それは問題の配列に関する意見です。
「難問が続くと、急に易しい問題になるのがパターン」との意見を自分が発見した、と得意そうに語っていました。
しかし、残念ながらそのようなパターンはありません。
Q問題は20問を1束として、挑戦者の数によって総数は変化しますが、1チェック・ポイントに100問程度準備します。
この配列は、クイズ前夜の問題会議で、易しい、中程度、難問、などリズミカルに並べます。
難問が続くと、警戒して早押しボタンを押さなくなります。1度出された問題は廃棄されるので、経費の無駄になります。
構成の他、プロデューサーの立場も兼ねていた私は、経費の無駄は避けなければなりません。
問題の経済効率も考えながら、厳密な打ち合わせで真剣に配列していたのですよ。これが1日の仕上げの仕事だったのです。
今だから楽しい思い出も、当時は寝る間も無いほどの強行軍であり、我々スタッフにとって罰ゲームのような番組でした。